企業の周知・対応が全然進んでいない!どうなるマイナンバー制度
神奈川の調査では「制度を認識」どまり。日商も四苦八苦、政府への要望は通じるか!?
帝国データバンク横浜支店(横浜市中区)がまとめた「マイナンバー制度に対する神奈川県内企業の意識調査」によると、県内企業の9割超は何らかの形で同制度を認識し、「内容も含めて知っている」という企業は半数程度にとどまった。同制度の情報を得る手段としては「新聞」や「テレビ」などマスコミ媒体を通じて入手している。
同制度への対応を進めている(あるいは完了した)県内企業は2割弱にとどまる。県内企業の64・8%は対応を予定しつつも何もしておらず、全体の進捗(しんちょく)状況は8・4%にとどまっている。
対応を進めている企業の具体的内容では「給与システムの更新」が約半数を占め、「基本方針・取扱規程等の策定」「従業員への周知方法の検討」が続く。同制度へのコスト負担額は1社当たり約114万円と推計される。従業員数が多くなるにしたがって高まる傾向で、1000人超の企業では約875万円の負担を想定している。
法人番号制度は県内企業の約4割が「言葉だけ知っている」。特に従業員数が5人以下の県内企業では半数超が「知らなかった」と法人番号制度自体を認識していない。(横浜)
関連記事=日商、政府へ緊急要望―小規模・中小向け支援を
マイナンバー制度周知のためのCMが流れはじめ突如、世の中騒然とし始めた。正当な理由なく個人情報が漏えいされれば、最悪の場合、初犯でもいきなり実刑判決だ。騒ぎ始めたのは多くが大企業や中堅企業。企業の大半を占める中小企業、小規模事業者はいまだ多くが分からぬまま。来年1月の導入の期限は迫る。
【対応の仕組み、明示が必要】
日本商工会議所はこの4月、「マイナンバー制度に係わる事業者への周知徹底等に関する要望」を政府に提出した。主要商工会議所でセミナー来場者にアンケートしたところ、「制度自体が分からない」企業が5%、「何をすべきか分からない」企業が39%、「分かっているが、まだ何も着手していない」企業が22%あった。「対応に取り組んでいる」企業はわずか5%に過ぎない。
東京、大阪、名古屋などの商工会議所メンバーでセミナーに出席するような企業でさえ、このありさまだ。しかも、規模が小さいほど対応の遅れは目立っている。商工会や商工会議所の非会員企業で、日本の企業の太宗を占める小規模事業者の対応を考えると絶望的状況になる。
このため、日商はまず政府に、事業者側の視点に立って規模別の対応例をビジュアル化して周知するよう求めた。単純に言えば、小規模・中小企業事業者が対応できる仕組みにしてほしいということだ。直罰・両罰規定が適用される範囲の分かりやすい提示も求めた。「ちゃんとやっていればいいよ」といわれても、どこまでがちゃんとか分からないからだ。
制度導入に伴う費用負担に対する経済的支援措置も求めている。故郷創生、コミュニティー維持のための小規模企業の活性化を図るためにも、この際、制度導入に伴うIT投資に助成を実施し、中小・零細企業の経営の高度化を図るのも有益なことだろう。
【対策、どうすれば…/問題点は「番号集め」―収集困難なら経緯文書化を】
中小・小規模事業者はマイナンバー制度にどう対応すればいいのか―。制度に精通、周知のため講演活動に追われる牛島総合法律事務所の影島広泰弁護士に直近の状況を聞いた。
―わが国企業の大半を占める小規模企業は制度を知りません。こんなことで大丈夫ですか。
「ダメです。無理ですよ。とにかく対応を急がないと。従業員5人程度の家族で経営している小規模企業については、税理士さんたちに丸投げしてしまうでしょうからそう心配していないんですが、問題は従業員50人以上の中小企業。特に100人前後の企業は大変です」
―最大の問題点は。
「番号集めです。飲食店など短期間繰り返しアルバイトを雇うところは対応が難しい。年末年始に大量にアルバイトを雇う郵便局などが対応できるか問題視されている」
―扶養家族や株主などの番号を集められないとどうなりますか。
「空欄で出さざるを得ない。罰則規定はないが、記載することは義務。提出先の役所の指示を仰ぐことになる。いくら小さい企業だからといっても、心証を害してはいいことがない。収集努力をしたことを示せるよう、経緯を文書化することも考えるべきだ」
―提出書類の作成は難しくなりますか。
「それは簡単。新しく加わる作業は源泉徴収票に番号を入れるだけの措置などでいいのだから」
―特定個人情報保護に関する罰則規定の中に中小企業に対する特例的措置があるようですが。
「目立つところでは、取扱規程をつくらなくていいことと、システムログを残さなくていいことぐらい。今のままでは普及は難しい。規模、業種でどこまでやるべきか示す必要がある」
【取り扱いには要注意―個人番号の民間利用厳禁/利用目的・本人確認を怠らずに】
一発退場。いきなり禁錮刑。最悪の場合、4年以下の懲役または200万円以下の罰金、あるいは両方の罰が併科される。4年だと執行猶予はつかない。マイナンバー制度では正当な理由なく特定個人情報ファイルが提供されると、極めて重い刑罰が科される。
マイナンバー制度とはより正確な所得捕捉を可能とし、税や社会保障の負担と給付を公平化できるシステムだ。市町村長は住民票コードを変換して得られる12ケタの個人番号を指定し、通知カードで本人に通知する。本人からの申請があれば顔写真付きの個人番号カードを交付することになる。法人の場合は国税庁長官が法人等に13ケタの法人番号を指定し通知する。
法人番号は原則公開され、民間での自由な利用が可能だが、個人番号は民間の利用はダメ。利用分野は税務当局に提出する書類や、社会保障関係の年金分野労働分野、福祉・医療・その他の分野および災害対策分野だ。
企業は源泉徴収票や支払い調書等に記載し提出しなければならない。社会保障関係でも雇用保険関係や健康保険・厚生年金保険関係などの書類も必要だ。源泉徴収票などに利用するとなると、企業は従業員等からマイナンバーを収集、書類作成しなければならないということになる。
マイナンバーを収集するときは利用目的を明示し、なりすましの防止のためにも厳格な本人確認を必要とする。だが、従業員、その家族、謝礼受領者等から情報漏えいの心配があるとして本人確認を断られたらどうするかがまず問題だ。
マイナンバーの提示を受けた後、どう、管理していくかも大きな問題。安全管理のためには取扱規程等を策定しなければならない。従業員100人以下の中小規模事業者でも情報等の取り扱いを明確化、事務の確実な引き継ぎ、責任者の確認が必要だ。中小とはいえ取り扱い状況が分かる記録の保存も必要になる。また、紛失、盗難などを防ぐため安全な方策を講じる必要もある。
マイナンバーカードはいずれ本人確認の公的な身分証明書として、各種行政手続きのオンライン申請や民間のオンライン取引、さらにはコンビニでの各種証明書取得、図書館カードなどとしても使われることが想定されている。利用の際に個人情報をどう秘匿するかが銀行、証券会社、コンビニなど民間企業にとっては大きな問題となる。
≪マイナンバー制度の導入効果≫
(1)正確な所得把握が可能になり、社会保障や税の給付と負担の公平化
(2)真に手を差し伸べるべき者を見つけられる
(3)大災害時に真に手を差し伸べるべき者への積極的支援に活用できる
(4)社会保障や税に関わる各種行政事務の効率化が図れる
(5)IT活用で添付書類が不要となるなど、国民の利便性が向上する
(6)行政機関から国民にプッシュ型行政サービスを行うことが可能
同制度への対応を進めている(あるいは完了した)県内企業は2割弱にとどまる。県内企業の64・8%は対応を予定しつつも何もしておらず、全体の進捗(しんちょく)状況は8・4%にとどまっている。
対応を進めている企業の具体的内容では「給与システムの更新」が約半数を占め、「基本方針・取扱規程等の策定」「従業員への周知方法の検討」が続く。同制度へのコスト負担額は1社当たり約114万円と推計される。従業員数が多くなるにしたがって高まる傾向で、1000人超の企業では約875万円の負担を想定している。
法人番号制度は県内企業の約4割が「言葉だけ知っている」。特に従業員数が5人以下の県内企業では半数超が「知らなかった」と法人番号制度自体を認識していない。(横浜)
関連記事=日商、政府へ緊急要望―小規模・中小向け支援を
マイナンバー制度周知のためのCMが流れはじめ突如、世の中騒然とし始めた。正当な理由なく個人情報が漏えいされれば、最悪の場合、初犯でもいきなり実刑判決だ。騒ぎ始めたのは多くが大企業や中堅企業。企業の大半を占める中小企業、小規模事業者はいまだ多くが分からぬまま。来年1月の導入の期限は迫る。
【対応の仕組み、明示が必要】
日本商工会議所はこの4月、「マイナンバー制度に係わる事業者への周知徹底等に関する要望」を政府に提出した。主要商工会議所でセミナー来場者にアンケートしたところ、「制度自体が分からない」企業が5%、「何をすべきか分からない」企業が39%、「分かっているが、まだ何も着手していない」企業が22%あった。「対応に取り組んでいる」企業はわずか5%に過ぎない。
東京、大阪、名古屋などの商工会議所メンバーでセミナーに出席するような企業でさえ、このありさまだ。しかも、規模が小さいほど対応の遅れは目立っている。商工会や商工会議所の非会員企業で、日本の企業の太宗を占める小規模事業者の対応を考えると絶望的状況になる。
このため、日商はまず政府に、事業者側の視点に立って規模別の対応例をビジュアル化して周知するよう求めた。単純に言えば、小規模・中小企業事業者が対応できる仕組みにしてほしいということだ。直罰・両罰規定が適用される範囲の分かりやすい提示も求めた。「ちゃんとやっていればいいよ」といわれても、どこまでがちゃんとか分からないからだ。
制度導入に伴う費用負担に対する経済的支援措置も求めている。故郷創生、コミュニティー維持のための小規模企業の活性化を図るためにも、この際、制度導入に伴うIT投資に助成を実施し、中小・零細企業の経営の高度化を図るのも有益なことだろう。
【対策、どうすれば…/問題点は「番号集め」―収集困難なら経緯文書化を】
中小・小規模事業者はマイナンバー制度にどう対応すればいいのか―。制度に精通、周知のため講演活動に追われる牛島総合法律事務所の影島広泰弁護士に直近の状況を聞いた。
―わが国企業の大半を占める小規模企業は制度を知りません。こんなことで大丈夫ですか。
「ダメです。無理ですよ。とにかく対応を急がないと。従業員5人程度の家族で経営している小規模企業については、税理士さんたちに丸投げしてしまうでしょうからそう心配していないんですが、問題は従業員50人以上の中小企業。特に100人前後の企業は大変です」
―最大の問題点は。
「番号集めです。飲食店など短期間繰り返しアルバイトを雇うところは対応が難しい。年末年始に大量にアルバイトを雇う郵便局などが対応できるか問題視されている」
―扶養家族や株主などの番号を集められないとどうなりますか。
「空欄で出さざるを得ない。罰則規定はないが、記載することは義務。提出先の役所の指示を仰ぐことになる。いくら小さい企業だからといっても、心証を害してはいいことがない。収集努力をしたことを示せるよう、経緯を文書化することも考えるべきだ」
―提出書類の作成は難しくなりますか。
「それは簡単。新しく加わる作業は源泉徴収票に番号を入れるだけの措置などでいいのだから」
―特定個人情報保護に関する罰則規定の中に中小企業に対する特例的措置があるようですが。
「目立つところでは、取扱規程をつくらなくていいことと、システムログを残さなくていいことぐらい。今のままでは普及は難しい。規模、業種でどこまでやるべきか示す必要がある」
【取り扱いには要注意―個人番号の民間利用厳禁/利用目的・本人確認を怠らずに】
一発退場。いきなり禁錮刑。最悪の場合、4年以下の懲役または200万円以下の罰金、あるいは両方の罰が併科される。4年だと執行猶予はつかない。マイナンバー制度では正当な理由なく特定個人情報ファイルが提供されると、極めて重い刑罰が科される。
マイナンバー制度とはより正確な所得捕捉を可能とし、税や社会保障の負担と給付を公平化できるシステムだ。市町村長は住民票コードを変換して得られる12ケタの個人番号を指定し、通知カードで本人に通知する。本人からの申請があれば顔写真付きの個人番号カードを交付することになる。法人の場合は国税庁長官が法人等に13ケタの法人番号を指定し通知する。
法人番号は原則公開され、民間での自由な利用が可能だが、個人番号は民間の利用はダメ。利用分野は税務当局に提出する書類や、社会保障関係の年金分野労働分野、福祉・医療・その他の分野および災害対策分野だ。
企業は源泉徴収票や支払い調書等に記載し提出しなければならない。社会保障関係でも雇用保険関係や健康保険・厚生年金保険関係などの書類も必要だ。源泉徴収票などに利用するとなると、企業は従業員等からマイナンバーを収集、書類作成しなければならないということになる。
マイナンバーを収集するときは利用目的を明示し、なりすましの防止のためにも厳格な本人確認を必要とする。だが、従業員、その家族、謝礼受領者等から情報漏えいの心配があるとして本人確認を断られたらどうするかがまず問題だ。
マイナンバーの提示を受けた後、どう、管理していくかも大きな問題。安全管理のためには取扱規程等を策定しなければならない。従業員100人以下の中小規模事業者でも情報等の取り扱いを明確化、事務の確実な引き継ぎ、責任者の確認が必要だ。中小とはいえ取り扱い状況が分かる記録の保存も必要になる。また、紛失、盗難などを防ぐため安全な方策を講じる必要もある。
マイナンバーカードはいずれ本人確認の公的な身分証明書として、各種行政手続きのオンライン申請や民間のオンライン取引、さらにはコンビニでの各種証明書取得、図書館カードなどとしても使われることが想定されている。利用の際に個人情報をどう秘匿するかが銀行、証券会社、コンビニなど民間企業にとっては大きな問題となる。
≪マイナンバー制度の導入効果≫
(1)正確な所得把握が可能になり、社会保障や税の給付と負担の公平化
(2)真に手を差し伸べるべき者を見つけられる
(3)大災害時に真に手を差し伸べるべき者への積極的支援に活用できる
(4)社会保障や税に関わる各種行政事務の効率化が図れる
(5)IT活用で添付書類が不要となるなど、国民の利便性が向上する
(6)行政機関から国民にプッシュ型行政サービスを行うことが可能
2015年04月27日 中小・ベンチャー・中小政策面/06月19日 列島ネット面