DBJ女性起業大賞に「和える」の矢島里佳代表!
「ニュースイッチ」ファシリテーターで加藤百合子さんに続いて2人目
日本政策投資銀行(DBJ)が主催する第4回女性新ビジネスプランコンペティションの表彰式が22日開かれ、グランプリの女性起業大賞に、「ニュースイッチ」ファシリテーターを務めている「和える」の矢島里佳代表が選ばれました。406件の応募の中から10人のファイナリストにしぼられ、その中でも矢島さんは、社会的に意義のあるビジネスモデル、入念なマーケティング、高い戦略性など、ほとんどの審査委員から最高の評価を得ました。矢島さんは「私たち20代が次の日本を引っ張っていく責任を感じている。文化資本と経済資本を和えることで新たな文化経済大国日本を目指したい」と豊富を語った。
※現在、矢島さんは毎週木曜日にニュースイッチで「矢島里佳の新聞clip」を連載中。
<Discovery 矢島里佳>
「21世紀の子供たちに日本の伝統をつなぐ」という思いから「和(あ)える」を立ち上げた。26歳になったばかりの矢島里佳は、今やメディアから引っ張りだこの女性起業家だ。愛媛県・砥部焼の「こぼしにくい器」など数々のヒット商品は、「売る」ことよりも「伝える」ことに重きを置いている。彼女が今、次世代に向けて伝えたいこととは―。
【伝統に恋】
矢島に最初に会ったのは起業した直後の3年前。「日本人自身が着物を非日常の伝統衣装にしてしまって着ていく場所がないんです。ほかの伝統産業も日用品としてもっと使ってもらいたい」と訴えかけてきた。熱い思いとビジョンから、単なる「和装オタク」でないことがすぐ分かった。
「伝統工芸」という言葉を極端に嫌う。そこからは過去しか感じないからだろう。産業として成り立ってこそ未来があるという考えがある。スティーブ・ジョブズはリベラル・アーツとテクノロジーの交差点に立ち、電話を「再発明」した。矢島は伝統産業において、過去と未来の交差点を行き来する希少な存在である。
中学生の時に茶華道部に入り、「日本の伝統に恋をした」という。大学時代には雑誌の連載を任され、全国の多くの職人と出会い、彼女の中で点と点がつながった。
日本の職人と呼ばれる技能者の平均年齢は60歳を超える。「先人の知恵や技術を引き継げる期限が迫っているのに、“ホンモノ”の良さを伝える人がいない」。矢島は自身がその役割を担う決意をする。
【適正価格通す】
伝統産業が衰退している要因の一つが、安売り競争に巻き込まれていること。「和える」の最初の商品になった徳島県本藍染めの出産祝いセットは2万5000円。赤ちゃん服の値段として高いと感じるのは、紫外線カットや保温効果などの付加価値を分かってもらえていないから。職人への還元を含め適正価格で押し通した。
職人を尊敬しこよなく愛するが、商品づくりでは一切妥協を許さない。未来の象徴である赤ちゃんが使いやすいように、時にはミリ単位で器の角度の変更も要求する。「我慢する大人と違って本当に心地よいものを本能で分かっている」。矢島の感性も赤ちゃんに近いのかもしれない。
【福沢の教え】
今年7月末、念願だった初の路面店『aeru meguro』(東京・目黒)がオープンした。初日は和服を着たが、それ以降は洋服で店舗に立っている。同じ時期に初の自叙伝を出版、書名はずばり「和える」。この文字の意味こそ彼女の本質ではないだろうか。「混ぜる」は異なるものが生まれるだけだが、異素材を「和える」とお互いの魅力を引き出し新しい豊かさにつながる。
矢島は最近、「本質」という言葉をよく口にする。彼女にとって本質の追究は、過去の点と未来の点を結ぶ作業。「今は20世紀と21世紀が接続している途中だと思う。どちらが良い悪いではなく、これからはお金や地位とは別の指標が経営に求められている」。もともとしなやかな思考と所作を持つ起業家だったが、日に日に強さも加わったように感じる。
会って話せば少し天然の今どきの女の子。生き方や考え方もシンプルで、出身大学の創設者、福沢諭吉の「半学半教」の教えを地で行く。「たまたま先に生まれた人が、後に生まれた人に教えればいい」。(敬称略)
※現在、矢島さんは毎週木曜日にニュースイッチで「矢島里佳の新聞clip」を連載中。
<Discovery 矢島里佳>
「21世紀の子供たちに日本の伝統をつなぐ」という思いから「和(あ)える」を立ち上げた。26歳になったばかりの矢島里佳は、今やメディアから引っ張りだこの女性起業家だ。愛媛県・砥部焼の「こぼしにくい器」など数々のヒット商品は、「売る」ことよりも「伝える」ことに重きを置いている。彼女が今、次世代に向けて伝えたいこととは―。
【伝統に恋】
矢島に最初に会ったのは起業した直後の3年前。「日本人自身が着物を非日常の伝統衣装にしてしまって着ていく場所がないんです。ほかの伝統産業も日用品としてもっと使ってもらいたい」と訴えかけてきた。熱い思いとビジョンから、単なる「和装オタク」でないことがすぐ分かった。
「伝統工芸」という言葉を極端に嫌う。そこからは過去しか感じないからだろう。産業として成り立ってこそ未来があるという考えがある。スティーブ・ジョブズはリベラル・アーツとテクノロジーの交差点に立ち、電話を「再発明」した。矢島は伝統産業において、過去と未来の交差点を行き来する希少な存在である。
中学生の時に茶華道部に入り、「日本の伝統に恋をした」という。大学時代には雑誌の連載を任され、全国の多くの職人と出会い、彼女の中で点と点がつながった。
日本の職人と呼ばれる技能者の平均年齢は60歳を超える。「先人の知恵や技術を引き継げる期限が迫っているのに、“ホンモノ”の良さを伝える人がいない」。矢島は自身がその役割を担う決意をする。
【適正価格通す】
伝統産業が衰退している要因の一つが、安売り競争に巻き込まれていること。「和える」の最初の商品になった徳島県本藍染めの出産祝いセットは2万5000円。赤ちゃん服の値段として高いと感じるのは、紫外線カットや保温効果などの付加価値を分かってもらえていないから。職人への還元を含め適正価格で押し通した。
職人を尊敬しこよなく愛するが、商品づくりでは一切妥協を許さない。未来の象徴である赤ちゃんが使いやすいように、時にはミリ単位で器の角度の変更も要求する。「我慢する大人と違って本当に心地よいものを本能で分かっている」。矢島の感性も赤ちゃんに近いのかもしれない。
【福沢の教え】
今年7月末、念願だった初の路面店『aeru meguro』(東京・目黒)がオープンした。初日は和服を着たが、それ以降は洋服で店舗に立っている。同じ時期に初の自叙伝を出版、書名はずばり「和える」。この文字の意味こそ彼女の本質ではないだろうか。「混ぜる」は異なるものが生まれるだけだが、異素材を「和える」とお互いの魅力を引き出し新しい豊かさにつながる。
矢島は最近、「本質」という言葉をよく口にする。彼女にとって本質の追究は、過去の点と未来の点を結ぶ作業。「今は20世紀と21世紀が接続している途中だと思う。どちらが良い悪いではなく、これからはお金や地位とは別の指標が経営に求められている」。もともとしなやかな思考と所作を持つ起業家だったが、日に日に強さも加わったように感じる。
会って話せば少し天然の今どきの女の子。生き方や考え方もシンプルで、出身大学の創設者、福沢諭吉の「半学半教」の教えを地で行く。「たまたま先に生まれた人が、後に生まれた人に教えればいい」。(敬称略)
日刊工業新聞2014年08月18日 モノづくり面