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長く続ける“ラリー”が島津製作所の栄養源に!

今年他界した西八條實元社長のテニスに込めた意思を引き継ぐ
長く続ける“ラリー”が島津製作所の栄養源に!

島津製作所テニス部所属選手と中本社長(中央)

 創業140周年の節目を今年3月に迎えた島津製作所。分析計測機器などを手がける京都を代表する老舗企業で、2002年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一シニアフェローが在籍することでも知られる。その島津製作所にとって15年は、もう一つの“節目”ができた。それがテニス。29日開幕のウィンブルドン選手権での活躍が期待される錦織圭選手の存在で注目度がグンと伸びるテニスだが、同社は“追い風”が吹く以前からテニスを通じた社会貢献などを地道に続けてきた。

 プロ契約選手らが所属する島津製作所テニス部の創設は88年。とりわけテニス振興に力が入るのは日本テニス協会副会長を歴任し、今年2月に92歳で死去した西八條實元社長の影響が大きかったようだ。

 テニス部の谷垣哲也部長(執行役員広報室長)は「現在のCSR活動の先駆け。京都テニス界の盛り上げと、トップレベルの実力を有する実業団チームを持つこと」という先代社長の意向を受けて、88年にまず男子2人で発足し、91年に女子チームもできた。

 転機が訪れたのは02年3月期に創業以来初の営業赤字に陥った時だ。男子チームは04年に廃部になった。希望退職募集もあり「当時の経営陣にとっても“決断”を余儀なくされたはず」と谷垣部長は振り返る。歯を食いしばる思いで存続させた女子チームは、プロ契約選手を所属させて強化に乗り出した。「大きな転機」(谷垣部長)とアマチュア純血主義から決別し、さらに高みを目指す契機となった。

 BツーB(企業間)事業が主力の島津製作所とテニス。一見、関連が薄いように見えるが製品の訴求と同じで、積み重ねたテニスへの“熱意”は「日本テニス協会からも島津は一目置かれている」(同)と評価を得ている。

 それはテニス界への貢献にも表れている。開催が危ぶまれた室内大会を、同社が特別協賛する形で96年から「島津全日本室内テニス選手権大会」として継続している。この間、赤字に陥った時も含まれるが、谷垣部長は「これは続けていこうと経営陣の中で受け継がれてきたはず」と力を込める。もちろんこのほかに地元・京都でテニス教室などを通じた社会貢献活動を続けている。

 本社・三条工場(京都市中京区)に、創業140周年事業の一環で2面備えた屋内型コートが開設された。紆余(うよ)曲折を経て完成した本格的なコートを前に、中本晃社長の顔にも笑みが広がった。

 島津製作所は、ことテニスに関しては“断固たる意志”をもって継続してきた。そのテニス部は今年「第29回テニス日本リーグ」で連覇。“本業”も好調で16年3月期連結決算の業績は過去最高を更新する見込みだ。長く継続してきたテニス活動の蓄積は「140年企業」という太い幹を育む栄養源となり、モノづくりにも相乗効果をもたらす。ともすれば業績に左右されがちな企業スポーツのあり方においても、島津製作所のスタンスは道しるべの一つになりそうだ。
 (文=林武志)
日刊工業新聞2015年06月23日 列島ネット面
斉藤陽一
斉藤陽一 Saito Yoichi 編集局第一産業部 デスク
本業のモノづくりへの相乗効果に加え、社会貢献、企業PRなど、企業スポーツの理想的なあり方を島津製作所は体現していると思います。

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