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豊田章男が語る、「税金とモリゾウ」

 自動車産業はすそ野が広く、それぞれの国を背負う。日本の自動車メーカーは日本も背負い、また海外にも進出しているので、その町その町の将来をも担っている。どこの進出国であっても「その町いちばん」や、その国で必要とされる会社や産業となるように各社が切磋琢磨(せっさたくま)しなければならない。

 そんな中、本拠地である国内市場の活性化は重要課題だ。日本では税金のほか、保険や駐車場、ガソリンなど4輪車や2輪車を保有するのに多くの費用がかかる。2019年10月に予定される消費増税に伴い、18年は自動車税制改正の論議でも大きなヤマ場を迎える。

 日本は本当に自動車関連の税金が高い。市場活性化には各社が魅力ある商品を提供することはもちろんだが、税率をせめて国際基準にすることが必要だ。

 そして、地方税でもある車体課税の減税などの働きかけを始めると、必ず出てくるのが地方財源の問題。我々は日本各地で事業をしており、地方財源も非常に重要だと認識している。「車体課税VS地方財源」のような対立軸にされることが残念だ。

 クルマユーザーも国民。日本のクルマユーザーの負担は世界で最も高い水準にある。複雑かつ荷重な自動車諸税に終止符を打ち、制度の簡素化、お客さまの負担軽減に取り組む。

 国内には一時、年間700万台を超える新車市場があったが、現在は500万台程度。ただ、国内には4輪車だけでも約8000万台の保有があり、市場の活性化はまだまだ可能だ。

 現在はあまりにコストが高いという理由で保有期間が延びている。もう少し短くできれば国内市場もコンペティティブ(強い競争力)になる。

 私は大のクルマ好き。生意気な言い方だがトヨタ自動車の社長というよりはドライバー「モリゾウ」というアイコン(偶像)を十二分に活用したい。

 今年も広島県や長野県、福井県、群馬県でラリーに参加したが、モリゾウを見たいという人が増えている。ラリーを通じて村おこしや町おこし的なムーブメントも起きる。

 私自身が行動することで、モータースポーツやモビリティーの世界で少しずつだが変化があると思う。大変微力ながら、「クルマ好き」を全面的に出してクルマの楽しさやクルマが果たすべきミッションを発信していきたい。

 20年には東京五輪・パラリンピックが開催される。その前年に開く東京モーターショーは変革の重要なマイルストーン(里程標)と考えている。未来のモビリティー社会の一端をお見せし、20年、さらにはその先に続く「先進モビリティー社会日本」への期待感をふくらませる場にしたい。
日刊工業新聞2018年7月18日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
日刊工業新聞では現在、「広角・豊田章男編」を掲載中です。そぼ他の回もご覧下さい。

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