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【今週のリケジョ】インフルエンザ治療薬の開発に奮闘

塩野義製薬 松浦聡予さん
 「『ゾフルーザ』の開発というやりがいのある仕事が、暗いトンネルから抜け出させてくれた」―。塩野義製薬の松浦聡予さん(34)は2013年に出産。育児休暇を経て、3月に発売したインフルエンザ治療薬ゾフルーザの仕事に携わった。育児休暇から復帰したのち、仕事と子育ての両立に悩んだ。

画期的な薬、多くの患者に


 高校生の頃、いとこが再生不良貧血にかかり入院。同室にいた同じ病気の子どもは、いとこを除いてみんな亡くなりました。画期的な薬があれば、より多くの患者が救える。そう考えました。京都薬科大学大学院薬学研究科修士課程まで進み、学生時代は薬が体内で溶けて吸収される挙動をテーマに研究しました。

 製薬企業の研究職を目指し、就職活動に取り組みました。人事部が親身になって相談に乗ってくれたのが決め手となり、当社を選びました。医薬品は適切な添加剤を加えて製剤化しなければ世に出ないことが入社後分かり、そこに面白みを感じました。

 2013年に出産した当時、所属する職場では院卒の女性研究者で出産経験者はいませんでした。周囲が支援してくれましたが、育休後の1年は生活が大きく変わり、先が全く見えない状態でした。

 それを乗り越えられたのは復帰当時の組織長の助言のおかげです。「子どもが大きくなった10年後を見据え、今何をすべきか考えなさい」と。さらに「ゾフルーザ」のチームに入れたことも大きかった。開発の前倒しやスイス・ロシュとの協議など困難もありましたが、充実していました。平日は仕事に打ち込み、休日は子どもと料理をするなどして過ごしています。

 医療の形はどんどん変わっています。異業種との協業やテーラーメード医療に必要な新薬など幅広い視野で勉強したいです。
            

(文=大阪・石宮由紀子、写真=清家史彦)
日刊工業新聞2018年10月29日

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