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経産省が仕掛ける電炉再編の行方。タイムリミットは3年!

供給過剰の改善なければ、産業競争力強化法を盾に実質的な行政介入へ
経産省が仕掛ける電炉再編の行方。タイムリミットは3年!

構造的供給過剰状態といわれる電炉業界

 経済産業省は18日、電気炉で鉄鋼を生産する普通鋼電炉業界に対し、生産設備集約や企業統合など事業再編を促すことを明らかにした。新規住宅着工件数や公共インフラ投資の縮小などにより、市場が縮小している中、国内に約40社が林立する同業界は構造的供給過剰状態にあると指摘。海外進出や新事業育成などを後押ししつつ、2、3年後にも供給過剰が改善しなければ、産業競争力強化法50条に基づいた調査を行い、再編を促す。

 経産省が19日まとめる「金属素材競争力強化プラン」に盛り込む。国内需要が飽和している電線業界や、海外メジャーと規模の差が開いているアルミニウム業界も、再編の検討対象に加えた。

 電炉は鉄スクラップを原材料に主に建築・土木に使う鉄鋼製品を製造する。電炉製品の輸入比率は約2%だが、将来的に中国などの海外製の品質が向上して輸入が増える可能性もある。経産省は各社の体力があるうちに供給過剰の解消を促す。

 同時に輸出も少ないため、経産省は海外市場の調査や日本製ブランドとして海外展示会の出展支援を行うほか、東南アジアでの鋼材の標準化に日本式の採用を促す。

 一方で、共英製鋼と東京鉄鋼との経営統合が公正取引委員会の認可を得られないまま白紙となった過去もある。経産省は公取委に対して業界の事情を配慮するよう求める。

【業界の現状/需要減退避けられず】
 他の多くの産業と同じく、建材が中心の電炉業界も中長期的には需要減退が避けられず、短期的にも電気料金の上昇や建設業界の人手不足の余波で苦しんでいる。もともと、電炉業界は工場の近傍で鉄スクラップを調達し、近傍の市場に製品を供給する“地産地消”の企業が多い。生産品種も少なく、収益のポートフォリオが分散されていない。製品も似通っており、同業他社との差別化も比較的難しい。

 そうした構造問題を抱える中、電気料金の上昇が各企業の懐を直撃。事業撤退に追い込まれる企業も出てきた。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度に基づく賦課金を加えれば、その負担増は年間442億円と試算されている。

 料金引き上げ後、普通鋼電炉工業会の会員企業では3社が解散。2度目の値上げを実施した関西電力の管内では、共英製鋼、新関西製鉄、大阪製鉄が相次いで工場の休止や閉鎖を決めた。こうしたことからも、業界再編・淘汰(とうた)の動きが加速するとの見方が一層、高まっている。

 また、鉄スクラップは輸出資源でもあるため、国内価格が国際市況に振り回されることも起こり得る。国内のスクラップ市場も現状ではメーカー数が多く、売り手市場。原料調達の安定化のためにも、再編・統合で企業規模を拡大した方が得策との指摘も少なくない。
日刊工業新聞2015年06月19日 2面
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
 日本の鉄の生産量は年間約1億1000万トン。うち新日鉄住金やJFEスチールなどの高炉鋼は約8500万トンで、残る約2500万トンが電炉鋼だ。2割程度の市場を巡り、約40社が乱立するいびつな構図がある。高炉はここ10年余りで、JFE、新日鉄住金の誕生と再編が進んだが、電炉はJFE条鋼が2012年に誕生した以外、半世紀にわたって目立った動きはない。  低操業率、低収益性、そして昨今の電気代をはじめとする原燃料費の高止まりと、業界再編の「内圧」はより高まっている。これまで「地産地消」という枠組みに守られ、「なんとなく事業が成り立つ」という不思議な業界だったが、それも変わりつつある。  電炉再編のキープレーヤーは新日鉄住金だ。大阪製鉄、共英製鋼、中山製鋼所といずれも新日鉄住金の子会社。足元の好業績を背景に「血を流す」覚悟で業界再編に乗り出す可能性もある。

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