自動運転に光を照らせ!次世代ランプ、開発最前線
自動運転の本格化に向け、自動車用照明メーカーが次世代ランプの開発に取り組んでいる。小糸製作所は光線の反射で全周囲の歩行者や車両を検知するランプや、走行状況を光で伝える照明の開発に着手。同様の照明は市光工業も手がけ始めた。スタンレー電気や三菱電機は車の動線を路上に照射する技術を開発。これらの技術開発は安全な自動運転の実現が狙い。照射方法の標準化など課題はあるが、自動運転車普及を見据え開発は加速しそうだ。
小糸製作所はレーザー光を感知するセンサーを内蔵した自動車用ランプを開発した。光線を放射して反射信号を受け取って対象物の距離や対象物の移動速度などを測定するセンサー「ライダー」をヘッドランプとリアランプに組み込み、車の全周囲にいる他の車両や歩行者を検知する。
ランプは自動運転システムに接続して事故が発生しそうな際に加減速させるなど安全性の向上にむけた適用を検討し、数年内に実用化を目指す。
安全性を向上するには自車だけでなく周囲への安全喚起も欠かせない。小糸製作所はセンサー付きランプと組み合わせた「コミュニケーションランプシステム」の開発を急いでいる。ランプを車の全外周に配置。車の走行状況を周囲に知らせ、安全喚起を図る。
外周だけでなく運転席にもランプを配置し、乗員にも車の状況を光で知らせることで「自動運転の状況下でも車に注意を向かわせ、安全に関する意識を絶えず持ってもらう」(横矢雄二副社長)狙いがある。
同システム全体の実用化は、自動運転が本格化する30年を想定。ただ「自動運転の一部は20年に実用化が進むため、一部の技術はそれくらいに実車へ搭載したい」(同)と意欲を持っている。
同様のランプは市光工業も開発に取り組んでいる。車の周囲を取り囲んで光を発し、周囲に状況を伝える仕組みは同じだ。現時点では青色、白色、だいだい色の光を発し、発光場所も全周だったり一部だったりと切り替えることもできる。
何色の光をランプのどの部分で照らすかによって周囲に伝える事柄を変え、商品としての有用性を高める考え。箕川彰一マーケティング部長は「完成車メーカーと協議しつつ、20年の実用化を目指す」としている。
「光だからこそ、伝えられることがある」とスタンレー電気の影山智之主任技師。同社が開発したのは、車体後部のテールランプから路面上に矢印などを投影する技術だ。
有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)を使い、車が後退するときにセンサーが歩行者などを検知すると進行方向に矢印を映し出す。歩行者に注意を喚起させて衝突を防止する。自動運転システムとも連携し、車内にも注意を促すなどの利用方法を考えている。
路面照射技術を開発したのは、自動車用照明メーカーだけではない。三菱電機も後退時やドア開閉時に、路面やボディーに注意喚起を示す図形などを照射する技術を開発した。
車の後方やドアに発光ダイオード(LED)光源を埋め込んだ。ボディーにも同様の図形を表示する。「提案はこれからだが、完成車メーカーに紹介すると好反応だった」(担当者)とし、早期の実用化を目指す。
自動運転に貢献する照明の完成にはクリアすべき課題もある。一つは標準化。「先進照明の開発を急ぐ欧州と比べ、この事象にはこの照らし方というような光の表現方法に関する共通認識がまだまだ定まっていない」と市光工業の箕川氏は認識。業界全体で連携し、表現方法のデファクトスタンダードづくりをしなければ出遅れるとの危機感が強い。
二つ目は日本の法規への適合だ。照明に関する法規は道路交通法や道路運送車両の保安基準など多岐にわたる。現状の法規に次世代ランプを適合させるには設計の修正など努力が必要との認識は各メーカーに共通している。
ただ、「自動運転化は照明の新たな可能性を探り形にもできるまたとないチャンスだ」と小糸製作所の横矢副社長は前向きに捉えている。自動運転の進展は既定路線であり、いかにキャッチアップできるかに各社は知恵を絞っている。
(文=山田諒)
全周囲の歩行者・車両検知
小糸製作所はレーザー光を感知するセンサーを内蔵した自動車用ランプを開発した。光線を放射して反射信号を受け取って対象物の距離や対象物の移動速度などを測定するセンサー「ライダー」をヘッドランプとリアランプに組み込み、車の全周囲にいる他の車両や歩行者を検知する。
ランプは自動運転システムに接続して事故が発生しそうな際に加減速させるなど安全性の向上にむけた適用を検討し、数年内に実用化を目指す。
安全性を向上するには自車だけでなく周囲への安全喚起も欠かせない。小糸製作所はセンサー付きランプと組み合わせた「コミュニケーションランプシステム」の開発を急いでいる。ランプを車の全外周に配置。車の走行状況を周囲に知らせ、安全喚起を図る。
外周だけでなく運転席にもランプを配置し、乗員にも車の状況を光で知らせることで「自動運転の状況下でも車に注意を向かわせ、安全に関する意識を絶えず持ってもらう」(横矢雄二副社長)狙いがある。
同システム全体の実用化は、自動運転が本格化する30年を想定。ただ「自動運転の一部は20年に実用化が進むため、一部の技術はそれくらいに実車へ搭載したい」(同)と意欲を持っている。
同様のランプは市光工業も開発に取り組んでいる。車の周囲を取り囲んで光を発し、周囲に状況を伝える仕組みは同じだ。現時点では青色、白色、だいだい色の光を発し、発光場所も全周だったり一部だったりと切り替えることもできる。
何色の光をランプのどの部分で照らすかによって周囲に伝える事柄を変え、商品としての有用性を高める考え。箕川彰一マーケティング部長は「完成車メーカーと協議しつつ、20年の実用化を目指す」としている。
後退時に矢印、路面投影
「光だからこそ、伝えられることがある」とスタンレー電気の影山智之主任技師。同社が開発したのは、車体後部のテールランプから路面上に矢印などを投影する技術だ。
有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)を使い、車が後退するときにセンサーが歩行者などを検知すると進行方向に矢印を映し出す。歩行者に注意を喚起させて衝突を防止する。自動運転システムとも連携し、車内にも注意を促すなどの利用方法を考えている。
路面照射技術を開発したのは、自動車用照明メーカーだけではない。三菱電機も後退時やドア開閉時に、路面やボディーに注意喚起を示す図形などを照射する技術を開発した。
車の後方やドアに発光ダイオード(LED)光源を埋め込んだ。ボディーにも同様の図形を表示する。「提案はこれからだが、完成車メーカーに紹介すると好反応だった」(担当者)とし、早期の実用化を目指す。
標準化・法規への適合、課題に
自動運転に貢献する照明の完成にはクリアすべき課題もある。一つは標準化。「先進照明の開発を急ぐ欧州と比べ、この事象にはこの照らし方というような光の表現方法に関する共通認識がまだまだ定まっていない」と市光工業の箕川氏は認識。業界全体で連携し、表現方法のデファクトスタンダードづくりをしなければ出遅れるとの危機感が強い。
二つ目は日本の法規への適合だ。照明に関する法規は道路交通法や道路運送車両の保安基準など多岐にわたる。現状の法規に次世代ランプを適合させるには設計の修正など努力が必要との認識は各メーカーに共通している。
ただ、「自動運転化は照明の新たな可能性を探り形にもできるまたとないチャンスだ」と小糸製作所の横矢副社長は前向きに捉えている。自動運転の進展は既定路線であり、いかにキャッチアップできるかに各社は知恵を絞っている。
(文=山田諒)
日刊工業新聞2018年1月8日