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ドローン市場の国産メーカー巻き返しは「率直に言って厳しい」

ブルーイノベーション・熊田貴之社長インタビュー
 政府は今夏をめどに、中山間地や離島での飛行ロボット(ドローン)を使った目視外飛行輸送を解禁する方針だ。2020年以降は都市部での輸送も一定条件の下、認める方向で、産業界でドローンビジネス拡大の期待が高まる。ブルーイノベーション(東京都文京区)はこうした動きを受けて全国各地のドローン発着場設置などインフラ整備を進めている。熊田貴之社長に狙いを聞いた。

 ―複数ドローン制御のプラットフォーム技術を武器に、ドローン応用で警備、屋内点検、教育・安全、エンタメ、物流の5分野の拡大を掲げています。
 「ドローンビジネスは農業向けが先行しているが、今後伸びるのは点検、その先の本命は物流分野だと考えている。点検は橋げたや高速道路などのインフラが老朽化し、5年後に市場が10倍になるとの予測もあるので積極的に取り組んでいる」

 ―本命の物流では、国の規制緩和を見越して、長野県伊那市で中山間地のドローン輸送やドローン発着場の実験を行った。
 「発着場の登録制度は今秋にも始めたい。すでに多くの自治体から問い合わせがある。都心と違い、中山間地は隣の集落でも山を越えないと行けないような地域がたくさんある。車では時間がかかるが、ドローンだとひとっ飛びだ。さらにドローンは人や車が危険で入れない場所にも行ける。活用法は数多い」

 ―20年以降は都市部でも、ドローン輸送が一部解禁される見通しです。需要の多い大都市間で、ドローン発着場を展開する考えは。
 「それはない。長距離輸送だと費用対効果でトラックや鉄道が有利だ。ドローンは可搬重量や飛行距離に制限がある。大量の荷物はトラックで運び、ドローンはそこから先のラストワンマイルのようにすみ分けが進むのではないか」

 ―米国や中国など海外では、都市部も含めたドローン輸送が先行していると聞きます。
 「米国のシリコンバレー近辺で運ばれているのは血液だ。中国では臓器が運ばれた例もあると聞く。可搬重量や輸送コストの問題から、ドローンで何でも運ぶのではなく、救命や緊急性のあるもの、ICチップのように軽量で付加価値の高いものに集約されていくと見ている」

 ―日本のドローン市場は中国製の低価格の機体に席巻されつつある。国産メーカーの巻き返しの可能性は。
 「率直に言って厳しい。電気自動車(EV)もそうだが、深圳付近だけでドローンを作るメーカーが300社もある。価格競争力ではかなわない。農薬散布や設備点検など、用途を絞った開発で差別化が必要となるだろう」
           
日刊工業新聞2018年5月25日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
米中も含め、飛行ルールが世界的に整備されればドローン普及は一気に進む。日本として気になるのは、その時の国際標準に日本仕様がどこまで反映されるかだろう。国内しか飛ばせないようでは、市場の発展も制限される。規制緩和と同時に、国には世界ルールを見据えた準備が求められる。 (日刊工業新聞社・嶋田歩)

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