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国立大のベンチャー支援、ベストな対価は株式か現金か

東大は「株」で上場インセンティブ狙う
 東京大学は学内インキュベーション(起業支援)施設に入居する同大発ベンチャー(VB)から、同大のVB支援の対価として株式を受け取る仕組みを始めた。施設入居費は現金徴収の一方、学内外の共同研究先やベンチャーキャピタル(VC)、弁護士の紹介などの総合支援に対し、VBの全株式の1%未満をストックオプションの形で得る。VB上場に向けた大学側のインセンティブ(意欲刺激)の具体例として注目される。

 東京大学は本郷キャンパス(東京都文京区)で病院南研究棟を改修し、既存の「アントレプレナープラザ」3600平方メートルと同規模のインキュベーションスペースを10月にオープン。ストックオプション付与を入居条件の一つに定めた株式新規則で合意したVBの入居が始まった。当初は入居VBや関連VCの反応を見ながら進める。

 同大は今後2―3年間で計約1万3000平方メートルのインキュベーション施設を整備する計画で、拡張の多くで新規則を適用する。柏IIキャンパス(千葉県柏市)では3階建て2000平方メートルの建物が18年度末に完成する。敷地内に産業技術総合研究所や国立情報学研究所の拠点もあるため、ビッグデータ(大量データ)や人工知能(AI)などのVB集積が期待される。

 ただ目白台地区(東京都文京区)の留学生寮の施設は、大学院生らの起業サークル用で対象外となる。また、上場を目指さない社会的起業(社会課題解決を重視する起業)向けには、キャンパス周辺に民間連携で施設整備する計画だ。

 2017年の規制緩和で国立大学は、大学発VBに対する業務の対価で株式・新株予約権を取得、長期保有できるようになった。そのため、対象VBが上場し高価格を付けた時点で株式売却し、高収入を得る道ができた。

 
日刊工業新聞2018年11月1日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
実は1年前と東大の判断は変化している。規制緩和は「国立大学は、大学発VBに対する業務の対価で株式・新株予約権を受け取れる」というものだ。具体例として施設入居費として受け取る事例も出されており、東大は当初はそのつもりだった。が、新株予約権は上場して初めて価値が具体化するもの。上場できず終わる可能性も大いにある【リスク資産】だ。そのため施設入居の対価は、近隣の相場に応じて現金で確実に受け取って置く方が好ましい-。今回はそう判断し、方針を転換したようだ。さらに今回の仕組み自体も、VBやVCの意見を聞いた上での修正もあり、とのこと。新しい仕組みは最初から決めてしまわずに、柔軟に対応しながらベストを探すのが適切に違いない。

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