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申請の8割が取り下げ、“専門職大学”のハードルはどこ?

認可は高知学園の「高知リハビリテーション専門職大学」のみ
 2019年度に始まる専門職大学の設置認可で、文部科学省の大学設置・学校法人審議会は1大学のみの設置を認める答申を出した。初年度組で申請していた大学・短期大学・学科の17件のうち、2件が審査継続(保留)で、他は設置の申請を取り下げた。実習科目の甘さや、大学に必要な研究や理論教育の不足が要因だ。専門学校を運営する学校法人にとって、大学教育への参入の厳しさが明らかになった。

 認可は学校法人高知学園による「高知リハビリテーション専門職大学」だ。保留は同日本教育財団の「国際ファッション専門職大学」と、同ヤマザキ学園の「ヤマザキ動物看護専門職短期大学」で、結果は11月中旬以降に出る。「9月など発表直前に多数が取り下げる異例の展開」(専門学校関係者)だった。

 共通する問題点の一つは、単位全体の約3分の1を占める実習科目だ。「養成する人材像に向け、到達目標に見合った事前の学内実習、学外の実習施設、学内外の指導体制、学生の成績評価の基準など」(文科省・高等教育局)が問題とされた。通常のインターンシップ(就業体験)と混同しがちだが、段違いの内容となる。

 また教員の研究設備、実務家教員候補の実務業績も不十分だった。明らかな要件の欠如や書類不備も多く、専門学校と異なる大学の教育研究に向け、総じて準備不足だった。

日刊工業新聞2018年10月11日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
設置認可が1件、保留が2件という結果は、専門職大学の議論中から取材してきた身としてもショックだった。が、ハードルの中身を取材すると、取り下げ案件の中でも質に差があることを感じた。ハードルのうち、「実習科目の質と量」は既存大学でも経験ないものだけに、再申請に挑戦するにあたって苦労するのではないかと心配だ。「研究の施設や教員の資格」は、大学設置の経験があったり、大学の教育研究に詳しい学長候補者らの助言を生かせたりする学校法人なら、可となる基準に当たりを付けられ、設計し直すことが可能ではないか。これに対して「要件の欠如や書類の不備」はやや情けない話だ。専門学校の経営から大学の経営へジャンプアップする以上、こういった指摘が出ないよう、申請者には気を引き締めてほしい。

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