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日立とユニクロの元社員という異色の起業家が確信する“ほめる”社内SNS

ウィズプラ・今西良光社長「従業員のナイスな取り組みを見える化し共有すれば士気向上につながる」
日立とユニクロの元社員という異色の起業家が確信する“ほめる”社内SNS

「NPSはまだ日本に浸透しておらず先行メリットがある」と今西社長

 ウィズプラはインターネットを通じて、従業員の意欲を高めるサービスや顧客向けアンケートを業務改善に生かすサービスを展開。最先端の技術を駆使し、新時代を築こうとしている。だが、社長の今西良光は「ネットはあくまで手段。人と人との関係を良くするお手伝いをするのが目的」と断言し、日ごろの営業活動も足で稼いでいる。

ユニクロの効率的な店舗管理でも解決できない課題にヒントを得る 


 今西は日立製作所で官公庁向けを中心にシステム営業を行い、ファーストリテイリングでユニクロの店舗管理を経験した後、早稲田大学大学院商学研究科に入り、ウィズプラを設立した異色の経歴の持ち主だ。「ユニクロは接客業の中で最も業務が効率化された部類。それでも気合と根性でしか乗り切れないところがあると感じた。システム営業で得た物事を合理的に改善するプロセスを生かせば解決できるのではないかと感じた」。

 ユニクロ時代、特に疑問を感じたのが、従業員とのコミュニケーションが取りづらかったこと。「現場でトラブルが起きてもマネージャーが早く感じ取れれば、芽が小さいうちに対処できる。従業員個々のナイスな取り組みを見える化して全従業員で共有すれば現場を改善でき、士気向上につながる」。そう考えた今西は、従業員個々の声を社内全体で共有できる参加交流型サイト(SNS)の開発を決意した。

 当初は早大生の協力を得たが、クオリティーを高めるのに苦心。「構築してもらったシステムを作り直したこともあった」。ウェブシステム会社から最高技術責任者(CTO)を招き、学生と組むことで技術面の課題をクリアした。13年11月、NTTドコモの起業家支援プログラムに採択されて賞金を獲得。グリーベンチャーズの堤達生氏(現社外取締役)と出会い、ビジネスの方向性を固めたことも追い風となった。

 米国発の顧客の継続利用意向の調査法「NPS」を日本で
 14年2月、「Pozica」(ポジカ、現ウィズプラカード)を発表。旧知の仲間を頼って営業活動すると、ニーズの高さを知った。「自分のやったことは間違っていなかった」。3月にはキャンパスベンチャーグランプリ全国大会で経済産業大臣賞を受賞した。

 「顧客間コミュニケーションも見える化してほしい」とのニーズも浮かんできた。今西は米国で話題となっている顧客の継続利用意向を知る調査法「NPS」に着目。NPSに関する論文を集め、関連サイトを参考にし、同年8月、顧客アンケートを即時的に数値化し閲覧できるサービス「ウィズプラNPS」をスタート。現在はフィットネスクラブや飲食店、カラオケボックスなど約60社が導入している。

 「NPSはまだ日本に浸透しておらず、先行社としてのメリットがある。多くの企業に採用してもらい、かつ次の新製品につながるニーズも感じ取るべく、粘り強く営業活動する」と今西。これからも足で稼ぎ続ける覚悟だ。(敬称略)
 (文=山田諒)

 <企業プロフィル>
 ◇代表=今西良光氏◇住所=東京都新宿区◇資本金=2億8570万円◇設立=2013年3月
日刊工業新聞2015年06月22日 中小・ベンチャー・中小政策面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
元日立の担当記者として今西さんのような起業家が出てくるのは嬉しい。有力なVCから早くも資金調達、それだけ有望視されているということ。ただ米国流のサービスが必ずしも日本で受け入れられるとは限らない。その点、今西さんの現場経験を生かして、次のステージに着実にステップアップして欲しい。

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