工場に新時代、クラウド利用の作業安全教育が増えている
IoT時代を迎え、現場改善や人材教育の方法が変わり始めた。デジタル情報をもとにPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを実施し、工場や会社全体の改善効果の倍速化を目指す企業や、デジタル技術を活用した新たな人材教育に着手する企業が増えている。今、注目されるクラウド利用の作業安全教育について紹介する。
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見逃してはいけない「製造現場×デジタル」新潮流
いつの時代にも、製造業にとって重要なテーマとなっているのが現場で働く従業員への作業安全教育である。今日の作業安全教育は小集団活動を通じて多数の危険要因を抽出し、リスク評価から安全対策を講じるリスクアセスメント(RA)手法が主流。従来のRAを一歩進め、作業手順書と危険源との相関関係からリスクを特定する新RA活動に取り組む企業もある。またRAと並行して、ヒヤリ・ハット報告活動やKY(危険予知)活動、パトロールなどを行い、相乗効果によって労働災害の撲滅を目指す企業が多い。
これらの活動は作業者の安全意識を高め、残留リスクを顕在化する対策としてきわめて重要だ。しかし、これまでの作業安全教育はすべてアナログ的手法に基づくものだった。IoT時代を迎えた今日、デジタル技術を用いる手段を考えるのは当然の流れだ。実際にここにきて、デジタル技術による活動のサポートを求める企業は増えている。
こうした点に着目し、作業安全教育をサポートするデジタルツールが登場している。その一つが日立産業制御ソリューションズが販売する「作業安全教育クラウドサービス」だ。デジタル技術を駆使して構築した現場作業に従事する作業者向けの教育システムだ。
最近の作業現場の安全教育や作業手順教育の課題を整理すると、大きく次の3つが浮かび上がる。1つは作業イメージが作業員に伝わらないこと。紙マニュアルでは動作や操作など作業イメージを伝えきれず、事故事例の詳細が共有されずに、同じようなミスが起きてしまう。2つ目は外国人労働者への教育不足。日本語の指導やマニュアルを用いてもそれらが上手く伝わっていない。また多言語教材を毎回作成するには、費用がかかりすぎること。3つ目は、教育計画・履歴管理ができていないこと。作業員がどの教育をいつ受けたか履歴管理ができていないことや、各作業員の履歴状況を踏まえたフォローアップができていないことなどである。
「外国人労働者をはじめ、作業者向けの現場安全教育を求めるお客さまは多いです。弊社の作業安全教育クラウドサービスはこのニーズにお応えできると考えます。」と産業営業本部主任の大塚哲生氏は話す。
タブレットやスマートフォンの撮影機能を使うことによって、実際に現場で起こっていることや周知徹底させたいことなど、現場のシーンに基づいた教育ツールがその場でつくれ、それをアップロードして情報共有することができる。この場合、教育コンテンツを1からつくる必要はなく、より実践に近い形での使い方になる。「実際に、『こういう使い方ができるのが一番いい』と評価して下さるお客様も少なくありません」と大塚氏。
動画の音声を認識して自動字幕(テロップ)を生成できるのも、同サービスソリューションの特徴である。しかも生成した字幕を多言語に翻訳することができる。
製造業の中には、作業安全教育の指導員がいて、その指導員が通訳を兼任することは珍しくない。だが、外国人を対象に作業安全教育を実施する際には必ず、その人がいなければならず、いないときは教育が行えない。また、指導員を経由してやっていると、日本人の上司が本当に教えたいことが、なかなか外国人従業員に伝わらないという問題もある。
やはり、日本人上司が日本語で話したことがリアルタイムに翻訳され、さらにその言動が映像として残り、見たいとき、見せたいときに再現できることが望ましいが、同サービスソリューションはそれを実現した。上司の話をリアルタイムに音声認識して、英語や中国語、タイ語など各国の言葉の字幕付き動画をつくることが可能なのだ。
工場が複数ある企業の場合、従来は核となる工場に集まって集合教育を実施してきたが、クラウドを利用すれば、動画の他拠点へのライブ配信が可能になり、それぞれの工場に居ながらにして情報共有が可能になる。
また、同社では屋外で作業する現場事務所などでの活用も想定している。これまで、現場事務所などでは動画などを投影する環境がないため、朝礼で作業安全を徹底するくらいしか方法はなかった。これに対し、タブレットに教育資料などを映し、プロジェクターでそれを投影すれば、インフラ環境が整っていない場所でも、情報共有ができるようになる。
同サービスソリューションは、作業安全教育のプラットフォームを提供することが主であるが、教育に欠かせないのがコンテンツである。そこで、コンテンツ制作事業者と提携し、厚生労働省がまとめた労働災害事例の「事故の型」分類に則った映像教材など60種類以上の教材を用意している。
「当社のサービスソリューションは、製薬メーカーの医療従事者向けに教育システムとして提案したのが始まりです。初めは当社からコンテンツを提供する用意がなく、そこが一番困ったところでしたが、その後、作業安全教育用のクラウドサービスとしてエンハンスされ、コンテンツも加えることができたので、今では製造業のお客様に対して自信を持ってお勧めできるようになりました」と産業営業本部の加藤夏実氏は話す。現場で撮影した動画などと、その企業固有のコンテンツ、さらには国や業界のガイドラインなどを組み合わせることで、それぞれの企業にマッチした使い方ができるわけである。
日立産業制御ソリューションズでは、この「作業安全教育クラウドサービス」をユースケース商材として販売する一方、同サービスソリューションの基本技術が製造業の現場改善や技術伝承に活用できることに着目。今後、さまざまな事業に役立てていく考えだ。
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見逃してはいけない「製造現場×デジタル」新潮流
作業安全教育にもデジタル化の流れ
いつの時代にも、製造業にとって重要なテーマとなっているのが現場で働く従業員への作業安全教育である。今日の作業安全教育は小集団活動を通じて多数の危険要因を抽出し、リスク評価から安全対策を講じるリスクアセスメント(RA)手法が主流。従来のRAを一歩進め、作業手順書と危険源との相関関係からリスクを特定する新RA活動に取り組む企業もある。またRAと並行して、ヒヤリ・ハット報告活動やKY(危険予知)活動、パトロールなどを行い、相乗効果によって労働災害の撲滅を目指す企業が多い。
これらの活動は作業者の安全意識を高め、残留リスクを顕在化する対策としてきわめて重要だ。しかし、これまでの作業安全教育はすべてアナログ的手法に基づくものだった。IoT時代を迎えた今日、デジタル技術を用いる手段を考えるのは当然の流れだ。実際にここにきて、デジタル技術による活動のサポートを求める企業は増えている。
簡単に閲覧、アップロードが可能
こうした点に着目し、作業安全教育をサポートするデジタルツールが登場している。その一つが日立産業制御ソリューションズが販売する「作業安全教育クラウドサービス」だ。デジタル技術を駆使して構築した現場作業に従事する作業者向けの教育システムだ。
最近の作業現場の安全教育や作業手順教育の課題を整理すると、大きく次の3つが浮かび上がる。1つは作業イメージが作業員に伝わらないこと。紙マニュアルでは動作や操作など作業イメージを伝えきれず、事故事例の詳細が共有されずに、同じようなミスが起きてしまう。2つ目は外国人労働者への教育不足。日本語の指導やマニュアルを用いてもそれらが上手く伝わっていない。また多言語教材を毎回作成するには、費用がかかりすぎること。3つ目は、教育計画・履歴管理ができていないこと。作業員がどの教育をいつ受けたか履歴管理ができていないことや、各作業員の履歴状況を踏まえたフォローアップができていないことなどである。
「外国人労働者をはじめ、作業者向けの現場安全教育を求めるお客さまは多いです。弊社の作業安全教育クラウドサービスはこのニーズにお応えできると考えます。」と産業営業本部主任の大塚哲生氏は話す。
外国人教育のための自動翻訳・字幕生成機能
タブレットやスマートフォンの撮影機能を使うことによって、実際に現場で起こっていることや周知徹底させたいことなど、現場のシーンに基づいた教育ツールがその場でつくれ、それをアップロードして情報共有することができる。この場合、教育コンテンツを1からつくる必要はなく、より実践に近い形での使い方になる。「実際に、『こういう使い方ができるのが一番いい』と評価して下さるお客様も少なくありません」と大塚氏。
動画の音声を認識して自動字幕(テロップ)を生成できるのも、同サービスソリューションの特徴である。しかも生成した字幕を多言語に翻訳することができる。
製造業の中には、作業安全教育の指導員がいて、その指導員が通訳を兼任することは珍しくない。だが、外国人を対象に作業安全教育を実施する際には必ず、その人がいなければならず、いないときは教育が行えない。また、指導員を経由してやっていると、日本人の上司が本当に教えたいことが、なかなか外国人従業員に伝わらないという問題もある。
やはり、日本人上司が日本語で話したことがリアルタイムに翻訳され、さらにその言動が映像として残り、見たいとき、見せたいときに再現できることが望ましいが、同サービスソリューションはそれを実現した。上司の話をリアルタイムに音声認識して、英語や中国語、タイ語など各国の言葉の字幕付き動画をつくることが可能なのだ。
居ながらにして集合教育が可能
工場が複数ある企業の場合、従来は核となる工場に集まって集合教育を実施してきたが、クラウドを利用すれば、動画の他拠点へのライブ配信が可能になり、それぞれの工場に居ながらにして情報共有が可能になる。
また、同社では屋外で作業する現場事務所などでの活用も想定している。これまで、現場事務所などでは動画などを投影する環境がないため、朝礼で作業安全を徹底するくらいしか方法はなかった。これに対し、タブレットに教育資料などを映し、プロジェクターでそれを投影すれば、インフラ環境が整っていない場所でも、情報共有ができるようになる。
同サービスソリューションは、作業安全教育のプラットフォームを提供することが主であるが、教育に欠かせないのがコンテンツである。そこで、コンテンツ制作事業者と提携し、厚生労働省がまとめた労働災害事例の「事故の型」分類に則った映像教材など60種類以上の教材を用意している。
「当社のサービスソリューションは、製薬メーカーの医療従事者向けに教育システムとして提案したのが始まりです。初めは当社からコンテンツを提供する用意がなく、そこが一番困ったところでしたが、その後、作業安全教育用のクラウドサービスとしてエンハンスされ、コンテンツも加えることができたので、今では製造業のお客様に対して自信を持ってお勧めできるようになりました」と産業営業本部の加藤夏実氏は話す。現場で撮影した動画などと、その企業固有のコンテンツ、さらには国や業界のガイドラインなどを組み合わせることで、それぞれの企業にマッチした使い方ができるわけである。
日立産業制御ソリューションズでは、この「作業安全教育クラウドサービス」をユースケース商材として販売する一方、同サービスソリューションの基本技術が製造業の現場改善や技術伝承に活用できることに着目。今後、さまざまな事業に役立てていく考えだ。
工場管理2018年12月号