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次世代エンジン開発に賭けるマツダの意気込みとは

マツダの「ミスター・エンジン」、人見光夫常務執行役員インタビュー
 ―次世代エンジン開発の進捗(しんちょく)状況は。
 「技術開発段階では実現に向けた見通しが立ち、実機でもかなり効果が出ている。これから商品開発に向かう段階。新しいものを量産するには作り方から品質からすごく苦労する。だが部品をすべて刷新するわけではなく燃焼室や燃料系、動弁系などが中心になる」

 ―ガソリンエンジンでは予混合圧縮着火(HCCI)という燃焼を導入し、燃費を3割向上すると表明しています。
 「HCCIは一つの手段で、重要なのはガソリンもディーゼルも燃料をすごく薄くして燃やすこと。すべての領域でHCCIで回せるわけではなく、始動時や高負荷領域は通常燃焼となり、切り替えるのが大変。超高圧縮比にするので通常燃焼でも普通に回せば異常燃焼の嵐になる。課題は今のスカイアクティブエンジンと比較にならないほど多く、当然苦労している。だがあきらめることは絶対にない。実現できればなかなかのものだ」

 ―投入の時期は?
 「明確には言えないが2020年の欧州の燃費規制強化に役立たなければ会社としてやる意味がない。このエンジンがあれば、ドイツの高級車メーカーがやろうとしているプラグインハイブリッド(PHV)のような高価なシステムを使わなくてもよくなる」

 ―さらに断熱性能を高めた次の第3世代のエンジン開発もロードマップに描いています。
 「25年には、電動化で対応するしかないような次の厳しい規制強化が来る。その時にも内燃機関でがんばって、ちゃんとした車にしたいという思いでやっている。断熱エンジンというと誤解を招く。燃やし方の工夫と遮熱コーティングの組み合わせで最大熱効率50%を目指したい。最近のハイブリッド(HV)専用エンジンのような限られた領域だけではなく、エンジンだけの車でも使えるよう、幅広い領域で高い熱効率を実現する」

 ―電動化の対応は。カリフォルニアのZEV法にはどう対応しますか。
 「トヨタからHVシステムの提供を受けたことは勉強になった。だが、次世代エンジンが実現できれば、このHVシステムと組み合わせると過剰になる。ZEV法ではいくらエンジンをよくしても認められず、どういう形になるにせよ備えをする必要がある」

 【記者の目/トヨタとの提携どう生かす】
 HCCIは理想の燃焼といわれるが、難易度は高い。そのハードルを越えてくれそうなのが今のマツダ。インタビューはトヨタ自動車との提携拡大発表前に行われた。自社ではエンジン開発に特化し、総合的な技術開発はトヨタと組んで対応したいという意図が透けて見える内容となった。トヨタとの提携を今後どう生かすかが焦点となる。
 (聞き手=広島・清水信彦)

日刊工業新聞2015年6月19日付自動車面
清水信彦
清水信彦 Shimizu Nobuhiko 福山支局 支局長
自分の書いた記事を自分でふぁしりてーとしてしまいました。もっといろいろ書いてない話がたくさんありまして、そっちの方もなかなかおもしろかったです。取材当日は結構機嫌があまりよくない印象でした。聞く側としては「開発が難航してるのかな」とも感じたのですが、前日にカープが負けたというのもあったらしい。また、後から考えればトヨタとの提携拡大などで意に添わないこともあったのかなと勘ぐってしまいました。しかし取材の録音テープを聞き返してみると、言葉遣いは非常に丁寧。真正面から答えようとしてくれています。この人柄も、マツダ社内での求心力になっていると思います。

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