超高圧水で「アスベスト」除去、現場で脚光浴びる理由
スギノマシン、専用ツール売り上げ5倍に
スギノマシン(富山県魚津市、杉野太加良社長、0765・24・5111)の超高圧水ポンプが建物の改修や解体時に外壁からアスベスト(石綿)を除去する現場で脚光を浴びている。超高圧水ポンプで放出するウオータージェットで石綿を含んだ外壁をはく離する工法は、研磨機などで削り取るのに比べ飛散を抑えられ、安全性や効率性も高い。
「外壁の仕上げ塗り材の除去の需要が出てから、専用のツールの売り上げは5倍になる」―。
スギノマシンで超高圧水ポンプの販売を担う営業担当者はこう語る。石綿を含んだ外壁の仕上げ塗り材にウオータージェットで取り除く事例がここ2―3年で急増し、超高圧ポンプ向けの石綿除去専用のツール「アクア・セルロータ」の販売も大幅に伸びた。それまで年間十数台ほどの販売台数が近年は5倍程度を売り上げる。
ウオータージェットの工法はホースの先端に専用のツールを取り付けて行う。円筒形の周囲にブラシをつけたアクア・セルロータだと、内部に水を噴射しつつ、はく離した外壁、跳ね返った水を吸引する機構を併せ持つ。これを外壁に密着させて動かせば、ブラシの外に粉じんも水も漏らさず回収できる。
厚生労働省が発行する工事中の飛散防止の方策をまとめたマニュアルでは、現場の出入りを密閉する隔離措置と同等の措置のひとつにウオータージェットの工法を挙げる。作業速度も「圧倒的に速い」(営業担当者)。1平方メートル当たりの処理時間は研磨機が30分程度はかかるのに対し、ウオータージェットは5分ほどで済む。
以前からウオータージェットの工法は「煙突に使う断熱材の石綿除去では標準化していた」(同)。それが外壁にも利用が浸透してきたのだが、背景には石綿除去の範囲が広がっていることがある。
現在、重量に対して0・1%以上の石綿が含む建材は解体や改修工事の際に回収対策を法律で義務付けている。建材の種類でレベル分けし、それに応じて必要な届け出や作業を規定している。ただ、石綿含有の仕上げ塗り材を吹き付けた外壁は「石綿建材のくくりに入っておらず、統一した基準がないまま除去工事が行われていた」(同)。
それが最近になって、規定があいまいな仕上げ塗り材も安全な回収が必要との問題意識が高まってきたことや、厚労省のマニュアルへの記載などもあって、ウオータージェットが注目を集めてきたというわけだ。
ただ、ウオータージェットも万能なわけではない。壁の角の部分や凹みがある部分は止水しきれない。ゆえに除去現場では状況に応じて他工法と使い分けているのが現状だ。
「ウオータージェットで除去できる範囲を増やしていけば、現場のリスクを下げられる」と営業担当者は話す。今後、さらなるツールの開発を進めて、対応可能な箇所を広げる考えだ。
(日刊工業新聞社富山支局長・江刈内雅史)
売り上げ5倍
「外壁の仕上げ塗り材の除去の需要が出てから、専用のツールの売り上げは5倍になる」―。
スギノマシンで超高圧水ポンプの販売を担う営業担当者はこう語る。石綿を含んだ外壁の仕上げ塗り材にウオータージェットで取り除く事例がここ2―3年で急増し、超高圧ポンプ向けの石綿除去専用のツール「アクア・セルロータ」の販売も大幅に伸びた。それまで年間十数台ほどの販売台数が近年は5倍程度を売り上げる。
ウオータージェットの工法はホースの先端に専用のツールを取り付けて行う。円筒形の周囲にブラシをつけたアクア・セルロータだと、内部に水を噴射しつつ、はく離した外壁、跳ね返った水を吸引する機構を併せ持つ。これを外壁に密着させて動かせば、ブラシの外に粉じんも水も漏らさず回収できる。
抜群の作業速度
厚生労働省が発行する工事中の飛散防止の方策をまとめたマニュアルでは、現場の出入りを密閉する隔離措置と同等の措置のひとつにウオータージェットの工法を挙げる。作業速度も「圧倒的に速い」(営業担当者)。1平方メートル当たりの処理時間は研磨機が30分程度はかかるのに対し、ウオータージェットは5分ほどで済む。
以前からウオータージェットの工法は「煙突に使う断熱材の石綿除去では標準化していた」(同)。それが外壁にも利用が浸透してきたのだが、背景には石綿除去の範囲が広がっていることがある。
現在、重量に対して0・1%以上の石綿が含む建材は解体や改修工事の際に回収対策を法律で義務付けている。建材の種類でレベル分けし、それに応じて必要な届け出や作業を規定している。ただ、石綿含有の仕上げ塗り材を吹き付けた外壁は「石綿建材のくくりに入っておらず、統一した基準がないまま除去工事が行われていた」(同)。
他工法と併用も
それが最近になって、規定があいまいな仕上げ塗り材も安全な回収が必要との問題意識が高まってきたことや、厚労省のマニュアルへの記載などもあって、ウオータージェットが注目を集めてきたというわけだ。
ただ、ウオータージェットも万能なわけではない。壁の角の部分や凹みがある部分は止水しきれない。ゆえに除去現場では状況に応じて他工法と使い分けているのが現状だ。
「ウオータージェットで除去できる範囲を増やしていけば、現場のリスクを下げられる」と営業担当者は話す。今後、さらなるツールの開発を進めて、対応可能な箇所を広げる考えだ。
(日刊工業新聞社富山支局長・江刈内雅史)
日刊工業新聞2018年4月23日