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10年ぶり上昇も、15%の住宅地は価値がなくなる

長嶋修氏に聞く「市場は『三極化』している」
10年ぶり上昇も、15%の住宅地は価値がなくなる

長嶋修氏

 国土交通省が27日発表した公示地価(1月1日時点)は全国全用途の変動率が0・7%と3年連続でプラスとなった。住宅地は全国平均で10年ぶりにプラスへと転じたが、エリアによる格差が目立つようになってきた。国土交通省の有識者会議委員などを歴任し、住宅政策や空き家問題に詳しい不動産コンサルタントの長嶋修氏に住宅市場の現状を聞いた。

 ―住宅地は10年ぶりの上昇です。
 「下げ止まり感は出てきたが、将来的に世帯数は減少する。下落基調は変わらない。住宅市場は『三極化』している。上位15%だけが価格維持・上昇が可能で、70%は緩やかな下落基調をたどる。残り15%は価値がなくなる。東京23区内でも最寄り駅からの距離による価格差が、数年前に比べ2倍程度に拡大している」

 ―東京都心部などのマンション価格が高騰しています。急落するリスクは。
 「供給は体力のある大手デベロッパーが中心。市況が急変しても『リーマン・ショック』後のような投げ売りは起こらないだろう。年間賃料収入を物件価格で割った運用利回りも、香港やシンガポールに比べて高い」

 ―首都圏の一部住宅地では地方圏以上に下落が顕著です。
 「60年代から80年代に開発が進んだ三大都市圏のベッドタウンで大きく価格が下落した地点が見られる。開発当初に引っ越してきた人口のボリュームゾーンが一度に高齢化していることが背景にある。今後若い世代が入ってこなければ急激に人口減少が進み、街の価値も減少する」

 ―地方自治体ではコンパクトな街づくりで都市機能を維持する「立地適正化計画」の立案が進んでいます。
 「高齢化したベッドタウンを抱える自治体は危機感を持っている。自治体間の競争も激化していく。働き盛りの世代が流入すれば地価が維持され、税収も上がり、行政サービスも向上し、さらに人が流入する正のスパイラルが期待できる。競争に敗れた自治体では逆のことが起こる」

 ―世帯数減少に備え、どのような施策が必要ですか。
 「都市を賢く縮小する『スマートシュリンク』が重要。新築住宅供給もコントロール可能にするべきだ。新築住宅は経済波及効果が高いとされ、景気対策として後押しされてきた面もあるが、現在は新築住宅が1戸増えれば空き家も1戸できる状況。マイナス面も考慮して経済波及効果をとらえ直す必要がある」
日刊工業新聞2018年3月28日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
 全国の住宅地と商業地で上昇率1位となったのは北海道倶知安(くっちゃん)町の地点で、上昇率はいずれも30%を超えた。倶知安町が中心のニセコのリゾート地周辺は訪日外国人客の増加に伴い店舗・ホテル需要が拡大。創出された雇用に対して住宅は慢性的に不足している。30年度末には北海道新幹線の新函館北斗―札幌間が開通し、倶知安町にも新駅が開業する予定で、交通利便性も向上する見通しだ。  外国人投資家の資金も流入し、地価上昇に拍車をかけているが、不動産コンサルタントの長嶋修氏は「倶知安町の地価の上昇はバブルと言っていいほど急激だが、基本的に需給に基づいている。価格が急落することはないだろう」と分析する。  日本の不動産市場に対する外国人投資家の投資意欲は高い。米不動産サービス大手の日本法人ジョーンズラングラサール(JLL、東京都千代田区)によると、17年の海外投資家による国内不動産への投資(インバウンド投資)は前年比約2倍の1兆580億円となった。  三菱UFJ信託銀行の花井健司不動産コンサルティング部コンサルティング室課長は「従来はJ―REIT(上場不動産投資信託)が物件を積極的に買い進める動きが目立ったが、今は外資系ファンドの存在感が増している」と指摘する。同行の調査によると、物件を長期保有するコア投資家の積極的な投資姿勢は継続しており「特にアジア・太平洋地域の投資家は投資意欲が強い」(花井氏)という。 (日刊工業新聞第二産業部・斎藤正人)

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