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逆風ホンダ、新社長が就任後初の会見で語った「数より“らしい商品”を」

「『チームホンダ』でチャレンジングな商品を提供する」(八郷氏) タカタの経営支援考えず
逆風ホンダ、新社長が就任後初の会見で語った「数より“らしい商品”を」

八郷新社長

 ホンダは6日、八郷隆弘社長が就任会見を開き、4輪車事業で進めてきた世界6極体制(日本、北米、欧州、アジア・大洋州、中国、南米)について一段と強化する方針を示した。また、八郷社長は系列サプライヤーと対等に付き合う考えを示し、「(リコール問題の最中にある)タカタに対して経営的な援助は考えてない」との認識も示した。

 八郷社長は会見で「(世界6極体制を)さらに進化させ、世界で最適な生産配分に取り組む。『チームホンダ』でチャレンジングな商品を提供する」と述べた。

 ホンダは伊東孝紳前社長から、世界を6地域に分けて地域ごとに開発・調達・生産を一体化して、自立運営する体制作りを推進してきた。八郷社長は「中国など現地で開発できるようになった」と、その成果を述べる一方で、「世界で能力が過剰になり収益に影響を及ぼした」との課題も示した。

 世界6極体制の次の段階として、地域ごとの自立に固執して硬直しがちだった世界の生産体制を柔軟にする考え。減産が深刻化する日本から欧州向け小型車を輸出するなど地域ごとの生産能力を補完する体制作りに着手しているが、これを推し進める方針。15年6月末時点で世界で約530万台の年産能力を持ち、14年度の世界販売は436万台だった。

 またタカタ製エアバッグの欠陥問題について「顧客の安全を最優先し原因究明と回収率を上げることに尽力する」と述べた上で「タカタに対して経営的な援助は考えてない」との認識を示した。
 伊東前社長が進めた調達改革で、系列サプライヤーとの距離が離れているのではとの指摘に対して「距離を置いたつもりはなく今後も対等に付き合う」と述べた。

16年度の世界販売600万台は「数字的に難しい」-規模拡大路線を転換


 八郷社長が強調したのは「チームホンダ」だ。競合他社が前期業績で過去最高益をたたき出す中、「タカタ」と小型車「フィット」の品質問題により、営業利益が2割減。逆風での登板となる中、従来の規模拡大路線よりも、チームワークで堅実な成長を優先する姿勢を打ち出した。

 会見では自身がチームを牽引した経験を紹介した上で、「ホンダは個が重なり合ってチームになった時に力を発揮する」と説明。まず手をつけることとして「現場(と経営)とのコミュニケーションを強化して、現場を担うチームが輝いて活動できる場を設ける」とも話し、チームワークを重ねて強調した。

 伊東前社長が掲げた16年度までに4輪車の世界販売600万台とする目標は「数字的に難しい。数よりもホンダらしい商品を提供することが最優先だ」と述べ、経営目標は明示しなかった。「ホンダらしさを打ち出すためにはチームに時間も必要」と、伊東前体制の規模急拡大路線の反省ともとれる言葉も口にした。規模より「らしさ」、らしさはチームで―。八郷社長の思いが現場に行き届き難局を乗り切れるか注目される。
 (文=池田勝敏)
日刊工業新聞2015年07月07日 3面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ホンダの「規模」が「質」かという議論はこの20ー30年ほど常に存在する。90年代に自動車業界で「400万台」という言葉が存在したが、最近は800万台(グループや連合を含め)が勝ち残りのボーダーラインというトップもいる。数字はさして意味はないと思うが、ホンダは今、自動車メーカーとしての「個性」を決める大きなターニングポイントにあると思う。八郷社長はその方向性は示したのではないか。

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