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ペット獣医師のコミュニティーサービス、次なる進化

Zpeer、飼い主向けにも
ペット獣医師のコミュニティーサービス、次なる進化

創業者・副社長の藤本裕氏と愛猫あずきちゃん

 「これまで医師を対象としたインターネットサイトは複数あるが、獣医師向けのサイトはほとんどなかった」―。動物医療に関わる情報サービスを提供するZpeer(ズピア)の創業者で副社長の藤本裕は、こう振り返る。

 同社が運営する「ベットピア」は、主にペットに携わる獣医師などを対象にしたコミュニティーサイトだ。足元ではペットを診療する獣医師の約6割(約8000人)が会員になっている。

 藤本は東京大学大学院を修了し、コーネル大学で経営学修士(MBA)を取得。経営コンサルや大手製薬会社を歩み、ヒトと動物用それぞれの医薬品に携わる機会があった。

 動物向け医薬品はヒトの医薬品と比べた場合、マーケットが小さく、担当者も少なくなりがちだ。獣医師へ十分な説明ができないことが増えるため、「獣医師にとっても、情報を得る機会が限られてしまう」と考えたことが、情報サイトを立ち上げるきっかけとなった。

 最近では、ペットの飼い主向けサービス「ベッツアイ」の提供も始めた。ペットに関連する商品について、獣医師の目で評価する「獣医師評価サービス」と、飼い主が普段疑問に感じていることを獣医師がアンケート形式で回答し、公開する「100オピニオン」の二つのコンテンツを展開する。

 いずれのコンテンツとも、「ベットピア」を利用する獣医師が回答する。同社によると、提供開始にあたって、既に日本の動物病院の1割にあたる約1000病院の獣医師が協力するという。

 獣医師による製品評価は、ペットフード、医療用具、飼育器具、サプリメントなどを獣医師が実際に試用するなどして公平に評価し、結果をサイトに公開する。製品には、獣医師の何%が推奨しているかを記載した製品評価のロゴを作成し、それをサイト上に掲載する。

 一方、「100オピニオン」は、ペットの飼い主が抱く疑問点について100人の獣医師の意見を聞き、それを公開する。

 現在、ズピアの社長を務める野川真義は大手製薬会社の出身で、動物用医薬品に関する経験が豊富。「私の前職でのクライアントだった」と藤本は話す。共に製薬会社での経験を生かし、動物医療に関する情報サービスという新たな市場を築くつもりだ。
(敬称略、文=浅海宏規)
日刊工業新聞2018年5月21日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
ペットを家族の一員としてとらえる飼い主が増え、関連市場は堅調に推移している。獣医師による製品の評価は、飼い主にとっても安心・安全な製品選びの目安になることが期待される。 (日刊工業新聞第二産業部・浅海宏規)

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