旭化成ケミカルズ、中国で自動車向け高機能樹脂の勝算
現地子会社のトップに聞く「新車特有のにおいの発生源を10分の1に抑えた独自グレードの強み生かす」
旭化成ケミカルズの中国子会社でポリアセタール(POM)樹脂を生産する旭化成ポリアセタール(張家港)(江蘇省張家港市)は、2018年までに自動車部品の原料に使う高機能グレード「テナック」の販売比率を現在の3割から6割に倍増させる。中国メーカーの生産増強でPOM樹脂販売の競争が激化する中、高機能グレードで差別化する狙いだ。谷村徳孝総経理に戦略を聞いた。
―POM樹脂の中国市場の現状を教えてください。
「リーマン・ショック後の10年に中国国内のPOM生産能力が340万トンと倍増した。その後も生産能力は増え続け、13年には440万トンまで増加。中国国内供給量の倍の生産能力を持つようになった現在、汎用グレードで勝負するのは採算的に厳しくなった。それだけに、高い技術が必要な高機能グレードで差別化する」
―高機能グレードの特徴は何ですか。
「新車特有のにおいの発生源となるホルムアルデヒド放出量を従来比約10分の1に抑えた独自グレードがある。POM樹脂でホルムアルデヒドなど揮発性有機化合物(VOC)を抑えた高機能グレードを生産できるのは中国で当社しかない。環境負荷低減の一環として中国でもVOC規制が進むとみられるため、低VOCグレードを作れる強みを生かす」
―日系だけでなく、欧米自動車メーカーへの拡販も不可欠です。
「自動車業界の品質管理国際規格『ISO/TS16949』の認証を5月4日に取得し、シートベルトのプッシュボタン、エアコンの風向きを調整するルーバーなどの自動車部材原料として拡販を始めた。欧米系のメーカーは、この認証がないと話を聞いてくれないため格段に拡販がしやすくなった」
―13年に全株式を旭化成グループが保有したことで高機能グレードの販売が可能になりました。
「当社は、旭化成ケミカルズと米国の化学大手デュポンと折半出資で04年に年産能力2万トンで稼働した。デュポンとの契約の関係で汎用グレード『タイストロン』のみを販売してきたが、デュポンの全保有株式を旭化成グループが取得したことで13年から『テナック』の販売ができるようになった。現状で汎用と高機能グレードの販売比率は7対3。これを18年までに4対6にしたい」
【チェックポイント/先行品創出体制強化を】
00年代、日本の化学産業は中国に汎用化学品を輸出することで自社の業績拡大につなげた。だが、リーマン・ショック以降、中国メーカーが最新鋭設備で汎用化学品を相次ぎ増強。供給過剰に陥る化学品が続出する中、「日本で作った汎用品を中国に輸出する時代は終わる」と旭化成ケミカルズの小林友二社長は断言する。今後は自動車向けを中心とした高機能化学品で差別化することが不可欠。常に他社に先行して競争力のある製品を生み出せる研究開発体制の強化が求められている。
(聞き手=水嶋真人)
―POM樹脂の中国市場の現状を教えてください。
「リーマン・ショック後の10年に中国国内のPOM生産能力が340万トンと倍増した。その後も生産能力は増え続け、13年には440万トンまで増加。中国国内供給量の倍の生産能力を持つようになった現在、汎用グレードで勝負するのは採算的に厳しくなった。それだけに、高い技術が必要な高機能グレードで差別化する」
―高機能グレードの特徴は何ですか。
「新車特有のにおいの発生源となるホルムアルデヒド放出量を従来比約10分の1に抑えた独自グレードがある。POM樹脂でホルムアルデヒドなど揮発性有機化合物(VOC)を抑えた高機能グレードを生産できるのは中国で当社しかない。環境負荷低減の一環として中国でもVOC規制が進むとみられるため、低VOCグレードを作れる強みを生かす」
―日系だけでなく、欧米自動車メーカーへの拡販も不可欠です。
「自動車業界の品質管理国際規格『ISO/TS16949』の認証を5月4日に取得し、シートベルトのプッシュボタン、エアコンの風向きを調整するルーバーなどの自動車部材原料として拡販を始めた。欧米系のメーカーは、この認証がないと話を聞いてくれないため格段に拡販がしやすくなった」
―13年に全株式を旭化成グループが保有したことで高機能グレードの販売が可能になりました。
「当社は、旭化成ケミカルズと米国の化学大手デュポンと折半出資で04年に年産能力2万トンで稼働した。デュポンとの契約の関係で汎用グレード『タイストロン』のみを販売してきたが、デュポンの全保有株式を旭化成グループが取得したことで13年から『テナック』の販売ができるようになった。現状で汎用と高機能グレードの販売比率は7対3。これを18年までに4対6にしたい」
【チェックポイント/先行品創出体制強化を】
00年代、日本の化学産業は中国に汎用化学品を輸出することで自社の業績拡大につなげた。だが、リーマン・ショック以降、中国メーカーが最新鋭設備で汎用化学品を相次ぎ増強。供給過剰に陥る化学品が続出する中、「日本で作った汎用品を中国に輸出する時代は終わる」と旭化成ケミカルズの小林友二社長は断言する。今後は自動車向けを中心とした高機能化学品で差別化することが不可欠。常に他社に先行して競争力のある製品を生み出せる研究開発体制の強化が求められている。
(聞き手=水嶋真人)
日刊工業新聞2015年06月30日 モノづくり面