人と同じサイズの人型ロボットの良さとは?人と協働・複雑組み立てに挑む
東京ロボティクスが開発、新分野開拓に挑む
東京ロボティクス(東京都新宿区、坂本義弘社長、03・6265・9761)は、昨年末に人と同じサイズの人型ロボット「Torobo(トロボ)」の受注を開始した。ロボットアームの「トロボアーム」と合わせ製品群がそろった。今後は人と同じ場所で作業する協働ロボットとして食品や化粧品などのほか、複雑な組み立て作業など既存の産業用ロボットではできなかった新分野を開拓する。
東ロボは人型ロボットで知られる早稲田大学の菅野重樹研究室の技術を母体として2015年1月に設立した。現状はロボットアプリケーションの開発などの研究開発で利用するロボットをメーンにしている。
当初は共同創業者で学生時代からロボットの受託開発をしていた松尾雄希開発責任者が、軸ごとに取り外して形を変えられるユニット式アームを開発していた。だがロボット技術者から「付け替えられるのはどうでも良い。それよりも力や関節トルクを制御できるロボットがほしい」という意見をもらい、16年に7軸のトロボアームを作り出した。
トロボアームはケーブルがアーム内に収まってスッキリした外観と、各軸に搭載したトルクセンサーが特徴だ。ドイツのTQシステムズ製中空モーターを採用し小型軽量を実現した。また、トルクセンサーにより人がぶつかっても痛くない安全性を確保でき、パイプの挿入やケーブルの引き回しなど複雑な作業が可能だ。動きの詳細が数値化されるため研究開発でも利用しやすく、ロボットだけでなく鉄鋼、電機、電子部品、人工知能(AI)ベンチャーなど多様な分野の研究開発用途で採用されている。
トロボアームはプログラムの設計図に当たるソースコードをオープンにし、サーボ制御などをユーザーが自由にアレンジできることも利点だ。だが、産業用としての展開を考慮し、人型のトロボはオープン化を未定にしている。
人型双腕のトロボもアームの利点を生かした。ロボットを活用する領域を広げるため、人と同じ場所で働くことを意識した。サイズはほぼ人と同じで、肩もなで肩で「人に気をつかった」(坂本社長)デザインにした。無人搬送車(AGV)で移動して作業場を変えられるよう、上半身のみで重量10キログラムにした。腰にも縦方向の軸を備え、腕を前や下に伸ばす動きができるようにした。
「人と同じように下の物をかがんで取れる。大きさ以上に腕が届く範囲が広がる」(松尾開発責任者)という。
製品はそろったが、産業用途の展開には課題が残る。一つは手の部分だ。今は人と同じように何でもつかめるハンドはない。東ロボは独自の万能ハンドを開発中で、実用化すれば、できる作業の範囲が一気に広がる。AIも駆使し、より円滑な動きを実現したいという。
あとはシステム構築。坂本社長はシステムインテグレーターなどと連携し「分野ごとの自動化パッケージを開発していきたい」と意気込む。協働ロボットはこれからの市場。ベンチャー企業の新しい発想でどこまで市場を開拓できるか注目される。
(文=石橋弘彰)
トロボアーム
東ロボは人型ロボットで知られる早稲田大学の菅野重樹研究室の技術を母体として2015年1月に設立した。現状はロボットアプリケーションの開発などの研究開発で利用するロボットをメーンにしている。
当初は共同創業者で学生時代からロボットの受託開発をしていた松尾雄希開発責任者が、軸ごとに取り外して形を変えられるユニット式アームを開発していた。だがロボット技術者から「付け替えられるのはどうでも良い。それよりも力や関節トルクを制御できるロボットがほしい」という意見をもらい、16年に7軸のトロボアームを作り出した。
動き数値化
トロボアームはケーブルがアーム内に収まってスッキリした外観と、各軸に搭載したトルクセンサーが特徴だ。ドイツのTQシステムズ製中空モーターを採用し小型軽量を実現した。また、トルクセンサーにより人がぶつかっても痛くない安全性を確保でき、パイプの挿入やケーブルの引き回しなど複雑な作業が可能だ。動きの詳細が数値化されるため研究開発でも利用しやすく、ロボットだけでなく鉄鋼、電機、電子部品、人工知能(AI)ベンチャーなど多様な分野の研究開発用途で採用されている。
トロボアームはプログラムの設計図に当たるソースコードをオープンにし、サーボ制御などをユーザーが自由にアレンジできることも利点だ。だが、産業用としての展開を考慮し、人型のトロボはオープン化を未定にしている。
人と同じサイズ
人型双腕のトロボもアームの利点を生かした。ロボットを活用する領域を広げるため、人と同じ場所で働くことを意識した。サイズはほぼ人と同じで、肩もなで肩で「人に気をつかった」(坂本社長)デザインにした。無人搬送車(AGV)で移動して作業場を変えられるよう、上半身のみで重量10キログラムにした。腰にも縦方向の軸を備え、腕を前や下に伸ばす動きができるようにした。
「人と同じように下の物をかがんで取れる。大きさ以上に腕が届く範囲が広がる」(松尾開発責任者)という。
製品はそろったが、産業用途の展開には課題が残る。一つは手の部分だ。今は人と同じように何でもつかめるハンドはない。東ロボは独自の万能ハンドを開発中で、実用化すれば、できる作業の範囲が一気に広がる。AIも駆使し、より円滑な動きを実現したいという。
あとはシステム構築。坂本社長はシステムインテグレーターなどと連携し「分野ごとの自動化パッケージを開発していきたい」と意気込む。協働ロボットはこれからの市場。ベンチャー企業の新しい発想でどこまで市場を開拓できるか注目される。
(文=石橋弘彰)
日刊工業新聞2018年2月2日