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注目企業のトップ人事を占う。日産・SUBARU・三菱重工・ゼネコン…

**自動車
 自動車業界で注目されるのは、SUBARU(スバル)の吉永泰之社長(63)の去就だ。ここ3代のトップの在任期間はいずれも5年だが、吉永社長は18年6月に7年を迎える。吉永社長とともに現在のスバルの成長を支えた財務担当の高橋充氏(62)と技術担当の武藤直人氏(64)の元取締役専務執行役員が6月の株主総会でそろって退任するなど、既に世代交代が始まっている。いつ後進に道を譲るタイミングが来ても不思議ではない。一方、ここまでスバルブランドを高めた吉永社長の手腕から「続投してほしい」という周囲の声も多い。

 日産自動車の西川広人社長(64)は4月に就任したばかり。無資格検査問題により記者会見では経営責任も問われたが、「私の責任は(会社を)この状態から挽回させること」(西川社長)と続投に意欲を示す。16年に日産と資本提携した三菱自動車は、05年から社長または会長を務めてきた益子修氏(68)の役職を17年6月に最高経営責任者(CEO)専任とした。社長職は“空席”となっており、後任人事への注目が高まっている。

 商用車メーカーでは、日野自動車の下義生社長(58)が17年6月、いすゞ自動車の片山正則社長(63)が15年にそれぞれ就任。両社長とも在任期間が短く交代の可能性は低い。

三菱重工


 造船・重機業界は、三菱重工業の動向が焦点となりそうだ。同社の宮永俊一社長(69)は就任から丸5年を迎え、ここ2代のトップと在任期間が並ぶ。宮永社長は商船事業の分社化など、就任以来、事業の選択と集中を推進。懸案事項に一定のめどがついたうえ、来期は新中期経営計画が始動することから、新社長で船出を飾ると見る向きもある。

 ただ足元では、火力発電所向けの大型ガスタービンなどを担うパワー部門の業績低迷など、新たな課題が顕在化している。同社の総売上高の約4割を占めるパワー部門の立て直しに向けて、構造改革を検討している。5度目の納期延期となった国産ジェット旅客機「MRJ」もあり、宮永社長の続投も考えられることから情勢は流動的だ。

ゼネコン


 ゼネコン大手では大林組の白石達社長(70)の去就に注目が集まる。2007年の就任から11年目を迎え、売上高や事業規模が大きい「スーパーゼネコン」5社の社長の中では、最も就任期間が長くなった。経営環境が良好な中、いつ次世代にバトンを渡してもおかしくない状況にある。

 後任候補には蓮輪賢治取締役専務執行役員(64)が挙がる。ただ過去の社長は建築畑から就任しており、土木畑の蓮輪氏が就くとすれば初めて。これまでと同様の“法則”が適用されれば、今年4月、建築本部長に就任した村田俊彦常務執行役員(62)が有力候補になる。だが、ここにきてリニア中央新幹線の建設工事に関する不正受注疑惑が浮上し、不透明感が増している。

通信


 通信業界はNTTの鵜浦博夫社長(68)の去就が焦点。NTTの社長は2002年以降2代続けて在任5年での交代だったが、鵜浦社長は在任6年目に入っている。18年度は新中期経営戦略がスタートする節目の年でもあることから後任に託す可能性がある。候補には事業戦略担当の沢田純副社長(62)やNTT東日本の山村雅之社長(64)らの名前が挙がる。ただ業績は好調。市場環境の変化と事業の成長スピードを見極めた上で、20年の東京五輪・パラリンピックまで見据えた留任の線も捨てきれない。

 KDDIは田中孝司社長(60)が12月で在任丸7年。18年度は現行の中期経営計画の最終年となる。多様な生活関連商材を展開する「ライフデザイン企業」への変革を掲げており、体制作りに関わるM&A(合併・買収)の取り組みは道半ばであるため続投が濃厚とみられる。交代があるとすれば、高橋誠副社長(56)らが候補になる。
日刊工業新聞2017年12月19日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
個人的に注目しているのは「MRJ」などで揺れる三菱重工。また日立の中西会長が経団連会長になる見通しで、重工と日立の火力発電の係争はどうなるか。全業界のトップ交代予想は、日刊工業新聞または電子版でどうぞ。

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