《TBS編》ザ・インタビュー#3~ベンチャー投資で挑む改革の真実~
片岡正光次世代ビジネス企画室投資戦略部次長「やっぱり最終的に目指すべきは本業とのシナジー」
インタビューの3回目は投資の基準やシナジー論へ展開していきます。
―今、片岡さん自身は投資していて面白いですか。
「まず、ベンチャーのエコシステムに入って活動するのはとても楽しい。僕は46歳なんですけど、支援されている方や起業家の方はもっと若い。事業会社の人間は、40代はもっとこの世界にがんがん入ってみればいいと思う。投資しなくていいから、ピッチイベントに参加するとか。彼らは一番新しいことにトライしている人たちなので、熱量が高い」
「40代半ばになると、『あと何年で定年かな?』とか思ったり、『いつまでできるのか?』という考えも出てくる。心が萎えちゃう人も結構いると思いますが、例えば元LINEの森川亮(前社長)さんなんて、僕より少し年上ですけど、そこからまた新しいことをやろうとしている。それぐらい成功した人でも心に火が付くんです。ミドルの人は触れてみればいいし、やれることも多いと思います」
「CVCは社内のコミュニケーションやネゴシエーションが滅茶苦茶肝になるんです。その時に、新入社員がベンチャーとの連携企画を持ってきて、うまくいかなかったら、その人の社会人人生が躓いてしまう。その時に我々のようなミドルの人間がセットでやってあげる。一緒に道筋を考えてあげることで、ものすごく進みが良くなると思いますね」
起業家はプロデューサーではなく演出家
―あと10~15歳若かったら、片岡さんも自分で起業しようと思いましたか。今でもできないことはないと思いますけど。
「あります、ありますよ。見てて自分で事業するダイナミズムはあるし。でも奥さんから、『その頃にベンチャーの世界を知らなくて良かった』と言われますけど(笑)。我々テレビの世界ではプロデューサーは全体管理する人、ディレクターは演出する人ですよね。起業家は演出的な要素が強いと思う。多分僕はプロデューサータイプなんで、もしかしたらどのみち支援する方が合っていたかもしれない」
―この事業モデルいいな、と思っても起業家さん自身の個性や考えを見てやっぱり投資は止めようという判断することもかなりあるんですか。
「あります。経営者の原体験からのアツイ思いは、一番重要なポイントなので。いい時もあれば悪い時もある中で、どれだけ頑張れるのか。社長の度量を超えた会社は、なかなか器を超えて大きくならない」
―IPOを目指しているベンチャーを注目されているんですか。
「最初、どういったファンドを作るかと考えた時にはまずアーリー投資が基本かなと。
実際にフジテレビさんはシードとかアーリーステージの会社に投資するファンドだと明確に謳われています。ベンチャーファンドの場合、10件で1件当ててそれで回収していくモデルが多いと思いますが、ということは9件がうまくいかない。これって、普通の会社だと耐えられない世界。社内で説明しても理解されない。ほんとはシードとかアーリーのバリューの低いところに、たくさん張っておいて、どこかが上がるというのがパフォーマンスとしては良いいのかもしれないし、それがセオリーに近いと思うんです。でも僕らの場合はまずはファイナンシャルリターンはありつつも、とはいえやっぱり最終的に目指すべきは本業とのシナジーなんですよ」
「ただし、放送は免許事業なので、ミスをしちゃいけない前提でビジネスが成り立っているので、だからこそシステムとか過剰になっているところもあるんですけど。ネットの会社はベスト・エフォート、『保証』ではなく『努力』ですよね。それを考えると、一緒に事業を進められるのは、大なり小なりビジネスが回っていないと社内でも紹介できない。必然的にミドルからレイターゾーン以外はよっぽどではないと資本は入れらない。ファンドがうまく回って、もっと挑戦できる環境を迎えたときには 少し前のステージに入れてサポートするようなことはあるでしょうけど」
次はTBSの事業領域の近いところで、社内リソースを使って新規事業を
―CVCの次のフェーズはどのタイミングになりそうですか。
「原点に立ち返ると、何で放送事業をやっているかというと、世の中に人の役に立ちたいとか、社会を変えたいとか、そういう思いでやっている人がほとんどです。それをより影響力のある形にしていくには、CVCを通して僕たちがイノベーティブな会社になること。それを加速するには、どうすればいいか。まず社内に影響を与えることが大事で、それを仕組み構築することです」
「エクイティを使ってベンチャーを連れてきて何かするというのは、我々のファンドの規模だと、今のマーケットであれば、年間でせいぜい5―6本程度。テレビ局的なビジネスだよね、というベンチャーは、実はシリコンバレーをみても、そんなにあるわけではないんです。なおかつ、その企業がファイナンスのタイミングではないケースもあるし、実は投資案件はそんなにない。これはどこのテレビ局のCVCでも同じこと。なので、社内起業とまでは言わないけど、社内にあるリソースでベンチャーのエコシステムを活用しながら、新しいものを作っていくことが、次のテーマになります」
―モデルはあるんですか。
「去年、LP投資としてインキュベイトファンドの3号ファンドに出資しましたが、IoT領域を中心に、事業会社と一緒にベンチャー作っていこうというテーマでやっている。直近ではヤフーさんがゲームバンクという会社を立ち上げて、このファンドが資金を出して、ゲームパブリッシング事業をヤフーの人たちと始める。僕らも目指すある種のモデルの一つですね。TBSの事業領域の近いところで、社内リソースや人材をうまく活用しながら新規事業ができないかと。特にITリテラシーの高い会社ではないので。今まではCVC部門が出ていって探していたけど、それ以外に、社内にあるものをうまく外部へ連れ出していってもらえるようなことを、仕組みとしてできたらいいですね」
(ニュースイッチ編集部、取材協力=トーマツベンチャーサポート)
※次回は6月26日(金)に公開予定
ミドルの人こそベンチャーに触れるべき。きっと何か火がつく
―今、片岡さん自身は投資していて面白いですか。
「まず、ベンチャーのエコシステムに入って活動するのはとても楽しい。僕は46歳なんですけど、支援されている方や起業家の方はもっと若い。事業会社の人間は、40代はもっとこの世界にがんがん入ってみればいいと思う。投資しなくていいから、ピッチイベントに参加するとか。彼らは一番新しいことにトライしている人たちなので、熱量が高い」
「40代半ばになると、『あと何年で定年かな?』とか思ったり、『いつまでできるのか?』という考えも出てくる。心が萎えちゃう人も結構いると思いますが、例えば元LINEの森川亮(前社長)さんなんて、僕より少し年上ですけど、そこからまた新しいことをやろうとしている。それぐらい成功した人でも心に火が付くんです。ミドルの人は触れてみればいいし、やれることも多いと思います」
「CVCは社内のコミュニケーションやネゴシエーションが滅茶苦茶肝になるんです。その時に、新入社員がベンチャーとの連携企画を持ってきて、うまくいかなかったら、その人の社会人人生が躓いてしまう。その時に我々のようなミドルの人間がセットでやってあげる。一緒に道筋を考えてあげることで、ものすごく進みが良くなると思いますね」
起業家はプロデューサーではなく演出家
―あと10~15歳若かったら、片岡さんも自分で起業しようと思いましたか。今でもできないことはないと思いますけど。
「あります、ありますよ。見てて自分で事業するダイナミズムはあるし。でも奥さんから、『その頃にベンチャーの世界を知らなくて良かった』と言われますけど(笑)。我々テレビの世界ではプロデューサーは全体管理する人、ディレクターは演出する人ですよね。起業家は演出的な要素が強いと思う。多分僕はプロデューサータイプなんで、もしかしたらどのみち支援する方が合っていたかもしれない」
―この事業モデルいいな、と思っても起業家さん自身の個性や考えを見てやっぱり投資は止めようという判断することもかなりあるんですか。
「あります。経営者の原体験からのアツイ思いは、一番重要なポイントなので。いい時もあれば悪い時もある中で、どれだけ頑張れるのか。社長の度量を超えた会社は、なかなか器を超えて大きくならない」
放送は免許事業。ミドルからレイターゾーン以外はよほどでないと投資できない
―IPOを目指しているベンチャーを注目されているんですか。
「最初、どういったファンドを作るかと考えた時にはまずアーリー投資が基本かなと。
実際にフジテレビさんはシードとかアーリーステージの会社に投資するファンドだと明確に謳われています。ベンチャーファンドの場合、10件で1件当ててそれで回収していくモデルが多いと思いますが、ということは9件がうまくいかない。これって、普通の会社だと耐えられない世界。社内で説明しても理解されない。ほんとはシードとかアーリーのバリューの低いところに、たくさん張っておいて、どこかが上がるというのがパフォーマンスとしては良いいのかもしれないし、それがセオリーに近いと思うんです。でも僕らの場合はまずはファイナンシャルリターンはありつつも、とはいえやっぱり最終的に目指すべきは本業とのシナジーなんですよ」
「ただし、放送は免許事業なので、ミスをしちゃいけない前提でビジネスが成り立っているので、だからこそシステムとか過剰になっているところもあるんですけど。ネットの会社はベスト・エフォート、『保証』ではなく『努力』ですよね。それを考えると、一緒に事業を進められるのは、大なり小なりビジネスが回っていないと社内でも紹介できない。必然的にミドルからレイターゾーン以外はよっぽどではないと資本は入れらない。ファンドがうまく回って、もっと挑戦できる環境を迎えたときには 少し前のステージに入れてサポートするようなことはあるでしょうけど」
次はTBSの事業領域の近いところで、社内リソースを使って新規事業を
―CVCの次のフェーズはどのタイミングになりそうですか。
「原点に立ち返ると、何で放送事業をやっているかというと、世の中に人の役に立ちたいとか、社会を変えたいとか、そういう思いでやっている人がほとんどです。それをより影響力のある形にしていくには、CVCを通して僕たちがイノベーティブな会社になること。それを加速するには、どうすればいいか。まず社内に影響を与えることが大事で、それを仕組み構築することです」
「エクイティを使ってベンチャーを連れてきて何かするというのは、我々のファンドの規模だと、今のマーケットであれば、年間でせいぜい5―6本程度。テレビ局的なビジネスだよね、というベンチャーは、実はシリコンバレーをみても、そんなにあるわけではないんです。なおかつ、その企業がファイナンスのタイミングではないケースもあるし、実は投資案件はそんなにない。これはどこのテレビ局のCVCでも同じこと。なので、社内起業とまでは言わないけど、社内にあるリソースでベンチャーのエコシステムを活用しながら、新しいものを作っていくことが、次のテーマになります」
―モデルはあるんですか。
「去年、LP投資としてインキュベイトファンドの3号ファンドに出資しましたが、IoT領域を中心に、事業会社と一緒にベンチャー作っていこうというテーマでやっている。直近ではヤフーさんがゲームバンクという会社を立ち上げて、このファンドが資金を出して、ゲームパブリッシング事業をヤフーの人たちと始める。僕らも目指すある種のモデルの一つですね。TBSの事業領域の近いところで、社内リソースや人材をうまく活用しながら新規事業ができないかと。特にITリテラシーの高い会社ではないので。今まではCVC部門が出ていって探していたけど、それ以外に、社内にあるものをうまく外部へ連れ出していってもらえるようなことを、仕組みとしてできたらいいですね」
(ニュースイッチ編集部、取材協力=トーマツベンチャーサポート)
※次回は6月26日(金)に公開予定