がれきの中も進む…災害で活躍する“パンクしないボート”は何が違う?
浜口ウレタンの「HAMAURE(ハマウレ)ボート」
沿岸部に押し寄せた津波により多くの犠牲者が出た2011年3月11日の東日本大震災が開発のきっかけ。その光景を目の当たりにした浜口ウレタン(浜松市西区、053・485・1331)の浜口弘睦社長は、水難から人を守るボートの開発を決意。長年培ったウレタン加工技術を応用し、浮力が強く丈夫な「HAMAURE(ハマウレ)ボート」が誕生した。
一般的なゴムボートは空気を注入してふくらませる。チューブ表皮は丈夫で摩擦にも強いが、それでも瓦礫(がれき)がある場所や岩場では、穴あきによる空気漏れやパンクの心配がある。
同社が14年夏に発売したハマウレボート「AUシリーズ」は、空気の代わりに硬質ウレタンフォームを充填(じゅうてん)しており「丈夫で穴があいても沈まない」(浜口社長)と胸を張る。推進力にはジェット推進船外機を採用。プロペラがないため、「水深30センチメートルの浅瀬でも乗れる。接地時や漂流物との接触でプロペラが破損する心配もない」(同)という機動力と安全性への評価も高い。
ハマウレボートは、“パンクしないボート”と注目され、災害時の救助用として消防署などから引き合いが相次いだ。船外機を装着すればすぐに出動できるのも好評で、納入実績は55件。最近はフィリピンなど「海外からの引き合いも増え始めた」(同)という。
16年5月に、三重県で開催された伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)の海上警備艇に選ばれ、一気に知名度が高まった。三重県警が海上警備や災害救助に適しているとして10艇を採用。従業員85人の町工場から出荷された“下町ボート”が、主要国の首脳が一堂に会す大舞台に採用された。この実績により、19年6月に日本で初の開催が予定される20カ国・地域(G20)大阪サミットでも、警備用ボートとして採用が検討されているという。
今夏も近畿・中国地方を襲った西日本豪雨や、猛威を振るった台風21号、24号など自然の脅威は増すばかり。同社はハマウレボートの開発をきっかけに、浮力の高い救命胴衣や船体防護用のフェンダーなど防災製品のラインアップを拡充している。
さらに屋根材にウレタンを注入し、浮力と強度を高める工法を開発中。同社の実験ではウレタン注入屋根には約500キログラムの浮力があり、「大人が4、5人乗っても大丈夫」(浜口社長)。災害時には“舟”の役割を果たす。
同社はもともと、2輪車や4輪車、医療機器向けのウレタン成形加工が主力。車のヘッドレストからテーマパークの乗り物の安全ベルト、駅の改札ドアなど誰もが見たり、触れたりしたことのある身近な部品も多く手がける。最近は人にやさしい協働ロボットへも採用が広がっている。
ウレタンは機械カバーやいすなどに使われる硬質タイプから、クッションや枕の材料になる軟質・半硬質まで、加工技術によりさまざまな質感や機能を出せる。「ウレタンは大きな可能性を秘めた素材」(同)と、今後も新製品開発や新分野の開拓に情熱を注ぐ。
(取材・文=浜松支局長・田中弥生)
一般的なゴムボートは空気を注入してふくらませる。チューブ表皮は丈夫で摩擦にも強いが、それでも瓦礫(がれき)がある場所や岩場では、穴あきによる空気漏れやパンクの心配がある。
同社が14年夏に発売したハマウレボート「AUシリーズ」は、空気の代わりに硬質ウレタンフォームを充填(じゅうてん)しており「丈夫で穴があいても沈まない」(浜口社長)と胸を張る。推進力にはジェット推進船外機を採用。プロペラがないため、「水深30センチメートルの浅瀬でも乗れる。接地時や漂流物との接触でプロペラが破損する心配もない」(同)という機動力と安全性への評価も高い。
サミット警備に
ハマウレボートは、“パンクしないボート”と注目され、災害時の救助用として消防署などから引き合いが相次いだ。船外機を装着すればすぐに出動できるのも好評で、納入実績は55件。最近はフィリピンなど「海外からの引き合いも増え始めた」(同)という。
16年5月に、三重県で開催された伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)の海上警備艇に選ばれ、一気に知名度が高まった。三重県警が海上警備や災害救助に適しているとして10艇を採用。従業員85人の町工場から出荷された“下町ボート”が、主要国の首脳が一堂に会す大舞台に採用された。この実績により、19年6月に日本で初の開催が予定される20カ国・地域(G20)大阪サミットでも、警備用ボートとして採用が検討されているという。
今夏も近畿・中国地方を襲った西日本豪雨や、猛威を振るった台風21号、24号など自然の脅威は増すばかり。同社はハマウレボートの開発をきっかけに、浮力の高い救命胴衣や船体防護用のフェンダーなど防災製品のラインアップを拡充している。
屋根が舟に!
さらに屋根材にウレタンを注入し、浮力と強度を高める工法を開発中。同社の実験ではウレタン注入屋根には約500キログラムの浮力があり、「大人が4、5人乗っても大丈夫」(浜口社長)。災害時には“舟”の役割を果たす。
同社はもともと、2輪車や4輪車、医療機器向けのウレタン成形加工が主力。車のヘッドレストからテーマパークの乗り物の安全ベルト、駅の改札ドアなど誰もが見たり、触れたりしたことのある身近な部品も多く手がける。最近は人にやさしい協働ロボットへも採用が広がっている。
ウレタンは機械カバーやいすなどに使われる硬質タイプから、クッションや枕の材料になる軟質・半硬質まで、加工技術によりさまざまな質感や機能を出せる。「ウレタンは大きな可能性を秘めた素材」(同)と、今後も新製品開発や新分野の開拓に情熱を注ぐ。
(取材・文=浜松支局長・田中弥生)
日刊工業新聞 2018年10月8日