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VRがデザイナーを変える!

ワコム、新ツール開発へ
VRがデザイナーを変える!

VR空間内で3Dデザインを作成する様子(車)/記事最下部に制作過程の一部の写真を載せています。

 アニメやデザイン制作向けツールを展開するワコムは、仮想現実(VR)空間内で、3次元(3D)デザインを行うツールの開発を進めている。2019年をめどに製品化を目指す。VR空間内で手を動かし、立体に触ることで、直感的に角度や長さ、奥行きを変えて、全体像を短時間で作成する。映像制作や工業デザインなどの多様なクリエイターが3Dデザインに取り組みやすくする。

1週間を4時間に


 ワコムの井出信孝社長は、「VRで直接デザインすると、デザイナーのワークフローが大きく変わる」と利点を説明する。ヘッドセットやコントローラー、ソフトウエアなどで構成する試作機を顧客に公開した。今後は意見を開発に反映しながら、詳細を詰める。

 あるデザイナーが試作機を使ったところ、通常は1週間かかる複雑なロボットキャラクターのデザインを、約4時間で完成できたという。

 現在の3Dコンテンツ制作は、ディスプレー画面上に画像を書き込む2次元(2D)環境での作業が主流。専門知識が必要で、制作期間も長かった。一方、VR空間内での作業は、大まかな形状などの全体像を素早く作成できる。2D環境での精緻な作業とうまく使い分けることで、制作期間を短縮できる。

直感的に立体を動かす


 開発中のツールは、最初から3Dでデザインすることも、平面図を引き伸ばして3Dにすることもできる。例えば、真横から見た飛行機のデザイン画をVR空間内に取り込み、機体の横幅や主翼などを引き伸ばすなど加工して立体にできる。

 自動車のデザインでは、VR空間内で一定の幅に広げた両手を前後にスライドさせるだけで、その動きに沿った平面を作り、ボンネットやドアの表面を描画。また、デザインの縮尺を変えて、車体の内部に入って内装を描画することも、マネキンを入れて広さを調節することもできる。

 また、3Dスキャナーで取り込んだ頭部のデータを基に、個人の頭の形に合わせた眼鏡をデザインするなど、オーダーメードのデザインにも利用できる。作成したデザインは、標準的なデータフォーマットに変換して出力し、2D作業やCADと連携する。

元・高級車デザイナーらと開発


 VR用コンテンツの作成といった新しい仕事だけでなく、商品開発などでも3Dデザインの作成は増えてきている。新しいツールが実現すれば、現在3Dコンテンツの作成にかかっている負担を軽減し、これまで3Dコンテンツを作成していなかった人も作成しやすくなると見られる。

 このツールの開発は、高級車ブランド「ジャガー」のデザイナーらが立ち上げたベンチャー企業の英グラビティスケッチと共同で行っている。ワコムはタブレット端末やデジタルペンなどのデザインツールを展開し、クリエイターからの信頼が厚い。現在市場にクリエイター向けのVRツールはなく、「ワコムがやらなければならない」と、井出社長は語っている。

VR空間内で3Dデザインを作成するデモ(車)

VR空間内で3Dデザインを作成するデモ(めがね)

梶原洵子
梶原洵子 Kajiwara Junko 編集局第二産業部 記者
ほんの十数分で、自動車の外観と内装のデザインができあがっていくデモンストレーションは驚きでした。3Dスキャナーで取り込んだ人物の立体データをもとに、オーダーメードの商品を作製するのもおもしろいアイデアです。アイデア次第で新しいビジネスも出てきそうです。

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