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航空機の生産にも「ロボット」活躍―部品の上を自走し穴をあける

富士重工、中大型機「787」向け中央翼の工場に導入
航空機の生産にも「ロボット」活躍―部品の上を自走し穴をあける

富士重の開発する穴あけロボ。部品に乗って自走する

 航空機機体メーカー各社が生産工程の自動化やロボット導入を加速する。富士重工業は7月中にも自社開発の穴あけロボットを中大型機「787」向け中央翼の工場に導入。三菱重工業川崎重工業も次世代大型機「777X」向けに自動化設備、ロボットを入れる。各社は主要取引先の米ボーイングから機体の増産とコスト低減の両方を求められており、今後は航空機の生産改革が加速しそうだ。

 富士重が開発するロボットは「自走式穿(せん)孔機」と呼ばれるもので、センサーとドリルを駆使し、対象物の上を動きながら穴をあける。本体重量は約20キログラムと人よりも軽く、ロボットが自走するための補助レールなどが要らない。

 同社は中央翼上部の「シートトラック」と呼ぶ座席用レールの穴あけに同ロボットを導入する計画。従来は作業者が手動で穴をあけていたが、ロボットの導入で、負担軽減と工数低減につなげる。

 一方、2017年から製造が始まるボーイングの次期大型旅客機「777X」でも、各社は生産の自動化を進める。三菱重工は17年までに777X向け胴体の生産ラインを江波工場(広島市中区)に新設。シール材の塗布やフレーム取り付けなどの工程にロボットを多用する考えだ。複数のロボットを協調して制御し、治具の最小化を図る。

 川重と富士重はそれぞれ愛知県内の既存工場隣接地に777X向け新工場を建設する。川重は小物部品の取り付けや検査工程にロボットを導入するほか、富士重はリベッターやドリル、搬送装置などを自動化する。

 日本企業は777Xで現行の「777」と同様、機体の21%を担当する。関係者によると各社は777Xの受注にあたり現状比15―20%程度のコストダウンに同意したとされ、今後は増産投資と並行して生産効率の向上が課題となる。
日刊工業新聞 2015年07月08日 総合1面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
航空機の世界も、ロボットが活躍する時代になりました。とはいえ、まだまだ主体は「人」だということも、取材を通して強く感じます。 たとえば、現場では作業者が上半身しか入らないようなスペースに体をねじり込み、右手に工具、左手に鏡をもって作業していることもあります。こんな複雑な工程(かつ生産数も自動車と比べ圧倒的に少ない工程)にロボットを入れるメリットは少ないでしょう。 生産の機械化は日本のお家芸とも言えますが、航空機の世界はまだまだ熟練の方々に多くを頼る、泥臭い世界です。

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