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ソニーやJVCケンウッド、ブランド力の低下に危機感

音楽ライブ施設の情報発信で若年層取り込む
ソニーやJVCケンウッド、ブランド力の低下に危機感

JVCケンウッドがグループで主催するロックフェスティバルで自社ブランドをアピール

 ソニーやJVCケンウッドが、10―20代の若者向けにブランディングを強化している。ソニーは東京・渋谷の商業施設や米ニューヨークのライブ施設運営などで幅広い事業をアピール。JVCケンウッドはグループのレコード会社が主催するロックフェスティバルを活用し、会社や事業内容を周知する。AV機器を中心に、会社の知名度を高めてきた両社。背景には、事業の多様化と過去の構造改革に伴う、ブランド力低下に対する危機感がにじむ。

渋谷で情報発信


 かつては「ウオークマン」のような代表的な製品で、会社全体の認知度を高められていたソニー。今やエレクトロニクスに限らずゲームや映画、音楽、金融など幅広い事業ポートフォリオを抱えるようになった。そのため特に若い世代では「プレイステーション」という製品は知っていても、どんな会社が手がけているかを知らないケースも増えている。ソニーブランド戦略部の森繁樹統括部長は「代表的な製品や事業と、ソニーという会社を結び付けられるかは課題だ」と危機感をあらわにする。

 そこで取り組むのが、若者が集まる施設の活用だ。2015年から渋谷の商業施設「渋谷モディ」で、壁面の大型ビジョンのネーミングライツを取得し情報発信に活用しているほか、17年には同施設の1階に製品やコンテンツ、技術などを展示・体験できる情報発信拠点を設けた。

最先端技術導入


 さらに米ブルーノートとスポンサー契約を結び、3月、米ニューヨークにライブ施設「ソニーホール」を開業。グループのレコード会社が抱える幅広いアーティストのライブのほか、音響や映像など最先端の技術を導入する実験の場としても利用する。森統括部長は「昔のソニーはライバル。その存在を超えるべく、ソニー=エレクトロニクスの認識は変えないと」と、力を込める。

 10―20代の若者が集まる音楽フェスティバルを活用するのは、JVCケンウッドだ。子会社のビクターエンタテインメントは、14年から「ビクターロック祭り」を主催する。3月に開いた同フェスでは、主要ブランド「JVC」「ケンウッド」「ビクター」ごとに、製品だけでなくブランドコンセプトも紹介する展示ブースを設けた。山本耕志ブランド戦略広告宣伝部長は「JVCケンウッドという会社を知ってもらうと同時に、各ブランドが何をしているか若者に周知する」と狙いを説明する。

特色打ち出す


 同社はヘッドホンやオーディオなど、一般消費者向け商品で知名度を高めてきた。しかしスマートフォンの普及などにより、同市場は縮小。今ではカーエレクトロニクス事業が収益の柱だ。09年以降の構造改革もあり、ブランド力の低下が課題の一つとなっていた。

 同フェスではこれまでも展示ブースは設けていたが、商品自体のプロモーションという側面が強かった。今回は強みとする「音」に対する取り組みにフォーカス。音響技術や高級カーオーディオ、レコーディング機材など、ブランドごとの特色も打ち出した。体験コーナーも設け「身近な存在であることをアピールする」(山本部長)。

 企業の永続的活動には、次世代まで認知度を維持・向上することが欠かせない。加えてJVCケンウッドの山本部長は「若い顧客はブランドを選ぶ時にイメージを求める」と指摘する。ソニーの森統括部長も「ブランドに対する興味が高ければストーリーを生み出せ、高い付加価値で商品やサービスを提供できる」とする。
(文・政年佐貴恵)
日刊工業新聞2018年4月26日
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
顧客が多様化し、情報の伝搬速度も格段に向上した現在、ブランドイメージは企業活動に直結する。ブランディング戦略は、より重要なテーマとなりそうだ。

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