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花火を科学する!「丸星」作りは職人の技。色を増やす取り組みも

ハート形はなぜできるの?日本と海外の違いは?足利工大教授の解説付
花火を科学する!「丸星」作りは職人の技。色を増やす取り組みも

花火玉の内部構造(足利工大提供)

 夏の風物詩といえば花火。江戸時代ごろから庶民に人気だった花火は今でも多くの人に親しまれている。科学の発展とともに花火の技術も発展し、さまざまな色や形を表現できるようになった。花火研究の第一人者である足利工業大学の丁大玉(てい・たいぎょく)教授に花火の科学について聞いた。

 <丸み利点>
 これからの季節、国内のさまざまな地域で花火大会が開かれ、わくわくしている人も多いだろう。では花火とは何か。丁教授によると「花火は火薬を巧みに利用し、その燃焼による光、音、煙、運動などの演出効果を楽しむもの」と説明する。

 花火は日本だけでなく海外にも多くある。外国の打ち上げ花火は円筒型が多く、上空で”傘“のように広がり、だらりと柳のように垂れる。

 一方、日本の打ち上げ花火は球状に大きく開くのが大きな特徴だ。火薬が詰まった花火玉の直径が900ミリメートルほどの30号玉では、打ち上げ時の到達高度が600メートル、開花時の直径が550メートルになる。球形の打ち上げ花火はどの方向から見ても丸く見え、発射火薬による強い力に対し丸みで力を逃がすことで玉がひび割れしにくいという利点もある。

 上空で花火を作り出すには花火玉を上空に打ち上げ、同時に点火した内部の火薬を破裂させる必要がある。花火玉は、燃えて光を放出する火薬「星」、花火玉を破裂させ星を点火・放出する「割薬」、割薬に点火するための「導火線」などで構成される。

 <光は5色>
 特に花火玉の破裂や打ち上げに重要な部品となるのが火薬だ。火薬は燃える物質である「可燃剤」と、燃焼に必要な「酸化剤」でできている。火薬の性能はこの二つの組み合わせで決まる。古くから黒色火薬という火薬が使われており、硝酸カリウム、硫黄、炭などの物質で構成される。

 火薬の基本的な性能に加え、花火では鮮やかな色が欠かせない。ここには金属化合物が燃える際に金属特有の色の光を放出する「炎色反応」を利用している。この金属化合物を星の中に混ぜることでさまざまな色を発する星を作れる。ストロンチウムであれば赤、ナトリウムであれば黄色に発光するなど現在は5色の光を花火に使っている。

 さらに花火の色を増やす取り組みが進行中だ。6月に足利工大、秋田県大仙市、大曲(おおまがり)花火協同組合(秋田県大仙市)が花火の研究開発に関する連携協定を結んだ。丁教授は「今ある青の光をさらに濃く明るくできるようにしたい」と夢を語る。
 
日刊工業新聞2015年07月20日 科学技術・大学面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
確かに海外の花火は直線的で力強いが、日本の方が丸みがあって柔らかに感じる。日本人の精細さはこんなところにも。

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