【連載】挑戦する地方ベンチャー No.3 FULLER(前編)
仲間とともに、夢を叶えられる場所をつくる
**「会社って作れるんだ!」
FULLER代表取締役社長の渋谷修太氏は、転校の多い幼少時代を過ごした。行く先々で友達を作るきっかけになっていたのがテレビゲーム。中学生になり進路を決める際にはゲームを作りたいと考え、長岡工業高等専門学校に進学しプログラミングを本格的に学ぶことにした。「当時流行っていた『ファイナルファンタジーⅩ』のエンディングで泣いたんですよ。人を泣かせるゲームを作りたい、エンドロールに自分の名前を載せたいと思ったんです」。
プログラミングは楽しかったが、それを上回って渋谷氏を惹きつけたのは「人と話すこと、人をまとめること」だった。高専の寮生活でリーダーの役割を担ったり、文化祭や運動会で中心になって動いたり。得意だったし、この経験を何かに生かせないかなと漠然と考えていた。しかし高専を卒業する頃になって、やりたいことが見つからず「このままじゃヤバいなと、『夢探し』のため近所の本屋に一週間くらい通いました」。留学に行こうかなと留学関係のコーナーを見ていた時、運命を変える一冊に出会う。それが、ライフネット生命代表取締役社長兼COOの岩瀬大輔氏の著書『ハーバードMBA留学記』だった。
「書籍の中に出てくるハーバード卒業生に向けられた言葉『一度しかない、あなたのワイルドでかけがえのない人生を、あなたはどう生きていくのですか?』に感動して。それまで会社に勤めると思っていたのですが、本を通して、会社って作れるんだ!と思いましたね」。その当時、周りには夢を持った友人がたくさんいた。「夢を語ってる友達がすごい好きで。その夢を叶えられる場所を作ることが自分の夢だって、友達と星空の下で語り合いました(笑)」。ちなみにその時の仲間は3人、今の会社で働いている。
起業に向けてビジネスを学ぼうと思い、筑波大学理工学群社会工学類に編入し経営工学を専攻。起業を視野に大学時代にも仲間とウェブサイトやアプリを作るなどの活動を行っていた。「高専から大学への編入は、情報がすごく少ないんです。どの大学を受験できるのか、どう勉強したらいいか、そういう情報を集めたポータルサイトを開設しました。これが高専から大学編入を目指す受験生にとっては『伝説のサイト』になりまして(笑)」。
その後、まだ就職するか悩んでいた大学3年の時、シリコンバレーの企業を見学しに行った。グーグル社のオフィスを見て衝撃を受け「自分の中で革命が起きた」。学んだことは2つ。1つは、これからはインターネットで勝負していく時代だということ。もう1つは、オフィス環境。自分が起業したら、シリコンバレーのようにゆったりとして遊び心のあふれる、働く人にとって楽園のようなオフィスを作りたいと考えた。
また、グリーのインターンシップにも参加。事業を企画しプレゼンするという大会で優勝したことをきっかけに入社し、マーケティングを担当した。グリーではアプリのダウンロード数をもとにユーザー数を予測するプログラムを作製し、社内で広く使われるようになった。しかし、スマホの普及に従ってだんだんと「ダウンロード数=ユーザー数」ではなくなり、精度が落ちてしまう。
そこでグリーから独立、FULLERを起業したのち開発したのが「App Ape」。アプリの、テレビでいう視聴率情報がわかるサービス。現在、無料版は5,000社、有料版は50社ほどに使用されている。
サービスは他にも、スマホ内で使用していないアプリを一覧化できアンインストールしてバッテリーを長持ちさせる「ぼく、スマホ」や、アプリの使用ログを取りスマホ依存度を診断する「スマホスピタル」などをリリースしている。そのユーザーのログデータをApp Apeに利用している。
他社と差別化できる一番のポイントは、「超真っ向勝負」。データを利用するというセンシティブな領域だからこそ、ユーザーに対してグラフィカルでわかりやすい利用規約を提示している。わかりやすさと正直さを評価され、官公庁もデータを購入してくれている。また、2年以上サービスを続けている点も競合他社の参入障壁になっているほか、ログを取る技術は特許になっている。
さらに、日本においては国産サービスであることが大きなポイントだ。「外資の競合はいるが、顧客のニーズに対応し素早く開発できるのは日本にいる企業ならではだと、最近になって気づきました」。
<会社概要>
会社名 FULLER(フラー)株式会社
設立年月 2011年11月15日
所在地 千葉県柏市若柴178-4 柏の葉キャンパス148-2 KOIL 5F
http://fuller.co.jp/>
FULLER代表取締役社長の渋谷修太氏は、転校の多い幼少時代を過ごした。行く先々で友達を作るきっかけになっていたのがテレビゲーム。中学生になり進路を決める際にはゲームを作りたいと考え、長岡工業高等専門学校に進学しプログラミングを本格的に学ぶことにした。「当時流行っていた『ファイナルファンタジーⅩ』のエンディングで泣いたんですよ。人を泣かせるゲームを作りたい、エンドロールに自分の名前を載せたいと思ったんです」。
プログラミングは楽しかったが、それを上回って渋谷氏を惹きつけたのは「人と話すこと、人をまとめること」だった。高専の寮生活でリーダーの役割を担ったり、文化祭や運動会で中心になって動いたり。得意だったし、この経験を何かに生かせないかなと漠然と考えていた。しかし高専を卒業する頃になって、やりたいことが見つからず「このままじゃヤバいなと、『夢探し』のため近所の本屋に一週間くらい通いました」。留学に行こうかなと留学関係のコーナーを見ていた時、運命を変える一冊に出会う。それが、ライフネット生命代表取締役社長兼COOの岩瀬大輔氏の著書『ハーバードMBA留学記』だった。
「書籍の中に出てくるハーバード卒業生に向けられた言葉『一度しかない、あなたのワイルドでかけがえのない人生を、あなたはどう生きていくのですか?』に感動して。それまで会社に勤めると思っていたのですが、本を通して、会社って作れるんだ!と思いましたね」。その当時、周りには夢を持った友人がたくさんいた。「夢を語ってる友達がすごい好きで。その夢を叶えられる場所を作ることが自分の夢だって、友達と星空の下で語り合いました(笑)」。ちなみにその時の仲間は3人、今の会社で働いている。
起業に向けてビジネスを学ぼうと思い、筑波大学理工学群社会工学類に編入し経営工学を専攻。起業を視野に大学時代にも仲間とウェブサイトやアプリを作るなどの活動を行っていた。「高専から大学への編入は、情報がすごく少ないんです。どの大学を受験できるのか、どう勉強したらいいか、そういう情報を集めたポータルサイトを開設しました。これが高専から大学編入を目指す受験生にとっては『伝説のサイト』になりまして(笑)」。
「真っ向勝負」で差別化
その後、まだ就職するか悩んでいた大学3年の時、シリコンバレーの企業を見学しに行った。グーグル社のオフィスを見て衝撃を受け「自分の中で革命が起きた」。学んだことは2つ。1つは、これからはインターネットで勝負していく時代だということ。もう1つは、オフィス環境。自分が起業したら、シリコンバレーのようにゆったりとして遊び心のあふれる、働く人にとって楽園のようなオフィスを作りたいと考えた。
また、グリーのインターンシップにも参加。事業を企画しプレゼンするという大会で優勝したことをきっかけに入社し、マーケティングを担当した。グリーではアプリのダウンロード数をもとにユーザー数を予測するプログラムを作製し、社内で広く使われるようになった。しかし、スマホの普及に従ってだんだんと「ダウンロード数=ユーザー数」ではなくなり、精度が落ちてしまう。
そこでグリーから独立、FULLERを起業したのち開発したのが「App Ape」。アプリの、テレビでいう視聴率情報がわかるサービス。現在、無料版は5,000社、有料版は50社ほどに使用されている。
サービスは他にも、スマホ内で使用していないアプリを一覧化できアンインストールしてバッテリーを長持ちさせる「ぼく、スマホ」や、アプリの使用ログを取りスマホ依存度を診断する「スマホスピタル」などをリリースしている。そのユーザーのログデータをApp Apeに利用している。
他社と差別化できる一番のポイントは、「超真っ向勝負」。データを利用するというセンシティブな領域だからこそ、ユーザーに対してグラフィカルでわかりやすい利用規約を提示している。わかりやすさと正直さを評価され、官公庁もデータを購入してくれている。また、2年以上サービスを続けている点も競合他社の参入障壁になっているほか、ログを取る技術は特許になっている。
さらに、日本においては国産サービスであることが大きなポイントだ。「外資の競合はいるが、顧客のニーズに対応し素早く開発できるのは日本にいる企業ならではだと、最近になって気づきました」。
会社名 FULLER(フラー)株式会社
設立年月 2011年11月15日
所在地 千葉県柏市若柴178-4 柏の葉キャンパス148-2 KOIL 5F
http://fuller.co.jp/>