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サウジアラビアで省エネ教育

「脱・石油依存型経済」目指す国に日本のノウハウ伝授
サウジアラビアで省エネ教育

現地の家電修理専門学校では9月から節電講座が開講する

 中東協力センター(東京都千代田区)や日本工学院などが運営に協力する中東の専門学校「サウジアラビア電子機器・家電製品研修所(SEHAI、セハイ)」が、9月以降、省エネルギーをテーマにした教育を行う。産油国のサウジアラビアは安く石油が手に入るため省エネ意識に乏しく、国内の石油需要は年率4―5%のペースで増加している。将来、輸出に振り向ける石油を確保できない懸念があり、教育を通じて高まる石油需要を抑える効果を期待する。

 セハイは日本の官民が協力してエアコンなどの家電製品の修理を教える専門学校。これまでは基礎的な家電修理の仕方を教えてきたが、今後はこれに加えて省エネ講座も設ける。
 
例えば、電圧・電流を制御する省エネのカギとなるインバーターの知識を伝授する。日本はほぼ100%エアコンにインバーターが搭載されているが、「サウジではまだ珍しい」(中東協力センターの中埜恭司セハイプロジェクトリーダー)。省エネ機能を搭載すればどれだけ消費電力を減らせるかなどを教える。こまめに電気を消すといった日頃の習慣の大切さも伝える。

 サウジアラビアは日量1000万バレルの産油量のうち、国内需要は300万バレル前後。急速な内需拡大により、2030年代には石油の輸出ができなくなるとの声がある。

 一方、日本にとってサウジは最大の石油輸入先で、全体の3割をサウジが占める。石油の長期安定調達を実現するには、サウジの内需拡大は無視できない問題で、教育を通じて課題解決を図る。
日刊工業新聞2015年07月10日3面
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
「脱・石油依存型経済」を目指すサウジアラビアと日本政府の間では人材育成に関する協力事業が進められている。例えば中小企業基盤整備機構は、日本で行っている工場管理者向け研修を同国向けにアレンジした講座を展開している。産業構造の多角化には技術革新の源泉となる人材育成が急務なだけに、日本のノウハウが求められる場面が広がりそうだ。

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