冬の沖縄、スタートアップイベント総まとめ
寒さ厳しい師走に、薄着で過ごせる暖かい沖縄。だが気温だけでなく、12月はスタートアップ関連のイベントも熱かった。
ベンチャー支援のリバネス(東京都新宿区)は、今年初めてビジネスプランコンテスト「琉球テックプラングランプリ」を開催。10月のキックオフイベントを経て、沖縄県西原町で最終選考会を実施した。井上浄リバネス副社長CTOは「(同社が全国各地で展開する支援スキームの)『テックプランター』に種を植え、木が大きくなる仕組みをつくりたい」と力を込めた。
9者がエントリーし、琉球大学のシーズを活用した琉大植物病理研チームが最優秀賞を獲得。「沖縄産未利用植物(アワユキセンダングサ)を活用した衛生害虫および農業害虫の防除」をテーマに、人間には毒性が低い一方で虫には効果の大きい、植物成分を使った防虫剤の開発プランを提案した。
上場支援の沖縄ジェイ・アドバイザー(沖縄県名護市)が事務局を務める異業種交流イベント「オキナワベンチャーマーケット」では、ピッチイベントを併催。会場を昨年の那覇市内から沖縄県恩納村の沖縄科学技術大学院大学に移し、2年目となる「アジアンピッチ」を展開した。沖縄に加えて東京、京都、福岡、そして台湾から2社がエントリー。プレゼンテーションや質疑応答はすべて英語で行われた。
沖縄ジェイ・アドバイザーの高山征嗣CEOは「沖縄は(物流のハブ拠点となり)モノの流れができた。沖縄から新しいビジネスの流れもつくりたい」と、開催の意義を話した。午後には同じ会場で初開催の「テックピッチ」を開催。琉球大、沖縄科技大、沖縄高専のほか、東京工業大、大阪大のシーズを紹介。こちらも台湾から国立台湾海洋大学の2チームが参加した。
ピッチではないが、学生対象や育成を目的にしたイベントも興味深い。
17日には「Ryukyufrogs(リュウキュウフロッグス)」の最終発表会「リープデイ」が行われた。学生の起業家精神を養う目的の育成プログラムで、タイトルは「井の中の蛙(かわず)大海を知らず」から取っている。沖縄の“カエル”に米国シリコンバレーという“大海”を経験させ成長を促す。最終発表会は「リープ(跳躍)」の日となる。
9期目の今年は、中学1年から大学3年生まで7人の男女を選抜。時には涙した半年間の研修成果を、チームに分かれて「バリアフリー」「おやじ」「宇宙」とITを組み合わせたビジネスプランにまとめた。定員500人のホールがほぼ満員に埋まる中、堂々たる姿勢で英語のプレゼンを披露した。特に歴代最年少となった中1の古石(こせき)華子さんが提案した宇宙食ビジネスは、スタートアップ業界を百戦錬磨で乗り切ってきたゲスト経営者らもうならせた。
学生向けコンテストでは、在沖縄米国総領事館と沖縄科技大が主催する「スコア!」もユニーク。科学をテーマに、起業への関心を高めることを目的にする。優勝チームに米国研修旅行が贈られることから、英語で発表するチームも多い。生活や学校の授業の中で沸いた疑問やヒントを元に仮説を立て、地道な実験を通してビジネスプランを構築する。今年の優勝は沖縄県立美里高校チーム。「卵殻膜のセカンドライフ」と題して未利用資源の製品化を提案した。
最後に紹介するのは、沖縄市が開設した起業支援施設「スタートアップカフェコザ」の発表会。対外的に発表する上記のイベントとは異なり、2カ月間のプログラミング実習の最終課題として内輪向けのもの。だが、受講生が生活や社会の課題解決に向けてビジネスプランを練り、自らプログラムを組み、実装できる形にまで仕上げている点で、最も起業に近い場所にある。
同実習は職業訓練の位置付けで参加する人もおり、社会人や学生など参加者の属性や技術のレベルはさまざま。基礎知識を持つ受講者もいれば、受講にあたりパソコンを買いそろえた初心者も。ビジネスプランの内容も、運転代行の課題解決といった身近な課題を解決するウェブサイトから、広い市場に向けてリリースできる可能性のあるアプリまで多種多様。ただ何より、チームで完成させたプロダクトを自信を持って発表していたのが印象的に映った
沖縄は第二次大戦による甚大な戦災を受けたことから、戦後に起業し育った企業が地場経済を支えている。起業率も全国トップで、起業マインドにあふれた土地だ。スタートアップにおいても、行政や金融機関も支援を積極化している。一方で、ベンチャーキャピタルの少なさを指摘する声があるほか、支援側の顔ぶれが固定化している印象もある。
沖縄とアジアは、航空物流網の整備などが発端となり、ビジネスにおける心理的距離が近くなった。観光目的で多くの外国人も訪れる環境にある。自立的発展が課題となる中、グローバル市場への進出はその解として不可欠。沖縄が環境を生かし、意欲とアイデアを持った起業家を押し上げるには、支援側の多様化も求められている。
ベンチャー支援のリバネス(東京都新宿区)は、今年初めてビジネスプランコンテスト「琉球テックプラングランプリ」を開催。10月のキックオフイベントを経て、沖縄県西原町で最終選考会を実施した。井上浄リバネス副社長CTOは「(同社が全国各地で展開する支援スキームの)『テックプランター』に種を植え、木が大きくなる仕組みをつくりたい」と力を込めた。
9者がエントリーし、琉球大学のシーズを活用した琉大植物病理研チームが最優秀賞を獲得。「沖縄産未利用植物(アワユキセンダングサ)を活用した衛生害虫および農業害虫の防除」をテーマに、人間には毒性が低い一方で虫には効果の大きい、植物成分を使った防虫剤の開発プランを提案した。
上場支援の沖縄ジェイ・アドバイザー(沖縄県名護市)が事務局を務める異業種交流イベント「オキナワベンチャーマーケット」では、ピッチイベントを併催。会場を昨年の那覇市内から沖縄県恩納村の沖縄科学技術大学院大学に移し、2年目となる「アジアンピッチ」を展開した。沖縄に加えて東京、京都、福岡、そして台湾から2社がエントリー。プレゼンテーションや質疑応答はすべて英語で行われた。
沖縄ジェイ・アドバイザーの高山征嗣CEOは「沖縄は(物流のハブ拠点となり)モノの流れができた。沖縄から新しいビジネスの流れもつくりたい」と、開催の意義を話した。午後には同じ会場で初開催の「テックピッチ」を開催。琉球大、沖縄科技大、沖縄高専のほか、東京工業大、大阪大のシーズを紹介。こちらも台湾から国立台湾海洋大学の2チームが参加した。
起業家育成イベントも
ピッチではないが、学生対象や育成を目的にしたイベントも興味深い。
17日には「Ryukyufrogs(リュウキュウフロッグス)」の最終発表会「リープデイ」が行われた。学生の起業家精神を養う目的の育成プログラムで、タイトルは「井の中の蛙(かわず)大海を知らず」から取っている。沖縄の“カエル”に米国シリコンバレーという“大海”を経験させ成長を促す。最終発表会は「リープ(跳躍)」の日となる。
9期目の今年は、中学1年から大学3年生まで7人の男女を選抜。時には涙した半年間の研修成果を、チームに分かれて「バリアフリー」「おやじ」「宇宙」とITを組み合わせたビジネスプランにまとめた。定員500人のホールがほぼ満員に埋まる中、堂々たる姿勢で英語のプレゼンを披露した。特に歴代最年少となった中1の古石(こせき)華子さんが提案した宇宙食ビジネスは、スタートアップ業界を百戦錬磨で乗り切ってきたゲスト経営者らもうならせた。
学生向けコンテストでは、在沖縄米国総領事館と沖縄科技大が主催する「スコア!」もユニーク。科学をテーマに、起業への関心を高めることを目的にする。優勝チームに米国研修旅行が贈られることから、英語で発表するチームも多い。生活や学校の授業の中で沸いた疑問やヒントを元に仮説を立て、地道な実験を通してビジネスプランを構築する。今年の優勝は沖縄県立美里高校チーム。「卵殻膜のセカンドライフ」と題して未利用資源の製品化を提案した。
最後に紹介するのは、沖縄市が開設した起業支援施設「スタートアップカフェコザ」の発表会。対外的に発表する上記のイベントとは異なり、2カ月間のプログラミング実習の最終課題として内輪向けのもの。だが、受講生が生活や社会の課題解決に向けてビジネスプランを練り、自らプログラムを組み、実装できる形にまで仕上げている点で、最も起業に近い場所にある。
同実習は職業訓練の位置付けで参加する人もおり、社会人や学生など参加者の属性や技術のレベルはさまざま。基礎知識を持つ受講者もいれば、受講にあたりパソコンを買いそろえた初心者も。ビジネスプランの内容も、運転代行の課題解決といった身近な課題を解決するウェブサイトから、広い市場に向けてリリースできる可能性のあるアプリまで多種多様。ただ何より、チームで完成させたプロダクトを自信を持って発表していたのが印象的に映った
沖縄は第二次大戦による甚大な戦災を受けたことから、戦後に起業し育った企業が地場経済を支えている。起業率も全国トップで、起業マインドにあふれた土地だ。スタートアップにおいても、行政や金融機関も支援を積極化している。一方で、ベンチャーキャピタルの少なさを指摘する声があるほか、支援側の顔ぶれが固定化している印象もある。
沖縄とアジアは、航空物流網の整備などが発端となり、ビジネスにおける心理的距離が近くなった。観光目的で多くの外国人も訪れる環境にある。自立的発展が課題となる中、グローバル市場への進出はその解として不可欠。沖縄が環境を生かし、意欲とアイデアを持った起業家を押し上げるには、支援側の多様化も求められている。
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