EV重視の日産、なぜ可変圧縮比エンジンの進化を目指すのか
平井常務執行役員に聞く「内燃機関の寿命が10年は伸びた」
界的な環境規制を背景に、自動車メーカーの電動化の動きが加速している。ただ充電インフラの整備や低コスト化といった課題も抱えており、車のCO2削減には既存エンジンの効率化がまだまだ不可欠な要素であることは変わらない。世界で初めて可変圧縮比(VCR)エンジンの実用化に成功した日産自動車の平井俊弘常務執行役員に聞いた。
―VCRエンジンの仕組みは。
「ピストンを支えるコンロッドに代わり、3本のリンクとアクチュエーターを使ってピストンの位置を上下に動かす独自機構を採用している。これにより従来は固定されていた圧縮比を走行状況に応じて8―14の間で自在に変えられる。動力性能を出したければ圧縮比を8にし、街中でゆっくり走りたいときは14にして高い燃費性能を発揮できる」
―開発で苦労した点は。
「まずは圧縮比を変えるためのリンク機構の開発だ。高い燃焼力に耐えながらもコンロッドを押し上げるためのアクチュエーターをサプライヤーと協力して開発できた。また、部品がこすれたりぶつかり合ったりすることで生じてしまう音の解消にも苦労した。寸法や隙間のばらつきをなくすため、従来エンジンよりも10分の1―100分の1詰めた状態での管理精度が必要だった」
―高級車ブランド「インフィニティ」での採用を決めました。
「今春発売するスポーツ多目的車(SUV)『QX50』向けに排出量2・0リットル、出力200キロワットのターボエンジンとして採用する。これは米国で多く出ている排気量3・5リットルの6気筒ガソリンエンジンの置き換えになる。このクラスで環境性能トップのエンジンを投入できたことは、我々の今後の競争力を保つ意味で非常に重要な意味を持つ」
―車の電動化が進む中、エンジンの進化の方向性をどう捉えていますか。
「当社はEVと、発電用エンジンとモーターによる駆動方式『eパワー』の二つを柱とする電動化を進める一方で、エンジンの最大熱効率向上にも引き続き取り組む。現在はVCRが約40%だが、2025年をめどに50%まで高める」
―そのための具体策は。
「『eパワー』での応用を想定した開発を進める。発電専用に設計することで最も効率が良い運転条件で使えるため、高い熱効率を実現できる。また、運転条件を絞ることで、廃熱回収や断熱といった“引き出し”にしまっている技術を使ってさらに効率を上げられる」
―熱効率50%に向けて技術伝承で力を入れたい分野は。
「エンジン開発には、燃焼やトライボロジーなどのサイエンスの要素まで本質をつかむ必要がある。この部分を重視し、研究を継続していく。それが内燃機関の効率向上の源泉になる」
(聞き手=土井俊)
―VCRエンジンの仕組みは。
「ピストンを支えるコンロッドに代わり、3本のリンクとアクチュエーターを使ってピストンの位置を上下に動かす独自機構を採用している。これにより従来は固定されていた圧縮比を走行状況に応じて8―14の間で自在に変えられる。動力性能を出したければ圧縮比を8にし、街中でゆっくり走りたいときは14にして高い燃費性能を発揮できる」
―開発で苦労した点は。
「まずは圧縮比を変えるためのリンク機構の開発だ。高い燃焼力に耐えながらもコンロッドを押し上げるためのアクチュエーターをサプライヤーと協力して開発できた。また、部品がこすれたりぶつかり合ったりすることで生じてしまう音の解消にも苦労した。寸法や隙間のばらつきをなくすため、従来エンジンよりも10分の1―100分の1詰めた状態での管理精度が必要だった」
―高級車ブランド「インフィニティ」での採用を決めました。
「今春発売するスポーツ多目的車(SUV)『QX50』向けに排出量2・0リットル、出力200キロワットのターボエンジンとして採用する。これは米国で多く出ている排気量3・5リットルの6気筒ガソリンエンジンの置き換えになる。このクラスで環境性能トップのエンジンを投入できたことは、我々の今後の競争力を保つ意味で非常に重要な意味を持つ」
―車の電動化が進む中、エンジンの進化の方向性をどう捉えていますか。
「当社はEVと、発電用エンジンとモーターによる駆動方式『eパワー』の二つを柱とする電動化を進める一方で、エンジンの最大熱効率向上にも引き続き取り組む。現在はVCRが約40%だが、2025年をめどに50%まで高める」
―そのための具体策は。
「『eパワー』での応用を想定した開発を進める。発電専用に設計することで最も効率が良い運転条件で使えるため、高い熱効率を実現できる。また、運転条件を絞ることで、廃熱回収や断熱といった“引き出し”にしまっている技術を使ってさらに効率を上げられる」
―熱効率50%に向けて技術伝承で力を入れたい分野は。
「エンジン開発には、燃焼やトライボロジーなどのサイエンスの要素まで本質をつかむ必要がある。この部分を重視し、研究を継続していく。それが内燃機関の効率向上の源泉になる」
(聞き手=土井俊)
日刊工業新聞2018年3月30日