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好調いすゞの社長は鋳物技術の専門家。新体制の経営課題は?

15年ぶりに技術系社長。量拡大に向けGMとの提携効果が試金石に
好調いすゞの社長は鋳物技術の専門家。新体制の経営課題は?

社長に就任した片山社長(左)と細井会長

 いすゞ自動車の社長に15年ぶりに技術系出身者が就任した。26日の株主総会を経てトップに就いた片山正則社長は製造部門を歩み、モノづくりに深く精通する。2000年代前半に経営危機を迎えたいすゞは、4代続けてライン(現場)から距離がある企画出身者が社長を務めてきた。16年3月期に過去最高の営業利益を見込むなど、一連の経営改革の成果は業績にあらわれている。今回のバトンタッチは技術やサービス力で他社を上回り、グローバル事業を拡大する試金石ともなる。新体制の課題を追う。

 片山氏は製造部門を歩み、モノづくりに深く精通する。2000年代前半に経営危機を迎えたいすゞは、4代続けてライン(現場)から距離がある企画出身者が社長を務めてきた。16年3月期に過去最高の営業利益を見込むなど、一連の経営改革の成果は業績にあらわれている。今回のバトンタッチは技術やサービス力で他社を上回り、グローバル事業を拡大する試金石ともなる。新体制の課題を追う。

 「製造業だからいずれは技術屋さんに(社長を)渡したいと思っていた」。3月、細井行(すすむ)社長(現会長)は片山次期社長を横目に社長就任時から8年越しの思いを口にした。片山氏は鋳物技術が専門という“異色”のトップ。直近では最重点市場である東南アジアを統括するなど全体を俯瞰(ふかん)する力を身につけ、社長候補の本命とされてきた。

 いすゞは売上高の3割弱を東南アジアが大半を占めるアジア事業で稼ぎ出す。しかし、“金城湯池”だった同市場にも変化の波が押し寄せる。商用車最大手の独ダイムラーが傘下の三菱ふそうトラック・バスの知見を生かし、インド製の安価なトラックで切り込むなど競争が激化している。

 いすゞは5月に発表した18年3月期までの中期経営計画の中でサービスとモノづくり事業の連携を打ち出した。各国整備拠点にエンジニアらを投入してアフターサービスを強化し、修理や点検を通じて顧客の要望も直接把握。開発部門にフィードバックして各市場に合わせた車両を開発する。実は地味にみえるこの作業こそ、細井体制から温めてきた戦略で、価格勝負から抜け出す手立てでもある。

 もう一つ、片山社長に課せられた課題は“量の拡大”。当面、カギを握るのが米ゼネラル・モーターズ(GM)との提携効果だ。両社は再度の資本提携こそ否定するが、14年に合意したピックアップトラックの開発では部品の共通化や共同購買を推進。米国では7年ぶりにGMへの小型トラックのOEM(相手先ブランド)供給を再開するなど規模のメリットを追求する。

 ただ、提携相手をGMに絞ることはなさそうだ。過去には独フォルクスワーゲン(VW)グループとの提携を模索したこともあり「実利があれば、どことでも手を組む」(関係者)。エンジン開発など分野を絞った提携戦略は自動車業界の潮流。サービスの強化を打ち出すなか、提携相手は自動車メーカーに限った話ではないだろう。

 細井体制下ではリーマン・ショックや東日本大震災、タイの洪水などいくつかの市場激変を経験した。そんな逆境を乗り越え、就任時から営業利益を約6割引き上げた細井氏の経営手腕は折り紙付き。細井体制で敷いたレールを踏み外すことなく、新体制ではサービスとモノづくりの連携を軌道にのせ、新たな成長ステージに引き上げる役割が期待されている。
 (文=西沢亮)
日刊工業新聞2015年06月26日 自動車面の記事を一部修正
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
細井さんの側近中の側近。外部との提携交渉は人脈豊富な実力会長の細井さんが引き続き担って、片山さんは技術開発など基盤固めなど役割分担していくことになるだろう。

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