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地域の〝味〟商品に反映させます

セブン&アイが商品開発法や仕入れを全面見直し
 セブン&アイ・ホールディングス(HD)は、地域や個店に視点を置いた経営にカジを切っている。これまで、総合スーパー(GMS)やコンビニエンスストアなどのチェーンストアといえば、全国一律の商品政策が主流であり、販売する商品も価格も店舗間や地域間で大きく差はなかった。しかし、同社は店舗のある地域を軸にマーケティングを展開する新たな戦略の構築に動きだした。

 「今年、チェーンストアのあり方を全面的に見直す」(鈴木敏文セブン&アイHD会長)。同社会長のこの発言は、業界ではちょっとしたサプライズになった。いわば、従来型のチェーンストア経営から脱却し、新たな運営体制に切り替えるという大胆な転換だからだ。
 同社では主力のコンビニ事業を展開するセブン―イレブン・ジャパンがすでに関西地区から地域の食文化や嗜好(しこう)を反映した商品作りを進め、地域対応商品政策の展開に乗り出しているが、この取り組みを今年本格化し全国に広げる。

 またGMS事業のイトーヨーカ堂でも従来、本部が各店舗に供給する体制から店舗が主導権を持って品ぞろえをする形に改める方針を打ち出した。
 歴史的な転換の背景にあるのは鈴木会長の「買い手市場の時代、顧客のニーズにきめ細かく対応しなければならない」という認識からだ。

 【食文化を反映】
 セブン―イレブンで先行して取り組んだ関西地区の地域対応商品の開発を主導した西日本プロジェクトリーダーで執行役員の石橋誠一郎氏も「関西地域では食文化も、(食の)歴史もありながら(当社として)対応ができていなかった」とし、地域の顧客が慣れ親しんだ味を商品開発で具現化する取り組みを実行した。

 従来、関西地区では地域の食文化などを反映した商品は売れ筋の弁当や総菜の全商品の1割程度しか実現できていなかったが、これを一気に7割まで増やしたのだ。

 一例を挙げると、関西では「だし」文化や「洋食店」文化がある。これを反映させ、お出しの効いたうどんや洋食店には欠かせないデミグラスソースのハンバーグなどを開発した。
 石橋執行役員は商品を開発する前に商店街を30カ所程度、洋食店など飲食店を150店程度回り、徹底的にメニューや味覚を調査し、店の人の話も聞いたという。

 【一気に拡大】
 セブン―イレブンでは今年、この関西地区での取り組みを全国に一気に拡大、各地で地域の食文化や歴史を反映した商品開発に取り組む方針だ。またイトーヨーカ堂でも本部の商品部は商品開発に専念、各店舗が推奨商品のなかから自店に合った商品を選択して販売するように改める。

 当然ながらセブン&アイでは、この地域商品の精度を高める仮説と検証を繰り返すとみられる。だが同社の大胆な転換に触発される格好で、流通業界では従来の本部主導の経営や各店舗ごとの品ぞろえ、本部の商品開発の仕方を見直す契機になる可能性が大きくなってきた。
日刊工業新聞2015年02月13日 モノづくり面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
ついにチェーンストアも地域ごとに商品開発する時代に。ここまで来たか。

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