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戸田建設が洋上風力発電で「環境債券」活用

「ESG投資」の受け皿に
戸田建設が洋上風力発電で「環境債券」活用

グリーンボンドで資金調達し洋上風力発電の設備投資に充てる(長崎県五島市・福江島沖の洋上風力発電施設)

 戸田建設は洋上風力発電施設の設備資金調達として発行した「グリーンボンド」で、一定の成果を挙げている。環境重視の姿勢をアピールできるのに加え、環境に関心が高い投資家と接点ができ、調達コストを低く抑えられた。今後も洋上風力発電施設の資金調達で、グリーンボンドを選択肢の一つに入れる。国内ではグリーンボンドの発行案件は少ないが、ESG(環境・社会・企業統治)投資の受け皿になる可能性がある。

 グリーンボンドは環境に配慮した事業に使途を限定して発行する債券。戸田建設は2017年12月、事業会社としては国内で初めて、本業につながるプロジェクトでグリーンボンドを発行した。調達額は100億円。

 調達資金は、長崎県五島市沖に建設する洋上風力発電施設の設備投資の一部に充てる。国内で唯一、事業化した浮体式洋上風力発電だ。現在1基が稼働中だが、今後9基、発電出力計2万2000キロワットの設置を計画する。環境影響評価(環境アセスメント)が順調に進めば、18年度にも建設に着手する見込み。

 戸田建設はグリーンボンドを発行するにあたり、オランダに本社があるESG評価会社、サステイナリティクスから第三者評価を取得した。

 コストや時間、手間はかかるが、グリーンボンドの客観性を保つには「欧米で実績のある第三者機関の評価が必要」(松井一総合企画部次長)。環境アセスでそろえた資料を第三者機関の評価にも使えたので、資料作成の手間や時間を省くことができた。

 グリーンファンドの購入者は、通常の社債と異なり幅が広がった。洋上風力発電施設のある長崎県を対象にした地元の投資ファンドや九州地区の地銀など、これまで接点のない投資家がグリーンファンドを購入。「環境を意識している投資家はいる。戸田建設に関心を持ってもらうことができた」(山嵜俊博執行役員)と指摘する。

 資金の調達コストも低く抑えられた。グリーンボンドの利率は年0・27%。格付投資情報センター(R&I)による戸田建設の格付けは「トリプルBプラス」で、同様の格付けの企業が社債を発行すると、年0・33%の利率になるという。

 洋上風力発電施設に必要な投資額は明らかにしていないが、今回調達した100億円だけでは「とても足りない」(山嵜氏)。調達手段は検討中だが、再度グリーンボンドを発行する可能性もあるという。
(文=村山茂樹)
日刊工業新聞2018年1月17日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
山嵜氏はグリーンボンドについて「これから資金調達の手段として広がっていくのでは」とみる。 (日刊工業新聞第二産業部・村山茂樹)

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