手を組む沖縄の地域商社、タイ市場開拓へ「あと1年遅れると勝てない」
沖縄物産企業連合(那覇市)は、BRIDGES(同)、アンドワン(同)の沖縄の地域商社3社で連携しタイ市場へ特産品を輸出する。各社が得意とする取扱品を食品メーカーや飲食店に売り込む。約1年間の市場調査後に拠点となる現地法人を共同で設立する見通し。まず商社3社で年間輸出額2000万円を目指す。
沖縄物産企業連合がゴーヤー粉末や塩など、アンドワンは黒糖とマグロ、BRIDGESは和牛と飲食店出店ノウハウを提供する。フォワーダー(利用運送事業者)の沖縄日通エアカーゴサービス(OAS航空、那覇市)も参画し物流の最適化を図る。OAS航空は業務提携する日本通運のネットワークを生かす。タイで日本産食品のニーズが高まる中、「あと1年遅れると勝てない。今がベストタイミング」(沖縄物産企業連合の羽地朝昭社長)と見ている。
沖縄では内閣府沖縄総合事務局の協力で、今回の3社を含む地域商社7社が2017年3月に連携協定を結び、沖縄発の輸出拡大に動いている。
沖縄の地域商社が、新しい試みに乗り出している。沖縄県内の地域商社7社が連携した取り組み「FTP」のことだ。正式名称を「食品輸出等に関する戦略的連携協定」という。2017年3月に新垣通商、アンドワン、沖縄県物産公社、沖縄物産企業連合、萌(きざ)す、JCC、BRIDGESでスタートした。地場の老舗から大手、ベンチャーまで、外から見れば競合している県内商社が一通り顔をそろえる。その狙いは、各社の強みを寄せ合い、日本の食品を沖縄から発信することだ。県内にとどまっていては市場は大きくない。しかしアジアに目を向ければ、そこには巨大な市場が広がっている。
各社とも沖縄に本社を置き、加工食品や生鮮、飲料、食品原料、雑貨など沖縄の産品を中心に各分野で固有の商流を持つ。また国内に小売り店網を持っていたり、飲食店を運営していたり、飲食店の海外展開にたけていたりと、それぞれ異なる強みも併せ持つ。新垣通商(那覇市)の新垣旬子社長は「小さな輪が大きな輪になる。各社積み重ねてきたものが違う。それぞれ『種』を持っている」と連携の意義を説く。
FTPは2016年11月に同じ7社で発足した研究会をベースにしている。研究会発足以前は、それぞれが一部の経営者と顔見知りだった程度。そのためお互いにビジネスの話に踏み込むこともなかった、「今は(スマホアプリ)LINEでアイデアを話し合う」(新垣社長)まで協力関係が深まっている。
連携を支援した内閣府沖縄総合事務局経済産業部は、「連携は各社の希望があってこそ。1社でできなかったことが対応可能になる」(商務通商課)と期待する。FTPでは仕入れ先や販売先の情報交換を手始めに、連携相手の取引口座を使った販売に取り組む。
「成功パターンを知ることができた」と効果を語るのは、アンドワン(那覇市)の久手堅(くでけん)憲雄代表社員。同社は2015年に創業したばかりで、7社の中でも新興の商社。久手堅氏自身はこれまで香港、台湾でのビジネスには携わっていたが、さらに「予備知識がなかった」部分をFTPで補い、海外展開に力を入れる。
シンガポールの日系百貨店での催事では、自社がシッパー(輸出者)となり、JCC、萌すと連携。自社で扱っていない沖縄産マグロなど生鮮品や海産物を、新たな商流に乗せることに成功した。久手堅氏は「今後は県外商品も積極的に扱いたい」と、自社ラインナップ強化にも意欲を見せる。
地域商社にも当然、得手不得手がある。それを補完し合うのがFTPだ。ある商社が持つ百貨店の商流は他社メンバーも利用し、黒糖は得意でも海産物を扱っていない商社は、他社から海産物の融通を受け、取り扱い商品を増やす。各社共通する課題を解決しながら商流を太く、多様にするとともに、貿易業務やフォーマットの共通化によるコスト削減、専門人材を必要とする分野の共同化なども連携の視野に入っている。
もともとすみ分けができていた商社同士が交流を活発化した背景は何か。それは沖縄にある変化が起きたためだ。その一つが那覇空港の航空物流ハブ化である。
那覇空港への全日本空輸(ANA)グループの貨物事業の立地で、沖縄はアジアと日本を結ぶ物流網の結節点となった。経済的に「日本の端」だった沖縄が「アジアの中心」と捉え直され、各社の意識も変わった。アジア市場へ展開する意識が生まれてきたのだ。
商社にとっては強みであるはずの専門性が、そこでは壁になった。取引先から専門分野以外の商品を求められても、自社には仕入れ先がない。ただ販売先と仕入れ先の拡大をすべて自社で取り組むのは難しい。その解決の糸口がFTPだ。地域商社の強みはやはり専門性。決して「総合」商社ではない。それでも総合力が求められる場合は、「自社の総合化」ではなく、自社の強みを残した「連携による総合化」で解決する。
新垣通商は2017年6月、台湾・台北市内の地下街に常設アンテナショップを開業した。台北駅の地下という好立地に加えて「問屋街が近く、プロが見に来やすい」(新垣社長)。そんな商機をつかみやすい立地は、FTPでの活用を意識した場であると同時に、沖縄だけでなく日本全国の商品を展示する受け皿とも位置づける。
新垣氏、久手堅氏がFTPについて口をそろえるのが「連携は沖縄県内に限らない」ということだ。全国各地には専門性を持った地域商社がある。エリアを越えた総合力を発揮することで、より強力な商流の可能性がまだまだ広がっている。
沖縄物産企業連合がゴーヤー粉末や塩など、アンドワンは黒糖とマグロ、BRIDGESは和牛と飲食店出店ノウハウを提供する。フォワーダー(利用運送事業者)の沖縄日通エアカーゴサービス(OAS航空、那覇市)も参画し物流の最適化を図る。OAS航空は業務提携する日本通運のネットワークを生かす。タイで日本産食品のニーズが高まる中、「あと1年遅れると勝てない。今がベストタイミング」(沖縄物産企業連合の羽地朝昭社長)と見ている。
沖縄では内閣府沖縄総合事務局の協力で、今回の3社を含む地域商社7社が2017年3月に連携協定を結び、沖縄発の輸出拡大に動いている。
7社が連携、「違い」を強みに海外展開
沖縄の地域商社が、新しい試みに乗り出している。沖縄県内の地域商社7社が連携した取り組み「FTP」のことだ。正式名称を「食品輸出等に関する戦略的連携協定」という。2017年3月に新垣通商、アンドワン、沖縄県物産公社、沖縄物産企業連合、萌(きざ)す、JCC、BRIDGESでスタートした。地場の老舗から大手、ベンチャーまで、外から見れば競合している県内商社が一通り顔をそろえる。その狙いは、各社の強みを寄せ合い、日本の食品を沖縄から発信することだ。県内にとどまっていては市場は大きくない。しかしアジアに目を向ければ、そこには巨大な市場が広がっている。
各社とも沖縄に本社を置き、加工食品や生鮮、飲料、食品原料、雑貨など沖縄の産品を中心に各分野で固有の商流を持つ。また国内に小売り店網を持っていたり、飲食店を運営していたり、飲食店の海外展開にたけていたりと、それぞれ異なる強みも併せ持つ。新垣通商(那覇市)の新垣旬子社長は「小さな輪が大きな輪になる。各社積み重ねてきたものが違う。それぞれ『種』を持っている」と連携の意義を説く。
FTPは2016年11月に同じ7社で発足した研究会をベースにしている。研究会発足以前は、それぞれが一部の経営者と顔見知りだった程度。そのためお互いにビジネスの話に踏み込むこともなかった、「今は(スマホアプリ)LINEでアイデアを話し合う」(新垣社長)まで協力関係が深まっている。
連携を支援した内閣府沖縄総合事務局経済産業部は、「連携は各社の希望があってこそ。1社でできなかったことが対応可能になる」(商務通商課)と期待する。FTPでは仕入れ先や販売先の情報交換を手始めに、連携相手の取引口座を使った販売に取り組む。
「成功パターンを知ることができた」と効果を語るのは、アンドワン(那覇市)の久手堅(くでけん)憲雄代表社員。同社は2015年に創業したばかりで、7社の中でも新興の商社。久手堅氏自身はこれまで香港、台湾でのビジネスには携わっていたが、さらに「予備知識がなかった」部分をFTPで補い、海外展開に力を入れる。
シンガポールの日系百貨店での催事では、自社がシッパー(輸出者)となり、JCC、萌すと連携。自社で扱っていない沖縄産マグロなど生鮮品や海産物を、新たな商流に乗せることに成功した。久手堅氏は「今後は県外商品も積極的に扱いたい」と、自社ラインナップ強化にも意欲を見せる。
地域商社にも当然、得手不得手がある。それを補完し合うのがFTPだ。ある商社が持つ百貨店の商流は他社メンバーも利用し、黒糖は得意でも海産物を扱っていない商社は、他社から海産物の融通を受け、取り扱い商品を増やす。各社共通する課題を解決しながら商流を太く、多様にするとともに、貿易業務やフォーマットの共通化によるコスト削減、専門人材を必要とする分野の共同化なども連携の視野に入っている。
もともとすみ分けができていた商社同士が交流を活発化した背景は何か。それは沖縄にある変化が起きたためだ。その一つが那覇空港の航空物流ハブ化である。
那覇空港への全日本空輸(ANA)グループの貨物事業の立地で、沖縄はアジアと日本を結ぶ物流網の結節点となった。経済的に「日本の端」だった沖縄が「アジアの中心」と捉え直され、各社の意識も変わった。アジア市場へ展開する意識が生まれてきたのだ。
商社にとっては強みであるはずの専門性が、そこでは壁になった。取引先から専門分野以外の商品を求められても、自社には仕入れ先がない。ただ販売先と仕入れ先の拡大をすべて自社で取り組むのは難しい。その解決の糸口がFTPだ。地域商社の強みはやはり専門性。決して「総合」商社ではない。それでも総合力が求められる場合は、「自社の総合化」ではなく、自社の強みを残した「連携による総合化」で解決する。
新垣通商は2017年6月、台湾・台北市内の地下街に常設アンテナショップを開業した。台北駅の地下という好立地に加えて「問屋街が近く、プロが見に来やすい」(新垣社長)。そんな商機をつかみやすい立地は、FTPでの活用を意識した場であると同時に、沖縄だけでなく日本全国の商品を展示する受け皿とも位置づける。
新垣氏、久手堅氏がFTPについて口をそろえるのが「連携は沖縄県内に限らない」ということだ。全国各地には専門性を持った地域商社がある。エリアを越えた総合力を発揮することで、より強力な商流の可能性がまだまだ広がっている。
日刊工業新聞2018年3月13日、「METIジャーナル」より一部転載