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先行する米GE、インダストリアル・インターネットを提唱

顧客を巻き込んだプラットフォームづくりで勝つ
 米ゼネラル・エレクトリック(GE)は、現在世界中に分散している生産システム・産業用機器をインターネットでつなぐことにより、産業を飛躍的に効率化する「インダストリアル・インターネット」を提唱している。例えば、世界中の航空機にセンサーをつけ、収集した大量のデータを解析することで、整備が必要な箇所を早期に発見する、あるいは部品交換のタイミングを最適化することができるという。

 しかし、製造業がこういった保守・運用サービスを強化して収益性をあげるビジネスは、多くの日本企業も取り組み、成功例もある。では、過去の取り組みとの違いは何か。

 一つは参加企業数の多さである。2014年3月にはGE、AT&T、シスコシステムズ、IBM、インテルがIoT(モノのインターネット)の標準団体であるインダストリアル・インターネット・コンソーシアムを立ち上げた。設立後、まだ1年たっていないが、現在の加盟機関数は126に上る(表)。
ユーザーを巻き込んだグローバル規模での企業連合により、業界標準獲得、サービス導入コストの低減など多様な効果が期待される。

 次に考えられるのは、プラットフォーマーへの対抗策であろう。すべての情報がクラウドにあがると、前々回述べたデータプラットフォーマーが優位に立つ。しかし、これでは産業利用に耐えるセキュリティーの確保が難しいとGEは主張する。このため、デバイスに残すデータと、リモートに転送しユーザーと共有すべき情報を区分けする重要性を強調している。そうすれば、全情報をプラットフォーマーに掌握されずにすむ。

 さらには結果として得られるインパクトの大きさも注目に値する。例えば、航空業界が1%の燃料節減を15年続けると300億ドル、ガス火力発電プラントが1%の効率改善を行うと燃料費が660億ドル節約できるとGEは推計する。1社単独ではニッチに見える領域も、インターネットでグローバルにつながると莫大(ばくだい)な経済効果をもたらすだろう。

 製造業のみならず、その顧客を巻き込んだプラットフォームづくりは、製造業がインターネット時代を勝ち抜くための一つの方策といえよう。

 科学技術振興機構研究開発戦略センター エキスパート 岡山純子
日刊工業新聞2015年1月22日モノづくり面
清水信彦
清水信彦 Shimizu Nobuhiko 福山支局 支局長
GEはIoTとビッグデータを使ってジェットエンジンや医療機器の保守サービスを効率化する取り組みを続けてきました。さらにはそこで使うIT基盤「Predix」を外販するところまで進んでいます。じっくり標準化を進めるドイツに比べても動きが速い!さすが最強企業!

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