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今、ロボットで注目の菊池製作所。なぜそこまで力を入れるのか?

菊地社長インタビュー「5社くらいが連携すれば医療・介護向けなどに面白いロボットが作れるはずだ」
今、ロボットで注目の菊池製作所。なぜそこまで力を入れるのか?

菊池功社長は「中小企業が連携すればもっとおもしろいロボットができる」と話す。

 菊池製作所がロボット事業を急拡大させている。装着型の作業支援ロボット「マッスルスーツ」などを販売する子会社のイノフィス(東京都新宿区)を2013年12月に設立。介護、物流、農業といった分野向けに展開し、すでに800台以上を出荷している。また、東京工業大学と共同で新たに歩行支援型のロボットも開発。ロボットを既存の試作事業に続く次代の柱にしたい考えだ。菊池功社長にロボット事業にかける思いを聞いた。

 ―ロボット分野に参入したきっかけは。
 「さかのぼれば十数年前になる。東京工科大学との産学連携事業が始まりだった。当社は金型製作、プレス、機械加工、射出成形などモノづくりのあらゆる設備とノウハウを持ち一貫生産できるため、さまざまな大学による先端製品の製作をお手伝いするようになった。マッスルスーツはそんな産学連携事業で生まれた成果の一つ。今も十数件の研究開発テーマが進行している」

 ―ここまで力を入れる理由は何でしょう。
 「中小企業にとって大きなチャンスになる領域だからだ。ロボットの製作では中小が持つモノづくりのコア技術が求められる。また、今後ニーズが拡大する医療・介護など生活分野は、多品種少量で時にカスタマイズも要求されるため、大手は入り込みづらい。我々としてもやりがいのある仕事だ。自分たちの作ったモノが製品として世に認められ、価格も主体的に設定できる」

 ―課題は。
 「まだまだマーケットは小さい。ロボット産業に参加する企業がもっと増えないといけない。ユーザーに製品を比べてもらうことで市場は発展する。やはり中小企業には期待したい。1社では難しくても、5社くらいが連携すれば医療・介護向けなどに面白いロボットが作れるはずだ」

 ―国への要望は。
 「これからはロボットユーザーをいかに育てるかが重要。導入補助なども始まっているが、より申請しやすい形式にしてほしい」
 
 【記者の目/国内製造業のけん引期待】
 国内製造業の新たなけん引役として菊池社長がロボットにかける期待は大きい。試作の受託が主力だった企業がロボメーカーとして生まれ変わる姿を示したい思いもあるのだろう。同社のような試作企業をはじめ、中小企業は数年前の超円高で大打撃を受けた。その傷が癒えきっていない今、菊池社長の挑戦は大きな意味を帯びる。今後はロボットの活用事例をどうアピールし、市場を広げられるかに注目したい。
 (文=藤崎竜介)
日刊工業新聞2015年07月16日 機械・ロボット・航空機面
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
次々と積極的にロボット事業拡大に向けた一手を打ち出す菊池社長。中小企業だからこその身軽さやスピード感が一役買っているのかもしれない。この動きが波及して中小企業振興につながることを期待したい。

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