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参入ハードル高い航空機部品で、海外から受注を増やす秘訣

特殊銅合金製造加工の三芳合金工業
参入ハードル高い航空機部品で、海外から受注を増やす秘訣

特殊材料や多品種少量品、超短納期対応を得意とする 

 グループの大和合金とともに銅合金の溶解鋳造から鍛造、熱処理、機械加工まで一貫で手がける三芳合金工業。特殊材料や多品種少量品、超短納期対応を得意とし、半導体や通信、自動車、エネルギーなど幅広い分野に供給している。中でも急速に売り上げを伸ばしているのが航空機分野。市場の大半を欧米勢が握っており、日本の中小企業にとって参入ハードルは極めて高い。同社はそこをどう乗り越えたのか。
 

地球を一周


 4月中旬から5月の大型連休にかけ、萩野源次郎社長は地球を一周した。ドイツの航空機関連の展示会に出展した後、大西洋を超えて米国に渡り、新たな航空機関連の代理店を訪問。さらに、メキシコに飛んで機体整備会社との商談に臨んだ。「展示会でも親しい人が来てくれるようになり、足を止める来場者も増えた」と萩野社長の表情も緩む。

 主にランディングギアと呼ばれる機体の足回り部品を製造。2018年度の出荷量は17年度比で倍増。「高い目標かと思ったが、1-4月でほぼ3分の1に達している」(萩野社長)と手応えは十分だ。

 2000年代半ばまでは国内の航空会社向けに機体整備用の補修部品を供給。04年に得意先の整備会社が素材を米国製に切り替えたことで生産量は激減したが、問題が発生したため、翌年には注文が全量戻ってきたという。これで「ひょっとしたら、海外勢にも対抗できるかもしれない」(同)と思いたち、海外へ乗り出すに至った。

海外企業から受注や認証


 2008年に横浜で開かれた国際航空宇宙展を皮切りに香港やロンドン、ベルリン、パリ、シンガポールとほぼ毎年、航空関連の展示商談会へ参加を続ける。「最初はいまいち。反応もなかった」(同)が、12年ごろから風向きが変わる。シンガポールの機体補修会社を端緒にメキシコ、そして本場のフランスからの受注に成功する。14年にはエアバスの足回り部品を製造する仏サフランから認証を取得。16年にも同じく独リーブヘルの認定工場に承認される。18年にはサフラングループからの認定材料のスペック数が大幅に増加し、トータルで11件となった。

 評価の理由の一つは、競合他社の多くが商社を介在させるのに対し、「我々はメーカーなので、何か問題があれば製造条件を変えることで対応できる。それで動きが速いと感じてくれている」という柔軟性。商談には必ず製造、開発の担当者を同行させ、顧客の信頼につなげている。梱包を含めた品質確保と不良時の対応でも高い評価を得ているそうだ。

 とはいえ、「とにかく規格が厳しい。合金の特性を合致させるのに苦労している」と、今なお勉強中。歩留まりもまだ道半ばだとして、さらなる自己研鑽に励んでいる。

▽所在地=埼玉県三芳町上富508▽社長=萩野源次郎氏▽創業=1963年▽売上高=約37億円(2017年9月期)
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
商社を介していないということは価格競争力もありそうです。

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