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粗鋼生産、8100万トン割れ。高炉4社は安定操業急ぐ

 高炉4社を合わせた2017年度の粗鋼生産量が、2年ぶりに8100万トンを割り込みそうだ。4社の見通しを合計すると8050万トン程度と、16年度の8157万トンを100万トンほど下回り、15年度の8080万トンとほぼ同水準になる。各社とも工場の事故やトラブルに足を引っ張られた。東京五輪・パラリンピック関連などの需要が盛り上がる中での稼働率の低下は、需要の取りこぼしにつながる。アジアの強豪に対抗する上でも、安定操業が重要課題となる。

 新日鉄住金は大分製鉄所(大分市)の厚板工場で17年1月に起きた火災事故が響き、生産量が落ち込んだ。同社の18年3月期連結決算は、台風の影響なども含む生産・出荷面の制約で、経常利益が570億円下押しされる見通しだ。佐伯康光副社長は「じくじたる思いだ」と振り返る。

 JFEスチールも同年8月に東日本製鉄所京浜地区(川崎市川崎区)の転炉設備でトラブルが起き、生産量が伸び悩んだ。日新製鋼は周南製鋼所(山口県周南市)で15年7月に運転を始めた連続鋳造機の初期トラブルの影響が尾を引いた。

 各社の業績は内需回復を受けた値上げの効果で好調だが、先行きは人口減少などに伴う需要減退で、設備稼働率に下向きの圧力がかかる。ここに事故などが重なれば、固定費が重い装置産業にとって深刻な事態になる。

 トラブルの一因とされるのが、高度経済成長期に導入した設備の老朽化や、熟練工の退職だ。各社もこうした課題への対応に力を注いでいる。

 新日鉄住金は総額640億円を投じ、君津製鉄所(千葉県君津市)と鹿島製鉄所(茨城県鹿嶋市)でそれぞれコークス炉の改修や増設を進めている。18年度上期には室蘭製鉄所(北海道室蘭市)のコークス炉でも130億円を投じ、改修工事を始める。

 JFEスチールも東日本製鉄所千葉地区(千葉市中央区)にあるコークス炉の一部で更新工事に取り組んでいるほか、西日本製鉄所福山地区(広島県福山市)でも18年度上期からコークス炉の更新作業を進める。いずれも最新設備の導入で操業の安定性やエネルギー効率が高まるほか、低品位の石炭を使えるようになり、原料費も減ると期待している。
                 
日刊工業新聞2018年2月13日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
一方の技能継承問題では各社とも、トラブルへの対策や予防策にビッグデータ(大量データ)や人工知能(AI)を生かす取り組みに力を入れている。若手技能者らの経験・知識不足を補い、安定操業に寄与する技術の確立が急がれる。 (日刊工業新聞第二産業部・宇田川智大)

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