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トヨタ、ファナックが認めた愛知・刈谷の商売人

豊電子工業の盛田豊一会長
トヨタ、ファナックが認めた愛知・刈谷の商売人

2012年のトヨタ技術開発賞を授与される盛田豊一社長(右、当時)

 豊電子工業は2018年2月、トヨタ自動車の「技術開発賞」を中部電力と共同で受賞した。対象は「熱可塑性CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の急速加熱装置の開発」。過熱蒸気を使い、従来の加熱方式に比べ、加熱時間を3分の1、エネルギー消費量を5分の1にした。

 同賞はトヨタの商品力を高めた部品、資材、設備の画期的な技術が対象だ。豊電子の受賞は12年以来2度目。「トヨタに直口座ができ、直接情報を得られるようになったのが当社の転機」と会長の盛田豊一は振り返る。

 豊電子はロボットシステムインテグレーター(RSI)事業の開拓者だ。1981年に、かつて直販を貫いたファナックの初の販売協力会社となった。今もファナック製ロボットの扱いはRSIで全国一だ。

 盛田豊一は64年、22歳で自動車用のコイルの巻線加工で愛知県刈谷市で創業した。実家は北海道の商家。父の他界により19歳で愛知県に移ったが、就職後も事業への気持ちは強かった。

 盛田は負けず嫌いで怖い物知らず。「どんなことでもできる」が信念だった。技術も実績もないのに無視されても大手部品メーカーの購買窓口に日参した。自動車は普及期で部品メーカーは繁忙。やがて部品の切削、ワイヤハーネス加工、樹脂成形、組み立て、金型製作など、さまざまな仕事を振られるようになった。

 自社でできない仕事は外注先を探した。特定の技術にこだわらない商売人の血も幸いした。「資金を蓄え、図らずもモノづくりの幅広い知識も身につけた」と盛田は言う。

 一方、自動車業界での限界も見えた。大手の下請け、孫請けで、序列を変える巨額な設備投資など不可能だ。「下請けから抜けたい。自社ブランドがほしい」と考え、68年に配電盤事業に参入した。技術の蓄積は皆無。電機系の大学卒新入社員を採り、勉強させた。

 79年にはロボットを採用した生産ラインの制御系を手がけ、RSIの重要性と可能性に気付いた。「NC装置やモーターは開発できないが、RSIなら“頭”になれる」(盛田)。直販を貫くファナックを1年以上かけて説得した。「ロボットのスムーズな導入には、生産現場を知り、きめ細かい提案ができるRSIが必要だ」と。

 そして81年、ファナックの当時の社長の稲葉清右衛門から直接、ファナックのロボットを販売することが許された。その場で盛田は「ロボットはファナックしか扱わない。必ず成功させる」と誓った。「大きな感謝と感激は今も忘れられない」と豊一は懐かしむ。この関係がトヨタからの直接受注にもつながっていった。(敬称略)

▽愛知県刈谷市一ツ木町5の12の9、0566・23・2301▽社長=盛田高史氏▽グループ従業員=680人▽創業=1964年(昭39)7月▽資本金=4500万円▽グループ売上高=180億円(18年12月期見込み)▽URL=www.ytk-e.com/
日刊工業新聞2018年7月3日
梶原洵子
梶原洵子 Kajiwara Junko 編集局第二産業部 記者
バイタリティーの強い、興味深い人物だと感じました。日刊工業新聞の連載「不撓不屈」では、地域を代表する多くの中小企業を各担当記者が紹介しています。この記事は、愛知県の豊電子工業の連載1回目です。

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