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医療機器メーカーがAI・IoT活用し相次ぎ新サービス

高齢化を背景に市場拡大
医療機器メーカーがAI・IoT活用し相次ぎ新サービス

医療機器各社はAI、IoTサービスを相次ぎ商品化する(日立のCT)

 医療機器各社が人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)を組み合わせたサービスを相次ぎ商品化する。日立製作所は診断支援の臨床試験を今春にも開始し、富士フイルムは遠隔保守サービスを2019年にも実用化する。トプコンも課金型ビジネスを18年度中にも始める。高齢化を背景に医療機器の世界市場は拡大しており、世界レベルで開発競争が激化しそうだ。

 日立製作所はコンピューター断層撮影装置(CT)などの画像を集め、AIで脳や肺などの診断を支援する。臨床試験を今春にも開始し、18年中に薬事申請する方針だ。また総合診療医の診断支援技術の開発も進める。

 富士フイルムは内視鏡や超音波診断装置などの使用状況をAIで分析して、遠隔で故障を予知する試験を年末にも開始し、19年にも実用化する方針だ。稼働停止を未然に防ぎ、医療現場での業務の効率化につなげる。

 トプコンもIoT事業を進める専門会社を17年に米国で設立。医療機関にある光干渉断層計(OCT)などの眼科医療機器をつなぎ、診断を支援する。18年度中に課金モデルを確立して、サービス展開を始める予定だ。

 医療機器のIT活用は欧米企業も意欲的だ。米GEヘルスケアは画像診断装置へのAI導入を加速するため、米半導体大手エヌビディアと提携した。オランダ・フィリップスの日本法人、フィリップス・ジャパン(東京都港区)はソフトバンクと組み、AIやIoTを活用した製品・サービスの開発、実証実験に取り組む。

 医療機器の世界市場は約40兆円で年率5%の成長が期待される。「AIやIoTなどのデジタル技術が医療現場を変えるドライバーになる」(日本医療機器産業連合会の渡部真也会長)とみられており、厚生労働省もAI開発の重点領域として画像診断支援など6分野を選定した。
日刊工業新聞2017年1月25日
川上景一
川上景一 Kawakami Keiichi JEITA 常務理事
 IoT・AIの活用が医療の世界でも広がってきた。機器の故障予知や、画像解析による診断支援に向けた各社の取り組みが報じられている。このような取り組みには、医療の領域でも、他と同様に、「共創」が求められる。医師やコ・メディカルが超多忙で働く医療現場と、ベンダーが、どのように「共創」に向けて連携できるかが問われることになる。ベンダーが、先ず米国等で取り組む事例が多いのが実情だが、高齢化が進む課題先進国の日本の医療機関との「共創」が進む環境を整えたい。JEITAが昨年末に発表した「CPS/IoTの利活用分野別世界市場」見通しによれば、「医療・介護」は、2030年に22.3兆円の市場規模となり、2016年から年平均10.9%で拡大していくと予測されている。医療・介護現場へのIoT・AIの実装が進み、早く患者や医療・介護従事者の役に立つよう、進展が期待される。

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