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為替逆風、自動車7社で7000億円の利益が吹っ飛ぶ?

“即効薬”なし、さらなる原価低減へ
為替逆風、自動車7社で7000億円の利益が吹っ飛ぶ?

輸出比率が高いスバルは円高の影響を受けやすい(群馬製作所)

 大手企業・製造業が設定した2019年3月期の想定為替レートは、先行きへの警戒感が相次ぎ示された。足元の円ドル相場より円高である1ドル=105円を設定する企業が目立つ。行方を読みにくい北朝鮮情勢や米中貿易摩擦、新興国通貨安などの懸念材料を背景に、企業業績の鈍化を予測する企業が少なくない。

 乗用車7社の18年3月期連結決算は円安効果で収益を伸ばしたが、19年3月期連結は一転して為替が逆風になる見通し。ドルをはじめ各種通貨に対する円高が7社合計で7054億円の営業減益要因になる見込みだ。

 マツダは19年3月期の想定レートについて「実勢レートを考慮」(藤本哲也常務執行役員)して107円に設定。トヨタ自動車、日産自動車、ホンダなど残り6社はすべて105円。三菱自動車の池谷光司副社長は「ドルに関しては昨今の情勢も踏まえ、円高局面があり得るだろうと堅めにみた」と説明する。

 ドル以外の通貨も円高傾向にある。19年3月期連結の営業利益はトヨタの場合、円高が2300億円の悪化要因となり前期比4・2%減の2兆3000億円、SUBARU(スバル)も円高が584億円の押し下げ要因となり、営業利益は同20・9%減の3000億円を見込む。吉永泰之スバル社長は「為替の影響を大きく受けるのは事実。注視していく」と警戒する。

 為替リスクに“即効薬”はない。トヨタの小林耕士副社長は「3000億―4000億円規模で稼ぎを増やさないと為替変動についていけない。原価低減を徹底する」と話す。
日刊工業新聞2018年5月17日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
 日本が強い電子部品各社も為替感応度が高く、軒並み警戒感を強めている。想定レートを1ドル=100円とした日本電産の永守重信会長兼社長は「19年3月期は円高になる可能性が高く、実勢レートは1ドル=100円台あるいは同100円を切るかもしれない」と保守的な見方を示す。すでに社内では円高リスクを勘案した指標を設けており、「業績が悪かった場合に口が裂けても円高のせいにしない」(永守会長兼社長)と続ける。  村田製作所やTDK、京セラ、ミネベアミツミなども想定為替レートを、前期の同約111円から今期は同105円に変更。ミネベアミツミは17年11月に、事業環境が好調のため19年3月期業績が上振れる可能性を示唆していたが「(円高へ)為替環境が大きく変わった」(貝沼由久会長兼社長)と説明。スマートフォンやゲーム市場の鈍化も重なり、19年3月期業績は保守的な数値に見直しを迫られた。  一方でアルプス電気は今期の想定為替レートを同107円に設定。前期比で4円の為替の開きがあり、営業利益ベースで約50億―60億円の影響を想定する。だが、気賀洋一郎アルプス電気取締役は「この分は堅調な車載事業などで補っていく」と為替影響を既存事業で吸収する考えだ。

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