EV化の流れにも動じないエンジン部品メーカーの成長力
武蔵精密工業、ホンダのアジア事業が気殷々
世界最大の自動車市場を持つ中国が電気自動車(EV)シフトを鮮明にしている。電気を作るために石油や石炭を燃やすことまで考えると、EVが究極のエコカーかどうかは議論のあるところだが、北京や上海の大都市の環境問題を考えると、排ガスの出ないEVシフトは合理性のある選択なのだろう。またEVシフトでエンジン中心の自動車ビジネスのゲームチェンジを仕掛けるとの狙いも見える。
EV化が進むとエンジンやラジエーターなどのエンジン回りが不要となり、変速機の需要も大幅に減少するため、関連部品を手がける部品メーカーには向かい風となる。一方、駆動用の大容量リチウムイオン電池やモーターなど新たに必要となる部品がある。
このためリチウムイオン電池やモーターを手がける企業が評価されやすく、エンジン、エンジン回り、変速機への依存度が高い企業が評価を下げる傾向がみられる。
もっともタイヤ、シートなどの内装品、車体骨格部品、発光ダイオード(LED)ヘッドランプなどEVでも変わらない部品も数多い。こうした部品を扱う企業は、独自の要素が企業評価の軸となる。
今回取り上げる武蔵精密工業はエンジン、変速機に関連するカムシャフトやギアなども製造するため、タイヤやヘッドランプなどとは違い、EV化の影響を受けない訳ではない。
ただ、ギアなどはEV化に伴い大型・高精度なギアが必要ともみられ、EVシフトの影響は少ないと評価されている。むしろ、同社売り上げの50%を占め関係の深いホンダのアジア事業の拡大を取り込み、業績を伸ばしていけると当社(野村証券)アナリストはその魅力を強調している。以下2点を挙げたい。
第一に、インドはじめアジアの2輪車向け事業が良好だ。武蔵精密工業の2輪車向け売り上げは2017年度予想ベースで30%近い構成比を占め、利益貢献度も高いもようだ。
インドの2輪車市場はすでに高額紙幣廃止の影響はなくなっており、17年度、18年度ともにそれぞれ二ケタ成長が見込まれる。
第二に、中国の4輪車向け事業が好調である。ホンダの中国での4輪車生産はシビックや大型スポーツ多目的車(SUV)の貢献で好調に推移している。
加えて、16年に買収したドイツのHayグループを通じ、中国でのフォルクスワーゲン(VW)向けの事業が今後拡大する見通しだ。
武蔵精密工業の連結営業利益は利益構成比で60%を超えるアジア事業がけん引し、16年度の112億円をベースに17年度で150億円、18年度で183億円、19年度で202億円と高成長が続くと予想されている。
(文=海津政信 野村証券金融経済研究所シニア・リサーチ・フェロー兼アドバイザー)
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ホンダの電動化シフト。系列サプライヤーは仕事が無くなるどころかチャンス到来
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このためリチウムイオン電池やモーターを手がける企業が評価されやすく、エンジン、エンジン回り、変速機への依存度が高い企業が評価を下げる傾向がみられる。
もっともタイヤ、シートなどの内装品、車体骨格部品、発光ダイオード(LED)ヘッドランプなどEVでも変わらない部品も数多い。こうした部品を扱う企業は、独自の要素が企業評価の軸となる。
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第一に、インドはじめアジアの2輪車向け事業が良好だ。武蔵精密工業の2輪車向け売り上げは2017年度予想ベースで30%近い構成比を占め、利益貢献度も高いもようだ。
インドの2輪車市場はすでに高額紙幣廃止の影響はなくなっており、17年度、18年度ともにそれぞれ二ケタ成長が見込まれる。
第二に、中国の4輪車向け事業が好調である。ホンダの中国での4輪車生産はシビックや大型スポーツ多目的車(SUV)の貢献で好調に推移している。
加えて、16年に買収したドイツのHayグループを通じ、中国でのフォルクスワーゲン(VW)向けの事業が今後拡大する見通しだ。
武蔵精密工業の連結営業利益は利益構成比で60%を超えるアジア事業がけん引し、16年度の112億円をベースに17年度で150億円、18年度で183億円、19年度で202億円と高成長が続くと予想されている。
(文=海津政信 野村証券金融経済研究所シニア・リサーチ・フェロー兼アドバイザー)
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日刊工業新聞2017年9月13日「アナリストの目」より