宮崎を売り込むチャンス到来!東九州自動車道の開通でやるべきこと
“選ばれる県”になるための指標は「観光消費額」
**日南市マーケティング専門官・田鹿倫基氏
高速道路の開通するたびに「観光客数が増えた」と報道されるが、地域経済にお いて大事なのは観光収入(厳密には地域の観光利益)を増やすこと。観光収入は「観光客数×一人あたりの観光消費額」で算出するのだが、交通の便が良くなるとたいてい宿泊者数は減る。そうすると一人あたりの観光消費額はガクッと落ちる。
観光消費においては宿泊と夕飯&お酒のボリュームが大きいからだ。観光客数が 少々増えたところで宿泊が減ってしまうと観光収入はマイナスにな り地域経済 にとってはマイナスだ。延岡のホテルではビジネス客が減った、という話もよく聞く。観光客数だけでなく、観光消費額を見て観光政策を作っていく必要がある。
宮崎県の魅力を売り込む絶好のチャンスが来た―。
北九州市を起点に大分・宮崎両県の東九州地域を縦貫する東九州自動車道が2016年春に全面開通する。これまで同地域は九州の他県と比べ道路インフラの整備が遅れていた。それだけにインフラ整備の追い風を受けて観光、企業立地などの開通効果に大きく期待している。
北九州市に向けた東九州道の開通により、河野俊嗣宮崎県知事は「活発にヒト・モノ・カネ・情報が動いている」と喜ぶ。今年のゴールデンウイーク期間中、宮崎県内の主要観光地への入り込み客数は約92万人。前年対比約7万人増となった。特に宮崎県北地域の入り込み客数が大きく伸び、高千穂峡(高千穂町)は同50%増で過去最高を記録した。
東九州道と愛媛・大分両県を結ぶカーフェリーが連携。乗用車台数が約2割増加するなど新規観光ルートが開拓されたことで、観光圏の広域化により中・四国、関西地域から観光客が増えた。
一方、企業立地も大きな成果を上げている。東九州道の段階的な開通前と比べ宮崎県北地域の立地件数は1・8倍、最終雇用予定者数は1・4倍とそれぞれ増加した。これにより11―14年度までの宮崎県の累計は同件数135件、同予定者数5524人と、目標とした同件数100件、同予定者数5000人を大きく上回った。
主にフードビジネスと流通関連業者の立地が多く、成長産業として育成してきた食品関連が増設。南九州の物流拠点としての優位性が高まった印象だ。そこで宮崎県は18年度までの新たな目標を同件数150件、同予定者数6000人と掲げて攻勢を強める。
15年度は県外で企業立地セミナーを開催。既存立地企業のフォローアップなどを通じ、フードビジネス、情報サービス、環境・エネルギー、医療機器関連産業といった重点産業の誘致に力を注ぐ。
東九州道以外のインフラ整備でも追い風が吹いている。宮崎空港に今年3月、国際線で格安航空会社(LCC)が就航。8月には国内線も就航する。水深13メートルの細島港国際物流ターミナル(日向市)は6月に供用を始めた。いずれも国内外との交流を加速するポイントになる。
とはいえ、この勢いを増すには県民を巻き込んだ“オール宮崎”の取り組みが欠かせない。宮崎県も太陽の恵みに育まれた地域の魅力発信に向けて「日本のひなた宮崎県」をキャッチフレーズにプロモーションを始めた。地方創生に向けた地域間競争が激しくなる中「選ばれる県」を目指す宮崎が輝きを増している。
(文=大分支局長・広木竜彦)
高速道路の開通するたびに「観光客数が増えた」と報道されるが、地域経済にお いて大事なのは観光収入(厳密には地域の観光利益)を増やすこと。観光収入は「観光客数×一人あたりの観光消費額」で算出するのだが、交通の便が良くなるとたいてい宿泊者数は減る。そうすると一人あたりの観光消費額はガクッと落ちる。
観光消費においては宿泊と夕飯&お酒のボリュームが大きいからだ。観光客数が 少々増えたところで宿泊が減ってしまうと観光収入はマイナスにな り地域経済 にとってはマイナスだ。延岡のホテルではビジネス客が減った、という話もよく聞く。観光客数だけでなく、観光消費額を見て観光政策を作っていく必要がある。
北九州市への直結が企業誘致にも影響
宮崎県の魅力を売り込む絶好のチャンスが来た―。
北九州市を起点に大分・宮崎両県の東九州地域を縦貫する東九州自動車道が2016年春に全面開通する。これまで同地域は九州の他県と比べ道路インフラの整備が遅れていた。それだけにインフラ整備の追い風を受けて観光、企業立地などの開通効果に大きく期待している。
北九州市に向けた東九州道の開通により、河野俊嗣宮崎県知事は「活発にヒト・モノ・カネ・情報が動いている」と喜ぶ。今年のゴールデンウイーク期間中、宮崎県内の主要観光地への入り込み客数は約92万人。前年対比約7万人増となった。特に宮崎県北地域の入り込み客数が大きく伸び、高千穂峡(高千穂町)は同50%増で過去最高を記録した。
東九州道と愛媛・大分両県を結ぶカーフェリーが連携。乗用車台数が約2割増加するなど新規観光ルートが開拓されたことで、観光圏の広域化により中・四国、関西地域から観光客が増えた。
一方、企業立地も大きな成果を上げている。東九州道の段階的な開通前と比べ宮崎県北地域の立地件数は1・8倍、最終雇用予定者数は1・4倍とそれぞれ増加した。これにより11―14年度までの宮崎県の累計は同件数135件、同予定者数5524人と、目標とした同件数100件、同予定者数5000人を大きく上回った。
食品向け物流拠点化へ
主にフードビジネスと流通関連業者の立地が多く、成長産業として育成してきた食品関連が増設。南九州の物流拠点としての優位性が高まった印象だ。そこで宮崎県は18年度までの新たな目標を同件数150件、同予定者数6000人と掲げて攻勢を強める。
15年度は県外で企業立地セミナーを開催。既存立地企業のフォローアップなどを通じ、フードビジネス、情報サービス、環境・エネルギー、医療機器関連産業といった重点産業の誘致に力を注ぐ。
空と海にも追い風
東九州道以外のインフラ整備でも追い風が吹いている。宮崎空港に今年3月、国際線で格安航空会社(LCC)が就航。8月には国内線も就航する。水深13メートルの細島港国際物流ターミナル(日向市)は6月に供用を始めた。いずれも国内外との交流を加速するポイントになる。
とはいえ、この勢いを増すには県民を巻き込んだ“オール宮崎”の取り組みが欠かせない。宮崎県も太陽の恵みに育まれた地域の魅力発信に向けて「日本のひなた宮崎県」をキャッチフレーズにプロモーションを始めた。地方創生に向けた地域間競争が激しくなる中「選ばれる県」を目指す宮崎が輝きを増している。
(文=大分支局長・広木竜彦)
日刊工業新聞2015年07月31日 中小企業・地域経済面