企業はなぜ“社内運動会”を開くのか
最近の傾向は“フェスティバル化”、狙いは交流の活性化の他にも
テレワークなどが浸透し、1人でも仕事ができる環境が増えている中で、社内イベントを企画して社内交流の活性化に励む企業が増えた。特に“社内運動会”は、所属部署や役職を気にせず気軽に交流できるイベントとして選ばれやすい。企業内イベントの企画を数多く手がけるJTBコミュニケーションデザイン(JCD)では、実施に関心を示す企業の数がこの数年で増えたという。
社内運動会の開催企業が増えた背景について、JCDミーティング&コンベンション事業部の國原尚史エグゼクティブプロデューサーは「1人でも仕事ができる環境が増えたからこそ、社員同士でリアルなコミュニケーションがとれる機会の価値が高まっている」と分析する。
社内運動会を実施する多くの企業は、社員同士の交流を促すことで新規事業の創出や事業の活性化を狙う。JCDが企画を手がけた企業の中には、社内運動会で結成したチームで社内公募制度に応募したケースもあった。また、社員にイベント運営を担わせることで、リーダーシップの育成にもつなげている。
こうした中で、近年の社内運動会は家族も含めて交流できる“フェスティバル化”の傾向があるという。例えば、子ども向けのアトラクションや授乳室などを会場に設置したり、事業紹介を展示したりする。背景にあるのは、人材流出への懸念だ。JCDの國原エグゼクティブプロデューサーは「イベントを通して家族に企業への愛着を持ってもらうことは、人材定着の後押しになる」と語る。
2018年9月に初の全社スポーツイベント「Aフェス」を開催したAGCでは、大人と子どもが一緒に楽しめる競技や、子ども向けにアスレチックを設置するなど工夫した。企画・運営に携わった同社広報・IR部インターナルブランディングチームの高橋葵マネージャーは、開催理由について「社内の風土改革の活動を進める中で、『みんなで集まりたい』という声が多くの社員から寄せられた」と説明。その上で、「スポーツ以外でも楽しめるイベントにしたいと企画チームで考えていた。社員間で仕事の理解を深めるだけでなく、参加する社員の家族にもAGCについて知ってもらいたいと思い、事業内容に絡めたプログラムを企画した」と語る。実際に、会場に展示した事業紹介のパネルは、グループ会社の事業や本社の活動を知る機会として、社員・家族の双方から好評だった。
また、社員からは普段顔を合わせない人との交流や同期に再会したことを喜ぶ声に加えて、役職を気にせず交流できたことで社内の風通しの良さを実感する声も挙がったという。
一方、デンソーは2011年に社内運動会を24年ぶりに復活させた。「業績の低迷で会社全体の雰囲気が落ち込む中で、現場を盛り上げるために取り組んだ構造改革の一環」(同社人事部労務室の田中丸庸室長)として復活を決めたが、それ以来、社員同士が交流する貴重な機会として機能している。
デンソーの全社運動会は、本社や国内の製造所などの拠点ごとで予選を実施し、勝ち抜いたチームが10月の本戦に出場する。予選・本戦に向けた練習では、製作所内のコミュニケーションが活発になる。また、社員が自発的に他の製作所と合同練習を計画することもある。18年度優勝チームの同社大安製作所の堀誠所長は、「社内運動会は横のネットワークを広げるのに役立った。他の製作所と交流する機会も、社内運動会が復活する前はあまりなかった」と振り返る。
また、本戦では毎年ハイレベルな戦いが繰り広げられており、各製作所は作戦の立案や練習に余念がない。大安製作所では、練習時にPDCAサイクルやトヨタ式生産方式(TPS)を活用しており、新入社員や有期雇用社員に対する改善活動の教育にも役立っているという。
働き方改革を旗印に、テレ-ワークなどは今後さらに浸透が予想される。その中で、社員同士が交流する機会は、新規事業の創出や人材流出の抑制の効果が期待できるため欠かせないものだろう。交流の手段の一つとして、社内運動会は今後も重宝されそうだ。
社内イベントで運動会が選ばれる理由
社内運動会の開催企業が増えた背景について、JCDミーティング&コンベンション事業部の國原尚史エグゼクティブプロデューサーは「1人でも仕事ができる環境が増えたからこそ、社員同士でリアルなコミュニケーションがとれる機会の価値が高まっている」と分析する。
社内運動会を実施する多くの企業は、社員同士の交流を促すことで新規事業の創出や事業の活性化を狙う。JCDが企画を手がけた企業の中には、社内運動会で結成したチームで社内公募制度に応募したケースもあった。また、社員にイベント運営を担わせることで、リーダーシップの育成にもつなげている。
最近の傾向は“フェスティバル化”
こうした中で、近年の社内運動会は家族も含めて交流できる“フェスティバル化”の傾向があるという。例えば、子ども向けのアトラクションや授乳室などを会場に設置したり、事業紹介を展示したりする。背景にあるのは、人材流出への懸念だ。JCDの國原エグゼクティブプロデューサーは「イベントを通して家族に企業への愛着を持ってもらうことは、人材定着の後押しになる」と語る。
2018年9月に初の全社スポーツイベント「Aフェス」を開催したAGCでは、大人と子どもが一緒に楽しめる競技や、子ども向けにアスレチックを設置するなど工夫した。企画・運営に携わった同社広報・IR部インターナルブランディングチームの高橋葵マネージャーは、開催理由について「社内の風土改革の活動を進める中で、『みんなで集まりたい』という声が多くの社員から寄せられた」と説明。その上で、「スポーツ以外でも楽しめるイベントにしたいと企画チームで考えていた。社員間で仕事の理解を深めるだけでなく、参加する社員の家族にもAGCについて知ってもらいたいと思い、事業内容に絡めたプログラムを企画した」と語る。実際に、会場に展示した事業紹介のパネルは、グループ会社の事業や本社の活動を知る機会として、社員・家族の双方から好評だった。
また、社員からは普段顔を合わせない人との交流や同期に再会したことを喜ぶ声に加えて、役職を気にせず交流できたことで社内の風通しの良さを実感する声も挙がったという。
復活した伝統の一戦、効果は交流の活性化以外にも
一方、デンソーは2011年に社内運動会を24年ぶりに復活させた。「業績の低迷で会社全体の雰囲気が落ち込む中で、現場を盛り上げるために取り組んだ構造改革の一環」(同社人事部労務室の田中丸庸室長)として復活を決めたが、それ以来、社員同士が交流する貴重な機会として機能している。
デンソーの全社運動会は、本社や国内の製造所などの拠点ごとで予選を実施し、勝ち抜いたチームが10月の本戦に出場する。予選・本戦に向けた練習では、製作所内のコミュニケーションが活発になる。また、社員が自発的に他の製作所と合同練習を計画することもある。18年度優勝チームの同社大安製作所の堀誠所長は、「社内運動会は横のネットワークを広げるのに役立った。他の製作所と交流する機会も、社内運動会が復活する前はあまりなかった」と振り返る。
また、本戦では毎年ハイレベルな戦いが繰り広げられており、各製作所は作戦の立案や練習に余念がない。大安製作所では、練習時にPDCAサイクルやトヨタ式生産方式(TPS)を活用しており、新入社員や有期雇用社員に対する改善活動の教育にも役立っているという。
働き方改革を旗印に、テレ-ワークなどは今後さらに浸透が予想される。その中で、社員同士が交流する機会は、新規事業の創出や人材流出の抑制の効果が期待できるため欠かせないものだろう。交流の手段の一つとして、社内運動会は今後も重宝されそうだ。
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