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古着の着物をリメークして洋服に。越中八尾に見る“リアルなジャパン”

“町おこし”の新たな手だてに
古着の着物をリメークして洋服に。越中八尾に見る“リアルなジャパン”

原井紗友里社長

 古民家を改装した宿泊施設「越中八尾ベースOYATSU」を運営するオズリンクス(OZ Links、富山市八尾町、原井紗友里社長)は、4月にもアパレル分野に本格参入する。古着の着物をリメークして洋服にし、独自ブランド「tadas(タダス)」の製品として販売する。同社がある“越中八尾”地域の高齢者や主婦らのうち、裁縫を学んだことがある人たちを雇う。初年度は最大400アイテムをつくる計画。“町おこし”と業容拡大を同時にかなえていく構えだ。

 越中八尾は富山県の代表的な祭り「おわら風の盆」で全国に知られ、かつて絹織物を通じたヒト・モノの交流が盛んだった地域だ。ただ現在、高齢化の波が押し寄せている。

 こうした中、原井社長は「地元のおばあちゃんであったり、幼い子どもを抱えたお母さんだったり、こういった人たちと一緒に洋服をつくることで地域を元気にさせたい」とし、オズリンクスのアパレル参入を町おこしの新たな力にする考え。

 日本に訪れた外国人をはじめ、グローバルに活躍するビジネスウーマンを主なターゲットにする。同社が運営する宿泊施設の近くにギャラリー兼アトリエショップを立ち上げ、製品を展示・販売する。一部の製品に限り、インターネットでも購入できるようにする。

 東京都のセレクトショップで委託販売したり、富山県の企業向けにオーダーメードで販売したりするビジネスモデルも視野に入れる。将来、富山空港や富山駅、大手企業の受付などでの採用を目指す。価格はトップスとスカートのセットで1万8200円から、ネクタイ4200円からなど。

地元と”よそ者“の力を結集


 雇用については、原井社長によると「作り手さんの働きやすい労働時間に配慮しつつ、年間の生産計画を達成する仕組みにする」。

 さらに作り方を統一することで、標準化された製品を提供できるようにする。マネージャーら管理スタッフは出身が越中八尾地域以外の人たちを生かす。

 管理スタッフは大手古着小売店でシステム・生産管理部門を担当した経験があるなど、いずれも専門のノウハウを持つ人材を採用。「生まれが越中八尾以外の“よそ者”が持つデザインやマーケティングなどの力、それに地域の人たちのモノづくりの力を合わせることで新たな交流を生み出す」(原井社長)。

 原材料は提携した古着屋から格安で購入するほか、個人の使わなくなった着物を譲り受けるなどして調達する。すでに約400着のストックがある。結婚時に着物を仕立ててきた世代を中心に、使っていない着物を持て余している女性が少なくないという。

 オズリンクスは16年1月に創業。観光宿泊施設の運営と企業の海外販路の開拓を支援するコンサルタントが事業の両軸だ。宿泊施設が提供しているサービスとして、外国人観光客向けの簡単な着物の着付け体験が売りの一つで、ストックしている着物の幾つかをリメークして販売したところ好評だったことが、同社のアパレル分野参入のヒントになった。
着物文化を気軽に楽しみたい人たち向けに古着の着物をリメーク(オズリンクス提供)

(文=碩靖俊)
日刊工業新聞電子版2018年4月1日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
日本に何度も訪れたことがあるベテラン観光客たちの中で「リアルなジャパン」を見たいという思いが広がっています。リアルなジャパンとは「日本の当たり前の日常」のこと。原井社長によると、あぜ道を歩くとか、楽しそうに登下校する地元の子どもたちを眺めるとか、そうした日常の風景を目の当たりすると、とても喜ぶようです。ベテラン観光客の気持ち、分かる気がします。 (日刊工業新聞経済部・碩靖俊)

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