血友病治療に革新的な新薬、どう生かすべきか
「圧倒的に有効性高い」も適正使用カギに
血液凝固第VIII因子の先天的欠損や機能異常によって重篤な出血をきたす血友病A。定期的に第VIII因子製剤を静脈注射で補充して出血頻度を減らす治療が行われてきた。ただ頻回の静注は患者にも家族にも負担が大きい上、インヒビター(中和抗体)が生じて第VIII因子製剤が効かなくなる場合もある。今般、こうした課題が解決すると期待される新薬が出た。製薬企業や医療関係者は同剤の適正使用を徹底し、治療の進歩につなげられるか試される。
「今まで出血に苦しんできた患者さんの治療を劇的に改善できる、夢のような製剤だ」。奈良県立医科大学小児科学教室の嶋緑倫教授は、中外製薬が5月に発売した血友病A治療薬「ヘムライブラ」を高く評価する。
同剤の特徴の一つは、週1回の皮下注射で済む点だ。従来の血友病A治療薬は投与時に静脈注射が必要であり、「小さい子は毎回泣く。ご両親もできるようになるまで時間がかかり、大変」(嶋教授)。こうした負担の減少が見込まれる。
また、ヘムライブラの臨床試験では、インヒビターを保有する血友病A患者に対して出血率の低下が認められた。嶋教授によると、インヒビターが出た患者は「通常の製剤の効果が激減し、出血回数は途端に増える」。当事者にとって治療選択肢増加は朗報だろう。
国もヘムライブラの価値を認めた。薬価算定の際は「有用性加算(I)」や「市場性加算(I)」という補正加算が適用され、30ミリグラムの薬価は37万6006円で収載された。
ただ、臨床試験では一部のバイパス止血製剤と併用した場合、血栓塞栓(そくせん)症などの重い副作用が発生した。今後、実臨床で適正使用を徹底できるか。
●奈良県立医科大学小児科学教室教授・嶋緑倫(しま・みどり)氏
インヒビター保有の血友病に対する治療としては、インヒビター消失を目的とした免疫寛容療法もある。第VIII因子を投与し続けて、抗体産生量をだんだんと低下させていくものだ。ただこれが成功しやすいのは、インヒビターが低い方たちの群で、その場合の成功率は7割程度。そうでない人には全く効かない。
インヒビターがある患者さんは、(従来の製剤よりも)ヘムライブラが圧倒的に有効性が高く、多くの場合、同剤を使うことになるだろう。
インヒビターのない患者さんは、現状の治療に満足していて慣れた製剤や生活リズムを変えたくないという人もいる。だが5年くらいたてば、ヘムライブラが(シェア)4割程度になるのではないか。(新薬に関する)情報が患者さんの間で伝われば、選ぶ人も増えてくると思う。(談)
「今まで出血に苦しんできた患者さんの治療を劇的に改善できる、夢のような製剤だ」。奈良県立医科大学小児科学教室の嶋緑倫教授は、中外製薬が5月に発売した血友病A治療薬「ヘムライブラ」を高く評価する。
同剤の特徴の一つは、週1回の皮下注射で済む点だ。従来の血友病A治療薬は投与時に静脈注射が必要であり、「小さい子は毎回泣く。ご両親もできるようになるまで時間がかかり、大変」(嶋教授)。こうした負担の減少が見込まれる。
また、ヘムライブラの臨床試験では、インヒビターを保有する血友病A患者に対して出血率の低下が認められた。嶋教授によると、インヒビターが出た患者は「通常の製剤の効果が激減し、出血回数は途端に増える」。当事者にとって治療選択肢増加は朗報だろう。
国もヘムライブラの価値を認めた。薬価算定の際は「有用性加算(I)」や「市場性加算(I)」という補正加算が適用され、30ミリグラムの薬価は37万6006円で収載された。
ただ、臨床試験では一部のバイパス止血製剤と併用した場合、血栓塞栓(そくせん)症などの重い副作用が発生した。今後、実臨床で適正使用を徹底できるか。
【専門医は語る】
●奈良県立医科大学小児科学教室教授・嶋緑倫(しま・みどり)氏
インヒビター保有の血友病に対する治療としては、インヒビター消失を目的とした免疫寛容療法もある。第VIII因子を投与し続けて、抗体産生量をだんだんと低下させていくものだ。ただこれが成功しやすいのは、インヒビターが低い方たちの群で、その場合の成功率は7割程度。そうでない人には全く効かない。
インヒビターがある患者さんは、(従来の製剤よりも)ヘムライブラが圧倒的に有効性が高く、多くの場合、同剤を使うことになるだろう。
インヒビターのない患者さんは、現状の治療に満足していて慣れた製剤や生活リズムを変えたくないという人もいる。だが5年くらいたてば、ヘムライブラが(シェア)4割程度になるのではないか。(新薬に関する)情報が患者さんの間で伝われば、選ぶ人も増えてくると思う。(談)
日刊工業新聞2018年6月14日