自動車業界が固唾を呑む新型「RAV4」の売れ行き
米国販売「ライトトラック」比率高まる、日米交渉にも影響
70%超えが常態化するのか―。米国の自動車販売を巡り業界関係者が注目する数字がある。ピックアップトラックやスポーツ多目的車(SUV)を含む「ライトトラック(小型トラック)」と呼ぶ車種区分の販売比率だ。マークラインズの調べでは8月は69・4%まで高まった。
車種区分は「ライトトラック」と、セダンやコンパクトカーを含む「乗用車」の二つに大別される。両者の比率は2013年はほぼ半々だったが、大型車好きという米国の国民性に加え、ガソリン安の追い風などを受けライトトラックが伸びてきた。
ライトトラックは乗用車より価格が高めで、メーカーの利益幅も大きい。全体の自動車販売市場は16年の1755万台をピークに減少しているが、ライトトラックが伸びていることから、中身はさほど悪くないとの見方が強い。
ただライトトラックへの需要シフトで大きな恩恵を受けているのは米メーカーだ。ピックアップトラックは米ビッグスリーの牙城で、フォードモーター「Fシリーズ」やゼネラル・モーターズ(GM)「シボレー・シルバラード」が販売トップ3の常連。一方、伝統的に日系各社は燃費の良さを訴求できる乗用車を得意としてきた。ピックアップトラックの販売が、日・米メーカーの収益力を左右する要因になっている。
日系メーカーにも勝機はある。ライトトラックの中でもSUVはトヨタ自動車「RAV4」や日産自動車「ローグ」が販売トップ5内に入るなど存在感を示す。金利上昇が進む中、ローンで高額なピックアップトラックを購入するハードルが高くなり、より安価なSUVに購買意欲が向かえば日系メーカーに追い風となる。
足元でガソリン価格は上がっているが、過去からみるとまだ低位水準。景気も堅調で消費者が「ガソリン高の傾向をあまり意識しない」(遠藤功治SBI証券企業調査部長マネージングディレクター)状況にある。ライトトラックの人気は継続し販売比率は65―75%で推移するとみられる。日系メーカーの間でも「SUV比率は上がる」(吉田守孝トヨタ副社長)との意見が多く、各社は増産に動く。
トヨタは年末に全面改良して米国で発売するRAV4について、カナダ工場の設備を刷新して生産体制を整えるほか、米インディアナ工場でSUV「ハイランダー」の生産を増やす計画。ホンダは米国の既存2工場に加え、夏にメアリズビル工場でも「CR―V」の生産を始めた。マツダはトヨタと共同で21年に稼働させる米工場でSUV生産に乗り出す計画だ。
「正直、ほっとした」―。SUBARU(スバル)のある幹部は安堵(あんど)の表情を浮かべる。日米で物品貿易協定(TAG)締結に向けた2国間交渉に入ることで合意し、米国が検討する自動車の輸入制限を回避できたからだ。ただ、その措置は「TAG交渉中は」という条件付きでリスクが残る。輸入車の数量規制という最悪のシナリオもちらつく。
日系自動車メーカーが米国での工場新設や生産増強を決断し、それを日本政府がTAG交渉に生かす、というのが正攻法だ。ただ、その実現可能性をめぐる評価は分かれる。米国の人口は増えており、自動車市場も長期的な伸びが期待できるとの見方に立てば、生産拡大は無理のないシナリオといえる。
一方、米国で大幅な生産増強は難しいとの見方も根強い。米自動車市場は16年をピークに縮小し、その傾向は数年間続く見通し。またカーシェアサービスが拡大すれば新車市場が縮小に向かう。市場が下降局面にある中、「今、増強投資を判断するのは難しい」(遠藤功治SBI証券企業調査部長)との指摘もある。
足元の販売は、一部の人気車種を除きセダンの販売低迷が続き、市場が活性化する気配がみえない。SUVの波に乗れるかが、日系メーカーの米国での浮沈を左右する。
車種区分は「ライトトラック」と、セダンやコンパクトカーを含む「乗用車」の二つに大別される。両者の比率は2013年はほぼ半々だったが、大型車好きという米国の国民性に加え、ガソリン安の追い風などを受けライトトラックが伸びてきた。
ライトトラックは乗用車より価格が高めで、メーカーの利益幅も大きい。全体の自動車販売市場は16年の1755万台をピークに減少しているが、ライトトラックが伸びていることから、中身はさほど悪くないとの見方が強い。
ただライトトラックへの需要シフトで大きな恩恵を受けているのは米メーカーだ。ピックアップトラックは米ビッグスリーの牙城で、フォードモーター「Fシリーズ」やゼネラル・モーターズ(GM)「シボレー・シルバラード」が販売トップ3の常連。一方、伝統的に日系各社は燃費の良さを訴求できる乗用車を得意としてきた。ピックアップトラックの販売が、日・米メーカーの収益力を左右する要因になっている。
日系メーカーにも勝機はある。ライトトラックの中でもSUVはトヨタ自動車「RAV4」や日産自動車「ローグ」が販売トップ5内に入るなど存在感を示す。金利上昇が進む中、ローンで高額なピックアップトラックを購入するハードルが高くなり、より安価なSUVに購買意欲が向かえば日系メーカーに追い風となる。
足元でガソリン価格は上がっているが、過去からみるとまだ低位水準。景気も堅調で消費者が「ガソリン高の傾向をあまり意識しない」(遠藤功治SBI証券企業調査部長マネージングディレクター)状況にある。ライトトラックの人気は継続し販売比率は65―75%で推移するとみられる。日系メーカーの間でも「SUV比率は上がる」(吉田守孝トヨタ副社長)との意見が多く、各社は増産に動く。
トヨタは年末に全面改良して米国で発売するRAV4について、カナダ工場の設備を刷新して生産体制を整えるほか、米インディアナ工場でSUV「ハイランダー」の生産を増やす計画。ホンダは米国の既存2工場に加え、夏にメアリズビル工場でも「CR―V」の生産を始めた。マツダはトヨタと共同で21年に稼働させる米工場でSUV生産に乗り出す計画だ。
米国での生産拡大、判断難しく
「正直、ほっとした」―。SUBARU(スバル)のある幹部は安堵(あんど)の表情を浮かべる。日米で物品貿易協定(TAG)締結に向けた2国間交渉に入ることで合意し、米国が検討する自動車の輸入制限を回避できたからだ。ただ、その措置は「TAG交渉中は」という条件付きでリスクが残る。輸入車の数量規制という最悪のシナリオもちらつく。
日系自動車メーカーが米国での工場新設や生産増強を決断し、それを日本政府がTAG交渉に生かす、というのが正攻法だ。ただ、その実現可能性をめぐる評価は分かれる。米国の人口は増えており、自動車市場も長期的な伸びが期待できるとの見方に立てば、生産拡大は無理のないシナリオといえる。
一方、米国で大幅な生産増強は難しいとの見方も根強い。米自動車市場は16年をピークに縮小し、その傾向は数年間続く見通し。またカーシェアサービスが拡大すれば新車市場が縮小に向かう。市場が下降局面にある中、「今、増強投資を判断するのは難しい」(遠藤功治SBI証券企業調査部長)との指摘もある。
足元の販売は、一部の人気車種を除きセダンの販売低迷が続き、市場が活性化する気配がみえない。SUVの波に乗れるかが、日系メーカーの米国での浮沈を左右する。
日刊工業新聞2018年10月1日/2日の記事を加筆・修正