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NHK超絶 凄ワザ、最終回は「AI vs 人類 3番勝負」

 世界を席巻する人工知能AI。オックスフォード大学のオズボーン准教授は「2030年頃までに日本の労働人口の半分がAIやロボットに置き換え可能になる」と発表した。このままAIに仕事を奪われてしまうのか?番組では、今年からAIが本格始動する「ファッションコーディネート」と「タクシードライバー」、「俳句」の世界を舞台にAIと人間が対決し、それぞれの凄ワザを紹介。今後、人間が生き抜いていく術を探っていく。
●ファッションコーディネート対決
<人類代表>
三越伊勢丹ホールディングス
嶋崎 信也(しまざきしんや・伊勢丹新宿本店所属)
塩見 智子(しおみともこ・伊勢丹新宿本店所属)
長岡 幸恵(ながおかゆきえ・伊勢丹新宿本店所属)
<AI>
センシー株式会社
渡辺 祐樹(わたなべゆうき・代表)
武部 雄一(たけべゆういち・開発者)
岡本 卓(おかもとたけし・開発者)
●タクシー売り上げ対決
<人類代表>
小野 洋資(ドライバー)帝産タクシー 
<AI>
飯波 真菜(ドライバー)つばめタクシー株式会社
槇島 章人(開発者)NTTドコモ株式会社
●俳句対決
<AIチーム(札幌AIラボ)>
・川村 秀憲(かわむら・ひでのり)教授(北海道大学 調和系工学研究室)
・米田 航紀(よねだ・こうき)(北海道大学 調和系工学研究室・学部4年)
・石田 崇(いしだ・たかし)(札幌IT企業・テクノフェイス社長)
・伊藤 孝行(いとう・たかゆき)(北海道大学准教授・日本語学研究者)
<人類チーム>
☆大塚 凱(おおつか・がい) 
(俳句甲子園 2013年優勝/2017年 学生俳句チャンピオン)
☆松山ドリームチーム
・キム・チャンヒさん(俳句ライフマガジン「100年俳句計画」編集長)
・高須賀 真美子(たかすか・まみこ)(俳号・あねご)
・三瀬 明子(みせ・あきこ)(俳号・らまる/「深海へ降るらし冬の花火とは」の作者)
・下岡 和也(しもおか・かずや)(俳号・ベガ/愛媛大学俳句研究会・元部長)
・城田 和佳(しろた・のどか)(俳号・辰砂(しんしゃ)/愛媛大学俳句研究会・部長)
・脇坂 拓海(わきさか・たくみ)(俳号・脇々(わきわき)/愛媛大学俳句研究会)
<審査員>
・坊城 俊樹(ぼうじょう・としき)(日本伝統俳句協会・理事)
・関 悦史(せき・えつし)(俳句甲子園審査委員長)
・神野 紗希(こうの・さき)(現代俳句協会・青年部部長/俳句甲子園審査委員長)
NHK提供

「一人ひとりの『ドラえもん』を」


 人工知能(AI)がデジタル産業革命の主役に躍り出ようとしている。AIの第3次ブームとも言われるが、その活用領域はかつてないほどの広がりをみせる。日本は、IoT(モノのインターネット)やロボット、AIをベースに新しい価値を生み出せるかが問われている。

 「一人ひとりの『ドラえもん』を作りたい」―。カラフル・ボード(東京都渋谷区)の渡辺祐樹社長は自社のAIが目指す形をこう説明する。同社はAIに洋服やアクセサリーなどの画像を認識させ、一人ひとりの好みに合ったアイテムを提案するアプリをスマートフォン向けに提供する。

 渡辺社長が描くAIの未来像とはライフサイクルのあらゆる場面で困ったり迷ったりした時に支援するパートナーのような存在。ファッションに限らず、あらゆる感性を学ばせようと、味覚や味の好みもAIに学ばせ、食の分野にも進出した。

 AIといえばロジックを競う囲碁対局が思い浮かぶ。ただ、カラフル・ボードのように感性をキーワードに“人に寄り添うAI”を志向する取り組みが、日本では受け入れられやすいようだ。

 富士通はAIを構成する要素として、人の五感を活用して気持ちを理解する「感性メディア技術」に力を注ぐ。音声の波形から、感情を読み取ることも可能。コールセンターの担当者のストレス度合いなども確認できる。

 「人の脳細胞を模した脳チップが世の中かを変えるかもしれない」と語るのは新野隆NEC社長。将来、スマホに脳チップが組み込まれれば、より個人の特性に沿ったパーソナルAIが登場するかもしれない。日本の消費者のニーズは細分化されており、これに対応する“おもてなし”の感性は日本勢に一日の長がある。

 モノづくりでのAI活用も同様だ。日本の製造業の価値の源泉は人。究極は匠(たくみ)であり、設備に異常が発生すると、マニュアルを見ずとも、五感と経験を生かして迅速に対処する。AIにこうしたノウハウを学ばせて、伝承しようする試みも日本が先行している。

 ただ「日本がAIで勝てるのか」といった疑問は残る。AIのプラットフォーム(共通基盤)は海外勢が牛耳っているためだ。これに対してポール与那嶺日本IBM社長は「日本企業は膨大なデータを持っている。これをもとに業種ごとにソリューションを作り上げる競争はグローバルで始まったばかりだ」と日本勢が勝ち抜ける可能性を示す。

 その一方で「プラットフォームをいちから作っていては間に合わない」とも警告。AIでリードするためには、日本の知見と感性をいかしたソリューションビジネスに活路を見いだす必要がありそうだ。
(文=斎藤実、松沢紗枝)
※内容、肩書は当時のもの
カラフル・ボードはアパレルの実店舗で接客支援サービスを展開している

日刊工業新聞2017年1月11日



日産とDeNA、自動運転車の配車実証


 日産自動車がモビリティーサービス事業に本腰を入れる。ディー・エヌ・エー(DeNA)と組み、一般消費者向けに自動運転車を使った配車サービスの実証実験を3月に実施する。行きたい場所だけでなく周辺のお勧めスポットなども表示することで、移動だけにとどまらない新たな乗車体験を味わえるサービスを実現する。人々の車への価値観が「所有」から「利用」へシフトする中、日産がサービス化に踏み込む上での大きなステップと位置付けられる。

 「新しい事業領域で競争力を確保するには、専門性を持つパートナーとの協業が重要なポイント。両社でサービスの共同開発に進めたことは大きな一歩だ」。日産の西川広人社長は新事業の確立に向けた両社の取り組みの重要性を強調する。

 両社が開発した配車サービス「イージーライド」は、スマートフォンの専用アプリケーションを使い無人運転車両を呼び出し、目的地に移動する。今後、実証実験に加えて限定環境でのサービスなども実施し、20年代前半の本格開始を目指す。

 今回の実証は、横浜市のみなとみらい地区内で乗降地4カ所を設置し、300組の一般モニターが参加。利用者はアプリで行きたい場所や行動を入力し、人工知能(AI)が推奨した店舗や場所から行き先を決める。

 移動中は車内のタブレット端末から周辺地域のイベント情報や提携店舗のクーポンを取得できる。地域のバス、タクシー会社とは運転手不足解消などで補完関係を築き、地域のニーズに合ったサービス形態を検証する。DeNAは「今後到来する完全自動運転社会の主役を担えるサービスにすべく、長期的にしっかり育てていく」(守安功社長)方針。両社はサービスの品質を高めつつ、地域の自治体や事業者と連携したビジネスモデルの確立を目指す。

 シェアリングサービスの普及を見据えて、国内外で取り組みが活発化している。トヨタ自動車はタクシー配車アプリのジャパンタクシー(東京都千代田区)に出資し、タクシー会社向け配車支援などのサービスを検討。米国では米ゼネラル・モーターズ(GM)が19年に自動運転タクシーのサービス化に乗り出す。米グーグルも米国で自動運転タクシーの実証実験を計画する。
自動運転配車サービスの実証実験を前にデモを実施した

日刊工業新聞2018年2月26日



そだねージャパン、AI新人アナが実況


 日本人選手のメダルラッシュに沸く平昌(ピョンチャン)冬季五輪。その舞台でNHKの新人アナウンサーが実況デビューを果たした。その名は「ロボット実況」。NHK放送技術研究所(放送技研、東京都世田谷区)が開発したその新人アナは、堂々たる声でアイスホッケーやカーリング、スケルトンなどの熱戦の模様を連日、伝えている。

 「カナダ、ジョンストン選手のシュート。ゴール!」―。アイスホッケー女子、カナダ対OAR(ロシア出身選手で構成されたチーム)の一戦でロボット実況の声が響いた。新人アナらしからぬ女性の落ち着いた声で2時間以上の試合中継を無事にこなした。

 ロボット実況は人工知能(AI)による音声合成技術などを活用して実現した。五輪期間中は国際オリンピック委員会(IOC)傘下で放送サービスを手がけるオリンピック放送機構(OBS)が試合経過の情報を記した競技データをリアルタイムで各国の放送事業者に配信する。

 放送技研はその競技データを基に、即座に自動で日本語の実況文章を作り、音声を合成して生中継の配信映像に合わせて流すシステムを構築した。実況内容は字幕でも付与できる。放送技研ヒューマンインターフェース研究部の岩城正和部長は「OBSから配信される膨大な競技データからアナウンサーとして話すべき内容を自動で判断して実況できる」と強調する。

 同システムは2016年のリオデジャネイロ五輪の全種目で内部実験を行っており、満を持してデビューした格好だ。23日まで毎日1競技程度実況する。ここまでの成果は上々で、NHKは「ライブ配信の映像に対してリアルタイムで実況を付与できている」と手応えを強調する。

 五輪は多数の種目が同時に行われる。インターネット配信を活用することで多くの競技を中継できるようになったものの、中継で肝心の実況は人手の問題で付けるのが困難だった。ロボット実況はその代替になる。特にNHKとしては試合状況を音声や字幕で伝えることで、視覚や聴覚に障がいのある人が多様な競技の生中継を楽しめる環境を整える目的がある。

 また、NHKは今回の配信について20年の東京五輪・パラリンピックでの活用に向けた試験と位置付ける。その意味では「配信される競技データが少ない種目は実況しない時間が多くなる」(NHK)という課題を確認した。このため今後は競技データ以外の情報の活用を模索し、内容の充実を図る考えだ。東京五輪・パラリンピックでは新人アナの成長した姿が期待できそうだ。
                  

日刊工業新聞2018年2月20日

明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ニュースイッチでも度々紹介してきたNHKの「超絶 凄ワザ!」。今日の26日でレギュラー番組としての放送を終えます。ぜひご覧下さい。

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