自動車のロボット化が促す「モビリティ・オンデマンド」の世界

ディ・エヌ・エーが仕掛けたタクシー革命。完成車メーカーはビジネスモデルの転換迫られる?

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ZMPとDeNAはロボットタクシーで一石を投じる
 【概念を変える】
 「自動運転は車の概念を変える」。ディー・エヌ・エー(DeNA)の中島宏執行役員は会見の席で力強く語った。同社は自動運転技術を開発するZMP(東京都文京区)と共同で、無人タクシー実用化を目指す新会社「ロボットタクシー」を設立。車が自律的に走るロボットになれば、運転時間が自由時間に変わり、車の価値をひっくり返す可能性を持つ。

 自動運転を巡っては、トヨタ自動車や独ダイムラーなど完成車だけでなく、巨大部品メーカーや米グーグルなど異業種も加わり、開発競争を繰り広げる。高度な自動運転では電子部品や人工知能などが使われるためで、センサーや通信で検知した情報を頭脳となるコンピューターで融合して運転操作を判断する。この検知と情報融合、判断が技術的に難しく、勝敗を握るところだ。

 各企業の自動運転技術の完成目標はそれぞれだが、おおむね5―15年内の2020年代。技術的な課題はあるものの、交通事故を減らすという社会的意義に加え、やらなければ市場競争に取り残される雰囲気さえ漂う。

 【ルール整備を】
 実用化に向けては事故時の責任や規制の議論が不可欠で、それにも「自動運転の完成度が重要になる」(自動車大手幹部)。プロ並みの運転か、平均的かによって信頼感はまるで違う。技術レベルを見極め、実用化と同時進行でルールを整備しなければならない。

 ただ、産業への影響は開発競争の勝敗よりも、ビジネスモデルの転換の方が大きくなりそうだ。欧系コンサルタントのローランド・ベルガーは今春発表したリポートで、2030年以降に米国で自動運転とコネクテッド技術により人を目的地に運ぶ「モビリティ・オンデマンド」が大幅に増えていく可能性を指摘。また自動運転で事故が減れば保険も変わる。運転から解放されれば車内の過ごし方が変わり、多くのサービスが生まれる。

 グーグルが自動運転車に巨額の投資を行うのも、中国の検索大手バイドゥや電子商取引大手アリババが自動車大手との提携を広げるのも、ここまでの産業構造の変化を見据えてのものだ。

 【新たな試み】
 日本ではこの動きにDeNAとZMPの新会社が一石を投じる。まずロボタクは高齢化地域や過疎地といった交通不便地域で、「運転できない乗客のための自動運転を実現する」(谷口恒ZMP社長)と意気込む。さらにDeNAが他社と連携し、ヘルスケアや情報、保険などのサービス提供を目指す。「ユーザー体験領域の競争ならグーグルにも負けない」(中島DeNA執行役員)。

 日本車大手は異業種ほど大胆なビジネスモデルの変化を打ち出していないが、多くの課題を自前で解決してきた実績はある。将来、異業種の新しいアイデアが自動車業界と結びつけば、おもしろい潮流が生まれそうだ。

日刊工業新聞2015年06月22日 1面

COMMENT

政年佐貴惠
名古屋支社編集部
記者

ロボットと共生する社会の連載4回目。自動運転をハブに、さまざまな業界が次のビジネスの種を探っている。1月のCESではダイムラーが大胆なコンセプト車を発表し、クルマのあり方が変わりつつある状況をひしひしと感じた。日本の車メーカーがどこまでIT領域に手を伸ばすのかはもちろんだが、日本の通信業界の動きも気になる。

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