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ミネベアミツミ、統合から1年。早期にシナジーを創出した

貝沼由久会長兼社長に聞く「双方は一体化している」
ミネベアミツミ、統合から1年。早期にシナジーを創出した

貝沼由久氏

 ―旧ミネベアと旧ミツミ電機の統合から1年が経過しました。
 「ミツミの施設や設備を更新するための投資を行い、生産改善が思ったよりも進んだ。また、社員の士気やモノづくりに対する心構えも確実に変わり、双方は一体化している。加えて、ミツミ製品のスマートフォン向けカメラアクチュエーターや国内の大手ゲームメーカー向け電子部品の需要が増えた。2017年度の営業利益見通しは、赤字だったミツミの部品事業が業績を押し上げ、期初予想の560億円から800億円に上振れた」

 ―製品面での具体的なシナジーはありますか。
 「双方の技術を活用し、物体の歪みを検知するゲージを用いた荷重センサー『ミネージュ』がその一つだ。高感度で汎用性が高いため、自動車やスマホ以外にも搭載できる。すでに神奈川県厚木市の工場に試作ラインを設けた。秋からサンプル生産を行う。また、照明器具『SALIOT(サリオ)』にも両社の技術を結集し追尾機能を搭載した。この照明はスマホで配光角などを操作できるため、設置するホテルや美術館などに新しい発想と演出をもたらしている」

 ―有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)ディスプレーを採用したスマホが普及し始めていますが、液晶ディスプレー用部品への影響は。
 「新聞などでは(スマホが)有機EL型に移行するとの論調になっているが(液晶型がなくなるかどうかは)懐疑的だ。確かに10年後は分からないが、足元ではメーカーの旗艦モデルには液晶スマホが並んでいる。商機を捉え、省電力など液晶型の利点を引き出すために改良を続ける」

 ―ボールベアリングの需要が急増しており、生産体制の強化が喫緊の課題です。
 「家電やロボット向けも伸びたが、車やデータセンター(DC)向けが急伸している。車は電装化に伴い小型・精密モーターの搭載が増加し、DC向けは外部記憶装置を冷却するために高機能なファンモーターの引き合いが強い。このためモーターに必要なボールベアリングの需要が増えている状況だ」

 ―対策は。
 「工場の生産改善を図り、月産2億8500万個の体制を確保した。さらに約80億円の増産投資を行い、5月をめどに月産3億個超の体制を構築できる。だが、それでも足りない可能性がある。多目的用に新設した工場の利用も視野に入れ、必要に応じて増産対応を進める」

 ―20年度に売上高1兆円、営業利益1000億円の目標を掲げていますが、1年前倒しが見えてきました。
 「17年度の売上高は、すでに1000億円上積みして8500億円の見通しだ。このため、2年あれば目標数値に届く可能性は高い。同時にM&A(合併・買収)なども常に検討しており、まんべんなく事業規模を拡大していく」
(聞き手=渡辺光太)
日刊工業新聞2018年3月5日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
ミネベアとミツミの経営統合は、早期にシナジーを創出できたと言える。ミツミの工場にミネベアの生産技術を導入し生産性が向上したほか、更新投資も行いスマホ・ゲーム向けで機会損失を防いだ。懸念は有機ELシフトとされるが、あくまで貝沼社長は「怖くない」と強気だ。外部環境に惑わされず、需要に対し確実に対応しており、さらなる成長に向けた一手が待たれる。 (日刊工業新聞第一産業部・渡辺光太)

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